環境法令ガイド

環境基本法 The Basic Environment Law

用語一覧(五十音順)

あ行
汚染者負担原則(原因者負担原則) Polluter Pays Principle(PPP)。日本型PPPは、環境の汚染者は、汚染防止費用(汚染の防止とコントロールのための費用)、被害者救済費用、環境復元費用(原状回復のための費用)のすべてを支払わなければならないとする考え方。1972年にOECDの勧告によって示されたPPPよりも厳しい考え方になっている。なお、環境基本法37条は、国等が過去の汚染の原状回復を行った場合には適切・公平に原因者に費用を負担させるという、PPPの一部のみ規定している。
か行
環境 環境基本法で「環境」の概念は定義されていない。環境施策との関係で、環境要素としては、①大気、水、土壌その他、②生態系の多様性、野生生物の種の保存その他の生物多様性、森林・農地・水辺等の自然環境、③人と自然との豊かな触れ合い、が挙げられている(環境基本法14条)。環境の中身はその時代の人や社会の認識によって変化すると考えられ、現在ではこれらのほか、日照、景観、歴史的・文化的遺産も含むとされる。
環境影響評価 事業の実施にあたり、あらかじめその事業の環境への影響を調査、予測、評価し、その結果に基づき、環境への悪影響があるときは、その事業について修正・変更等を加えて適正な環境配慮を行うこと。環境基本法20条。(環境法令ガイド「環境影響評価法」参照)
環境基準 人の健康を保護し、および生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準。環境基本法16条に基づき、政府は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音について環境基準を設定し、目標とする環境の質に対する行政上の努力目標になる。これらの基準は、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。環境基準が行政上の努力目標にすぎないのに対し、公害の発生施設から排出される汚染物質の許容限度を示すものとして排出基準が定められる。
環境基本計画 条文解説「環境基本法15条」参照
環境教育 環境の保全についての理解を深めるために行われる環境の保全に関する教育および学習。2011年には「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(環境教育等促進法)」が制定された(環境教育推進法の改正)。また、現在、様々なテーマについて、「ESD(Education for Sustainable Development/持続可能な発展のための教育)」という、持続可能な未来や社会づくりのために行動できる人の育成を目的とした教育が進められているが、環境もその一つのテーマとなっている。(環境基本法25条)
環境権 環境を破壊から守るために、良い環境を享受しうる権利。環境基本法3条が関連しているが、明文化されているわけではない。(条文解説「環境基本法3条」参照)
環境配慮義務 国は、環境に悪影響を与えうる施策を策定・実施する場合には、事前に環境への影響を配慮しなければならないとする義務。環境基本法19条で規定されたため、個別の根拠法に環境配慮についての定めがなくとも、環境への配慮をしなければならない。また、施策の実施だけでなく、施策の策定の段階でも環境への配慮が求められる。
環境白書 政府が毎年、前年度におけるわが国の環境状況および環境保全に関する施策の実施状況と、今年度目指す環境保全に関する施策の実施についてまとめ公表する白書。1969年から公害対策基本法に基づき「公害白書」として発表し、1972年に「環境白書」と名称を改めた。1994年から、前年に環境基本法が制定されたことを受け、同法12条に基づく「環境白書」として発表している。2007年および2008年は循環型社会白書との合冊、2009年からは循環型社会白書および生物多様性白書との合冊で発表されている。
規制的手法 行政機関が事業者に対して行為の内容を決め、その遵守を強制するもの。排出基準の遵守の義務づけ、一定の事業活動に対する許可制や届出制、義務内容や許可要件の履行に対する監督、義務違反に対する介入措置が含まれる。利点としては、必要な行為を具体的に指示することにより明確性があること、短期間で望ましい状態が実現されるという確実性があること、が挙げられる。(環境基本法21条)
経済的手法 環境汚染に対する手法として、市場を用いて汚染者の活動を間接的に統制するもの。(条文解説「環境基本法22条」参照)
経済調和条項 1967年に制定した公害対策基本法で設けた、「生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにする」という規定。環境か経済かという二者択一の議論の中で、環境保全を経済発展の枠内で行うという考え方を示したもの。1970年の公害対策基本法改正時に削除された。環境基本法の下では、持続可能な発展の考え方がとられ、環境を基盤としつつ、経済を環境に適合する形で両者を統合するという、環境と経済の統合が図られている。
公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずるものであり、相当範囲にわたる、①大気汚染、②水質汚濁、③土壌汚染、④騒音、⑤振動、⑥地盤沈下、⑦悪臭によって、人の健康および生活環境に係る被害が生じること。いわゆる典型7公害。環境汚染自体を公害とみるのではなく、それによって人の健康または生活環境に被害が生じた場合に限定されているが、生活環境には、人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物およびその生育環境も含まれる。(環境基本法2条3項)
公害防止計画 現に公害が厳しい地域や、人口や産業の急速な集中等で公害が著しくなるおそれがある地域において、公害の防止に関する施策を総合的かつ計画的に講じるための計画。都道府県知事が、環境基本計画を基本として策定することができる(環境基本法17条)。2011年、環境大臣による都道府県知事に対する公害防止計画の策定指示は廃止された。
さ行
持続可能な発展(持続可能な開発) (条文解説「環境基本法3条・4条」参照)
受益者負担原則 国や地方公共団体が行う環境保全のための公共事業によって、特定の者が著しい利益を受ける場合には、その者に対して受益に応じて適切・公平に事業実施に要する費用の負担を求める考え方。特に自然環境保全に関しては、受益者負担が重要視されている(例、環境基本法38条、自然公園法58条、自然環境保全法38条)。
情報的手法 環境保全活動に対して積極的な事業者や環境負荷の少ない製品などを評価して選択できるよう、事業活動や製品・サービスに関して、環境負荷についての情報の開示・提供を進めることによって、各主体の環境配慮活動を促進しようとする手法。現在用いられている情報的手法の例としては、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)に基づく公表、温対法に基づく温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度(環境法令ガイド「温対法」参照)などがある。
は行
放射性物質 環境基本法13条は、放射性物質による大気汚染、水質汚濁および土壌汚染の防止について適用除外とし、放射性物質による汚染の扱いは環境法体系から除外されていた。しかし、2011年の福島第一原発事故を受け、2012年の改正時に環境基本法13条は削除され、環境法体系下で放射性物質による汚染(原子力問題)が扱われることとなり、それを受けて各個別法も改正された(例、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、環境影響評価法)。
ま行
未然防止原則 Preventive Principle。環境に脅威を与える物質または活動を、環境に悪影響をおよぼさないようにすべきであるとするもの。(条文解説「環境基本法4条」参照)
や行
予防原則 Precautionary Principle。環境に脅威を与える物質または活動を、その物質や活動と環境への損害とを結びつける科学的証明が不確実であっても、環境に悪影響をおよぼさないようにすべきであるとするもの。未然防止原則とは、科学的不確実性の有無が違いとなっている。予防原則の定義は複数存在するが、リオ宣言第15原則がよく知られている。それによると、予防原則は、①環境の評価にあたって、「科学的不確実性」という前提を伴うこと、②適用する要件として、起こりうる損害が深刻または不可逆のおそれがあること、③適用する効果として、科学的不確実性をもって対策を延期する理由として用いてはならない、とされている。