大学研究室紹介

「赤外分光法を用いた、ファンデルワールス錯体の構造と揮発性有機化合物の検出法の研究」(尾崎 裕教授)

城西大学理学部化学科 分子集合体科学研究室

研究内容

  • テーマ:
  • 赤外分光法を用いた、ファンデルワールス錯体の構造と揮発性有機化合物の検出法の研究
  • 概要:
  • 赤外ダイオードレーザーを用いてファンデルワールス錯体の構造についての研究行っており、その応用として赤外分光法を利用した揮発性有機化合物の小型センサの開発を行っています。
    地球温暖化で問題となっている二酸化炭素などの気体を、数気圧の圧力をかけてノズルから真空容器中に噴出させると温度が数K(-270℃)に冷え、分子同士が弱く結合したファンデルワールス錯体(分子クラスター)が生成します。赤外ダイオードレーザーを用いることにより、錯体の構造を決めることができ、二酸化炭素などの分子間の性質や温暖化に関連する赤外光の吸収について知ることができます。また、実験と並行して理論計算による予想も行い、分子間の弱い結合の特異性について詳しく調べています。
    赤外分光法を用いると分子を識別して検出することができるので、このことを利用して環境問題となっている揮発性有機化合物、特にベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)を高選択的に検知できる小型センサの開発を行っています。ナノサイズの細孔をもつガラスやセルロースアセテートフィルタにBTXを吸着させ、赤外スペクトルを測定して検出するセンサです。セルロースアセテートへの吸着については、BTX分子とセルロースアセテート分子の間の弱い結合についての理論計算も行っています。
  • キーワード:
  • 揮発性有機化合物, 赤外スペクトル, 小型センサ, ファンデルワールス錯体, 赤外ダイオードレーザー分光, 量子化学計算
  • 学部体系:
  • 理工学系(理学系, 応用化学系)
  • 研究分野:
  • 健康・化学物質(分析・モニタリング・評価関連)、大気環境(その他大気関連)

    開発中の赤外ファイバ分光器を利用したセンサの概念図と試作品の写真

    セルロースアセテートにトルエンが吸着したときの様子を理論的に計算したもの

    -270℃まで冷却した二酸化炭素ファンデルワールス錯体を生成しダイオードレーザーで赤外スペクトルを測定する装置

    研究室概要

  • 大学・研究室名:
  • 城西大学理学部化学科 分子集合体科学研究室
  • 研究室の特色・PR:
  • 分子集合体科学研究室では、基礎的な研究からその技術を応用した環境研究まで幅広く研究しています。ファンデルワールス錯体の赤外スペクトルを理解するには量子力学をしっかり勉強する必要があります。また、一方の環境研究では基礎的な技術をどのように応用し、実際に役立てていくかが重要になり、そのためには広く科学全体を理解している必要があります。また実験ばかりでなく理論計算も行っていますので、この場合はコンピュータに関する知識が必要です。このように、基礎あるいは応用、実験あるいは理論、とそれぞれの学生が関心の高い方向に研究を行うことができます。
  • 先生のプロフィール:
  • 氏名:
    尾崎 裕
    出身大学:
    東京大学理学部化学科
    出身大学院:
    東京大学大学院理学系研究科化学専攻
    卒業研究のテーマと概要:
    学部:希ガス準安定励起種を用いたエネルギー移動の機構についての研究
    大学院:光学的禁制の電子励起状態の分光学的研究 −励起状態には基底状態から光を吸収して遷る
    職歴など:
    国立公害研究所(現 国立環境研究所)研究員、主任研究員、
    城西大学助教授を経て
    城西大学理学部化学科教授・大学院物質科学専攻教授
     (http://www.josai.ac.jp/kagaku/bushitsu/index.htmlの担当教員にあります)
  • 所属学生の人数:
  • 11~20人程度
  • ゼミの恒例行事(旅行・実習・調査など):
  • 1泊2日程度
    年 0回
    2泊~1週間未満
    年 0回
    1週間~1か月以内
    年 0回
    1か月以上
    年 0回
    主な行先: 現在センサの開発中のため、特になし。開発後はフィールド観測なども行ってゆきたい。
  • 研究室連絡先:
  • 埼玉県坂戸市けやき台1-1
    yozaki@josai.ac.jp

    二酸化炭素C18O2が2個結合した錯体などの赤外スペクトル。1個の分子にはない多数のピークが現れ、構造が決まる。

    先生からのメッセージ

    現在も科学技術は急速に発展しているばかりでなく、環境問題やエネルギー問題など解決していく必要がある問題が山積しています。問題が複雑になればなるほど、基礎的な内容をしっかり理解している必要があります。高校での内容など基礎をしっかり勉強しておいて下さい。環境科学は既存のいろいろな分野にまたがった高度に複雑な分野ですが、基礎がしっかりしていれば大丈夫です。ただ、学問で大切なことは興味をもつことですから、広くいろいろなことに関心だけはもつようにして下さい。

    (2009年1月現在)