焼却処理

 焼却処理とは、ごみの減容化や無害化、再資源化を目的として、ごみを燃焼したり、その燃焼によって生じる焼却灰を溶融したりする技術のことである。焼却炉の種類によっていくつかの方式が存在するが、大きく、ごみを燃焼する「焼却炉」と、焼却灰を高温で溶融する「溶融炉」に分けることができる。
 我が国は、埋め立て可能な土地が限られることから、環境衛生の悪化防止も兼ね、ごみの中間処理として焼却処理を採用してきた。経済発展に伴いごみ排出量が増加し、従来の人手による運転方式では対応できなくなったため、機械式・連続運転式の焼却炉が導入されるようになった。その後の大気汚染対策やダイオキシン類対策に伴い、焼却技術は発展を遂げている。
 下図は、我が国での採用事例が多いストーカ式焼却炉のフロー図である。搬入されたごみは、機械による制御で焼却処理される。廃熱は焼却炉に供給されるほか、冷暖房や温水に利用される。また、近年は埋立地の残余年数問題や有害物質の溶出対策として、焼却灰を溶融処理する事例が増加している。

ごみ焼却施設のフロー図例(ストーカ式焼却炉)

ごみ焼却施設のフロー図例(ストーカ式焼却炉)
出典:香南清掃組合「設備の概要 ごみ焼却フロー図」
http://www.clean-kounan.jp/gaiyo.htm

※外部リンクは別ウィンドウで表示します

1.背景

1)ごみ減容化技術として期待される焼却処理

 我が国は、埋め立て処分地が限られていることから、ごみを焼却し減量・減容化する方法が中間処理技術として採用されてきた。なお、我が国のごみ処理プロセスは、「焼却」→「埋め立て」という流れであることから、ごみの焼却処理を「中間処理」、埋め立て処理を「最終処理」とも表現する。
 高度経済成長期に社会が大量生産・大量消費型へと変容したことに伴い、1人1日当たりのごみ排出量が増加し続け、昭和46年には1kgを越えてしまった(出典:環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課「日本の廃棄物処理」)。そのため、ごみ処理能力が不十分となり、不法投棄や環境の悪化への対策、埋め立て処分地の確保などが、喫緊の課題となった。
 この問題への対策として、社会に資源循環の概念を普及させることにより、ごみ排出量を抑制することと、全国的な焼却処理施設の拡充・整備が実施された。図1は、ごみ焼却施設の処理能力と、1人1日当たりのごみ排出量の推移である。前者は、統計が開始された昭和49年度以降、積極的に増強されている。後者は、昭和50年にリサイクルを推進する目的で(財)クリーン・ジャパン・センターを設立するなど、リサイクル活動の普及もあり一時は減少していたが、その後再び増加に転じた。近年は1,100g/人・日程度へと減少しつつある。

図1 ごみ焼却施設の処理能力と、1人1日当たりのごみ排出量の推移

図1 ごみ焼却施設の処理能力と、1人1日当たりのごみ排出量の推移
出典:環境省「平成21年版環境統計集」をもとに作成
http://www.env.go.jp/doc/toukei/contents/index.html

2)焼却処理に伴う諸問題とその対応策

 焼却処理は、ごみ減容化技術として役割を果たす一方で、焼却処理に起因する新たな公害問題への対応策も求められるようになった。
 昭和47年に大気汚染防止法および水質汚濁防止法が改正され、公害規制が強化された結果、化学工業からの移転技術である湿式洗煙装置や半乾式・乾式ガス処理装置、排水からの重金属除去装置が、焼却処理にも導入された。
 また、焼却処理の過程で発生するダイオキシンも過去に問題となった。これに対して、平成11年にダイオキシン類対策特別措置法が制定され、ダイオキシン類の処理が可能な高温焼却炉への更新や、各種ダイオキシン類分解処理技術が導入されている。
 廃棄物処理分野に由来する二酸化炭素などの温室効果ガスは、わが国全体の概ね3%弱を占めており、その4分の3が焼却処理に伴うものである。そのため、排出削減のための取組が検討されている。(出典:環境省「産業廃棄物分野における温暖化対策の手引き」)

3)焼却処理に期待される新たな役割

 近年では、循環型社会の構築に向け、焼却物の再資源化および焼却廃熱利用への動きが活発になってきている。前者は、焼却灰の建設資材への利用(例:エコセメント)、固形燃料への改質、金属回収などが挙げられる。後者は、廃熱を利用した焼却炉に供給する空気の加熱や、廃棄物発電などのために利用され、焼却施設内での化石燃料使用量削減に寄与している。

2. 技術の概要

 ここでは、焼却炉の種類、ごみ焼却施設における焼却処理の流れおよび焼却処理の例を紹介する。
 なお、焼却に伴い発生する熱を利用する廃棄物発電については「廃棄物発電」を、ごみを改質して燃料とする固形燃料化については「廃棄物固形燃料化(RDF、RPF)」を、焼却灰の再資源化については「再生材利用土木資材」を、大気汚染防止関連技術の詳細については、「排煙脱硫技術」、「排煙脱硝技術」、「ばいじん除去技術」を、焼却処分後の埋め立て処分については「最終処分及び浸出水処理」を、それぞれ参考にされたい。

1)焼却炉の種類

 表1は、主なごみ焼却炉の機種とその特性をまとめたものである。(1)から(3)までは、ごみを燃やす(高温で酸化する)型式で従来から広く普及している焼却炉である。(4)と(5)は、ごみを熱分解したときに発生するガスを燃焼または回収するとともに、焼却灰、不燃物等を溶融する型式で比較的新しい技術である。(6)は、(1)から(3)の焼却炉で発生した焼却灰を溶融・減容化するための施設である。

表1 ごみ焼却炉の機種とその特性
中間処理技術実績・動向等 評価
安定
稼動
発電
(1)ストーカ式燃焼炉[従来技術]安定した信頼性の高い機種
(2)流動床式焼却炉 [従来技術]
(3)キルン式焼却炉[従来技術]
(4)熱分解ガス化炉・ガス化溶融炉 [新技術・開発技術] ごみ質の均質化が求められる機種
(5)直接溶融炉 [新技術]
(6)灰溶融炉 [新技術・開発技術]

凡例)評価基準 ◎:優、○:良、△:可

出典:石川禎昭(2006)『特別企画2 焼却炉技術と最新事例』をもとに編集

(1)ストーカ式燃焼炉
 ごみを火格子(ストーカ)の上で移動させながら、ストーカ下部より送り込んだ燃焼空気によって焼却する焼却炉である。処理プロセスは、「乾燥」(ごみに含まれる水分を減らして燃焼しやすくする)、「燃焼」(ごみを焼却して減容化する)、「後燃焼」(燃え残ったごみを完全に焼却する)の3過程で構成される。ストーカの形状やごみの移動方式によっていくつか種類がある。
 図2は、並列揺動式のストーカ炉の模式図である。同方式では、ごみの進行方向に沿って、可動ストーカの縦列と固定ストーカの縦列とが交互に並んでおり、可動ストーカが振動(揺動)ことにより、ストーカ上のごみを順次内部に送りこみながら焼却を行う。

図2 代表的なストーカ形状(並列揺動式)

図2 代表的なストーカ形状(並列揺動式)
出典:(社)全国都市清掃会議『ごみ焼却施設整備の計画・設計要領(2006改訂版)』

(2)流動床式焼却炉
 ごみを流動床式焼却炉(充填した砂に空気を吹き込んで砂を流動状態にした炉)に投入して、燃焼熱を利用して可燃物を熱分解する焼却炉である(図3)。近年、流動床式焼却炉は、ガス化溶融炉に採用される事例が多い(流動床式ガス化溶融炉の技術解説は、「ガス化溶融」の解説を参照のこと)。また、流動床式焼却炉は竪型炉であることから、省スペース化を図ることができる。

図3 流動床式焼却炉の概念図

図3 流動床式焼却炉の概念図
出典:荏原環境プラント(株)「流動床式焼却システム TIF」
http://www.eep.ebara.com/prod/index.html

(3)キルン式焼却炉
 キルン(回転ドラム)内に破砕したごみをいれ、約450℃の空気のない状態で蒸し焼きにし、熱分解ガスと熱分解カーボンとに分解する焼却炉である(図4)。ガス化溶融の前処理として採用されており、その場合、熱分解カーボンは、キルン内で発生した熱分解ガスを利用して、1300℃の高温で溶融スラグ化される(詳細は、「ガス化溶融」の解説を参照のこと)。

図4 キルン式焼却炉の模式図

図4 キルン式焼却炉の模式図
出典:亀山市の環境「一般廃棄物処理計画(ごみ・排水)」(第2章 ごみ処理の現況(後半))
http://www.kameyama-eco.jp/haiki/kihon.html

(4)熱分解ガス化炉・ガス化溶融炉
 ごみを約450~600℃の低酸素状態で熱分解し、生成した可燃性ガスとチャー(炭状の未燃物)をさらに高温(1200~1300℃以上)で燃焼させ、その燃焼熱で灰分・不燃物等を溶融する技術である。近年、ダイオキシン対策として採用される事例が増えている。
 ストーカ式などの廃棄物焼却施設においては、処理残さである焼却灰を資源化する場合、そのための焼却残さ溶融施設等を併設して処理する必要があるのに対し、ガス化溶融施設は、一つのプロセスでこの機能を達成できる特徴がある(詳細は、「ガス化溶融」の解説を参照のこと)。

(5)直接溶融炉
 可燃ごみだけでなく、不燃ごみ、焼却残渣、汚泥、埋め立てごみ、フロンなど、資源リサイクル後の幅広いごみを一括溶融・資源化する焼却施設である。ごみの乾燥、熱分解、溶融の過程全てを、ガス化溶融炉で行うことができるという特徴がある。生成する可燃性ガスは後段の燃焼室で燃焼されるため、ごみを燃焼しやすくするための仕組みが必要であり、その方式によっていくつか種類がある。具体的には、溶融熱源としてコークスやプラズマトーチを採用する方式や、純酸素を吹き込むことで燃焼しやすくしたりする方式である。図5の例では、コークスを使用している。

図5 直接溶融炉のプロセスフロー(溶融熱源としてコークスを使用する例)

図5 直接溶融炉のプロセスフロー(溶融熱源としてコークスを使用する例)
出典:新日鉄エンジニアリング(株)「シャフト炉式ガス化溶融炉「直接溶融・資源化システム」」
http://kankyou.eng.nsc.co.jp/contents/shaft_furnace_features.html

(6)灰溶融炉
 (1)から(3)で紹介した焼却炉で発生する焼却灰を、溶融・減容化するための施設である。焼却灰を1300℃以上で溶かし、これを固めてスラグにする処理を行う。スラグはコンクリート原料等として使用できる。近年、最終処分場容量のひっ迫問題や、それに伴うごみ資源化の必要性、最終処分場からの有害物質の溶出問題等の諸問題を解決するための手段として採用される事例が増加している。
 溶融の方法によって、電気方式、バーナ方式、自己燃焼溶融方式、副資材方式、焼成炉などに分類される。図6は、プラズマ式灰溶融炉の例である。プラズマトーチ(陽極)と、炉底電極(陰極)間に高電圧をかけ、そこに作動ガス(空気など)を噴出することでプラズマアーク(電離した気体で、電気を通す)を発生させる。このプラズマアークの高温の熱と、電流がスラグ中を流れるときに発生する電気抵抗熱(ジュール熱)により、溶融処理を行う。

図6 プラズマ式灰溶融炉の構造図

図6 プラズマ式灰溶融炉の構造図
出典:JFEエンジニアリング(株)「灰溶融炉」
http://www.jfe-eng.co.jp/product/environment/environment2114.html

2)焼却炉の運転方式

 焼却炉は、運転の方式によって「全連続式」、「準連続式」、「機械化バッチ式」、「固定バッチ式」の4種類に分類される。

(1) 全連続式
 24時間連続で稼動する型式。焼却炉の処理状況に応じて、次のごみが投入され続ける。焼却処分されるごみの約8割が、この方式の焼却炉で処理されている。技術的な向上や、作業する人の焼却灰への暴露防止のために、他の型式の焼却炉から全連続式へと移行している。

(2) 準連続式
 1日のうち、決まった時間(例:16時間)だけ連続で(全連続式のように)稼動する型式。

(3) 固定バッチ式
 焼却炉へのごみの投入から焼却炉の運転、焼却灰の搬出までの一連の流れを人が行う型式。最初に投入されたごみが焼却処理されている間、新たなごみを投入しない点で連続式と異なる。なお、「バッチ」とは、作業の一連の流れのことで、連続式と対をなす概念である。

(4) 機械化バッチ式
 固定化バッチ式において人が作業する内容を、機械が行う形式。

3)焼却処理の流れ

 図7は、一般的なごみ焼却施設における、焼却処理のブロック図である。ただし、ガス化溶融炉の場合は、焼却設備と焼却残さ溶融施設が一体となっているため、焼却設備、灰出し設備、焼却残さ溶融設備についての説明が若干異なる(「ガス化溶融」の解説項目を参照されたい)。
 以下、焼却処理における各プロセスの代表的な機能・役割を紹介する。

図7 主要設備のブロック図

図7 主要設備のブロック図
出典:(社)全国都市清掃会議『ごみ焼却施設整備の計画・設計要領(2006改訂版)』

(1)受入供給設備
 収集車によって搬入されたごみは、“ごみピット”と呼ばれる、収集してきたごみの一時貯蔵庫に保管される。これは、ごみの焼却炉への供給量を一定に保ち、安定した状態でごみを焼却するために必要な設備である。
 ごみを焼却炉に一度に大量に投入しすぎると、炉内の温度が上がりすぎて炉を傷め、耐用年数を縮めてしまう。また、水分を多く含む厨芥(ちゅうかい:台所の生ごみ)が多いと、燃焼に必要な燃料が増えてしまう。そのため、搬入されたごみの撹拌や搬入操作のモニタリングが必要である。これらの作業は同一敷地内の制御室から遠隔操作によって実施されているが、コンピュータにより自動制御されている場合が多い。

(2)燃焼設備、通風設備(吸気)
 投入されたごみは、ここで焼却され、灰と燃焼ガスとに分離される。焼却設備にてダイオキシン類を分解する場合は、高温(800℃以上)で燃焼する必要がある。
 燃焼に必要な空気は、燃焼状態を安定させるため、空気予熱器で予熱した後、通風設備から送り込まれる。

(3)燃焼ガス冷却設備、余熱利用設備
 後段の排ガス処理設備を保護するため、また、焼却設備で分解したダイオキシン類の再合成(300℃程度で起こる)を防ぐために、燃焼ガスを200℃程度に冷却する設備である。排ガスがボイラー等を通過するときに熱交換が行われ、蒸気が発生する。蒸気は他の焼却プロセスで使用する熱の供給(例.空気予熱器)や発電、施設内外への熱エネルギー供給に利用される。

(4)排ガス処理設備、通風設備(排気)
 焼却炉から排出される排ガスには、微細な飛灰とともにダイオキシン類等の有害物質が含まれているため、適切な方法で除去する必要がある。その後、排ガスは誘引機送風機により煙突から排出される。煙突の高さは、排ガスが拡散して地上に届いた際に、十分安全な濃度となるように設計される。

(5)灰出し設備
 焼却設備で発生した焼却灰および、燃焼ガス冷却設備、排ガス処理設備にて発生した飛灰は、灰ピットに集められる。この状態でも埋め立て処分が可能であるが、近年は埋め立て処分地の延命化や有害物質の無害化・安定化を目的として、焼却残さ溶融設備にて溶融処理する事例が増えている。

(6)焼却残さ溶融設備
 焼却灰を溶融炉によって1300℃以上の高温で加熱し、溶融スラグ化する設備である。ごみ焼却施設の外部に別途建設する場合は、溶融施設という。溶融スラグは焼却灰の約半分の体積で、エコセメントなどの原料としても利用される。
 また、溶融処理の過程で溶融飛灰という新たな廃棄物が発生し、通常は埋め立て処理されるが、溶融飛灰から金属成分を回収する技術もある。
 なお、溶融処理の技術的な解説は、「ガス化溶融」の解説項目を参照されたい。

4)焼却処理施設の例

 ここでは、採用事例が多く、運転安定性に優れているストーカ炉の処理フローを説明する。図8は、ストーカ炉を採用しているごみ焼却施設の例である。基本的な流れは3)で説明した通りである。ごみピットに搬入されたごみは、燃焼状況を確認しつつ炉内へと投入される。燃焼ガスは熱回収した後、適切に処理されて煙突から排出され、焼却灰は灰ピットに集められて搬送される。また、発生する廃熱はストーカ炉内へ供給する空気の加熱以外にも、余熱利用設備で利用されることもある。

図8 ごみ焼却施設のフロー図例(ストーカ式焼却炉)

図8 ごみ焼却施設のフロー図例(ストーカ式焼却炉)
出典:香南清掃組合「設備の概要 ごみ焼却フロー図」
http://www.clean-kounan.jp/gaiyo.htm

3. 技術を取り巻く動向(焼却処理に関する安全性の研究)

 国立環境研究所では、循環型社会構築に向けた様々な研究を実施しており、その一環として、廃棄物の焼却等に関する安全性について研究を行っている。そのために、国立環境研究所の循環・廃棄物研究棟には、焼却炉や各種の排ガス処理装置が設置され、様々な条件下で焼却実験を行いながら、焼却にともなう微量物質の挙動を調べている。図9に示す焼却炉は、高温での燃焼状態を直接観察したり、廃棄物の滞留時間を変えたりすることのできる特別な研究用の焼却炉である。

図9 廃棄物の燃焼実験用の焼却炉

図9 廃棄物の燃焼実験用の焼却炉
出典:国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター「循環・廃棄物研究棟の紹介」
http://www-cycle.nies.go.jp/jp/center/shisetsu1.htm

 以下、関連する研究事例について紹介する。

1) 有機ハロゲン類を用いた焼却炉におけるダイオキシンの管理

 廃棄物焼却の過程で生じるダイオキシンについては、各焼却炉で燃焼管理や排ガス処理等の対策を進め、ダイオキシンの発生と排出をできるだけ低減するように努力している。ダイオキシンの適切な管理を進めるためには、焼却炉におけるダイオキシンの濃度を測定する必要があるが、ダイオキシンは微量にしか存在しないため、その測定には時間とコストがかかる。
 国立環境研究所では、様々な焼却炉を調査することによって、焼却炉から発生する有機ハロゲン類(クロロベンゼンやクロロフェノール類)とダイオキシンの発生量との間に相関関係があることを見出した。このことを利用すれば、ダイオキシンの代わりに有機ハロゲン類を測定して、焼却炉の燃焼状態を知り、ダイオキシンの管理を行うことが可能になると期待される。有機ハロゲン類はダイオキシンに比べて存在量も多く、測定も簡単なため、これが実現すれば、焼却炉でのダイオキシンをさらに効率的に管理することができる。

図10 焼却施設に設置された有機ハロゲン類の測定装置

図10 焼却施設に設置された有機ハロゲン類の測定装置
出典:国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
オンラインマガジン『環環kannkann』
「ごみ焼却炉から発生するダイオキシン類を管理するために」(2009年3月9日号)
http://www-cycle.nies.go.jp/magazine/kenkyu/20090309.htm

2) 廃棄物焼却とニトロ多環芳香族化合物との関係についての研究

 焼却炉でダイオキシンの生成を抑えるような高温での燃焼条件を設定すると、逆に特定の化学物質が増加する可能性がある。下図に示すニトロ多環芳香族化合物(PAH)もそうした可能性が指摘された化学物質の1つである。このニトロPAHは、強い変異原性をもつことが知られており、一部は発がん物質とされている。ダイオキシンを抑制することでニトロPAHが増加すると、逆にリスクが増大する可能性も否定できないが、廃棄物焼却におけるニトロPAHの挙動はよく分かっていなかった。
 このような背景から、国立環境研究所で調査を行った結果、ダイオキシンの排出削減対策はニトロPAHの排出抑制にも有効であることが明らかになった。

図11 焼却施設に設置された有機ハロゲン類の測定装置

図11 焼却施設に設置された有機ハロゲン類の測定装置
出典:国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター オンラインマガジン『環環kannkann』
「ゴミの燃焼とニトロ多環芳香族化合物」(2008年2月4日号)
http://www-cycle.nies.go.jp/magazine/kenkyu/20080204.htm

3) LCAを用いたガス化溶融炉の溶融飛灰の環境影響評価

 ガス化溶融炉から発生する溶融飛灰には、鉛や銅などの重金属が含まれている。こうした重金属の対策としては、溶融飛灰から重金属を回収する「山元還元」という方法と、重金属が溶出しないように溶融飛灰を固定化して埋め立て処分する方法があるが、「山元還元」による回収処理の安全性が懸念されていたため、従来は埋め立て処分が採用されていた。
 国立環境研究所では、この「山元還元」と溶融飛灰の埋立処分とを、LCA手法を用いて比較した。その結果、山元還元では埋立処分に対して温暖化ガス排出量は増加するものの、重金属固定化処理が不十分な場合の溶融飛灰埋立に伴う環境リスク等を大きく低減できる可能性があることを見出した。

引用・参考資料など

(2009年12月現在)