東京大学、筑波大学および国立環境研究所の研究者らは、液体脂肪酸が光分解する時に発生するヒドロキシラジカル(以下「OHラジカル」)を直接観察し、生成効率を定量測定することに成功した。地球大気の21%(体積ベース)を占める酸素の一部は「酸化力の強い酸素(活性酸素)」へと順次変化している。活性酸素のなかでも「OHラジカル」は極めて反応性が高く、大気中のあらゆる物質と反応する。気体と微小な液体粒子・固体が混合・凝縮した微粒子(エアロゾル)の濃度や変質に影響をおよぼすことから、「大気の掃除屋」とも呼ばれている。また、エアロゾルは雲(粒)の形成に関与しているため、放射強制力(気候に対して与える放射の大きさ)にも間接的な影響を与える。OHラジカルは主にオゾンの光分解によって生成されているが、オゾン以外からの生成プロセスも多数報告されている。本研究では、液体脂肪酸の一種であるノナン酸(以下「NA: Nonanoic acid」)の光反応・CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)7COOH+hν→CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)7CO+OHに着目している。NA(ペラルゴン酸とも言う)は特定の植物等から排出される難溶性・無色の飽和脂肪酸で、海洋表面やエアロゾルなどの液体界面に普遍的に存在している。対流圏を模した真空(減圧)下において、レーザー誘起蛍光法(Laser Induced Fluorescence: LIF)と和周波発生振動分光法(Vibrational Sum-Frequency Generation spectroscopy: VSFG)を組み合わせることで、当該反応の実態把握に接近した。LIFによる観察を通じて、液体状のNAに由来するOHラジカルが検出され、その生成効率は極めて低いことが明らかになった(気体状の脂肪酸の100分の1以下)。一方、VSFGによる計測によって、液体NAが特殊な環状二量体構造を呈しており、それがOHラジカルの形成を阻害し、光化学反応性の低下をもたらしていることが示唆された。本研究の着眼点と開発手法は、地球大気化学のみならず物理・化学の分野においても世界に類を見ない新しい試みであり、基礎科学として今後の発展が大いに期待されるという。
情報源 |
【オンライン情報源1】 東京大学 プレスリリース 【オンライン情報源2】 筑波大学 TSUKUBA JOURNAL 【オンライン情報源3】 国立環境研究所 報道発表 |
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配布形式1 |
【交換形式名称】HTML 【版】不明 |
タイトル | 東大など、液体脂肪酸のヒドロキシラジカル生成メカニズムを解明 |
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日付1 |
刊行日: 2022/09/08 |
要約 | 東京大学、筑波大学および国立環境研究所の研究者らは、液体脂肪酸が光分解する時に発生するヒドロキシラジカル(以下「OHラジカル」)を直接観察し、生成効率を定量測定することに成功した。地球大気の21%(体積ベース)を占める酸素の一部は「酸化力の強い酸素(活性酸素)」へと順次変化している。活性酸素のなかでも「OHラジカル」は極めて反応性が高く、大気中のあらゆる物質と反応する。気体と微小な液体粒子・固体が混合・凝縮した微粒子(エアロゾル)の濃度や変質に影響をおよぼすことから、「大気の掃除屋」とも呼ばれている。また、エアロゾルは雲(粒)の形成に関与しているため、放射強制力(気候に対して与える放射の大きさ)にも間接的な影響を与える。OHラジカルは主にオゾンの光分解によって生成されているが、オゾン以外からの生成プロセスも多数報告されている。本研究では、液体脂肪酸の一種であるノナン酸(以下「NA: Nonanoic acid」)の光反応・CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)7COOH+hν→CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)7CO+OHに着目している。NA(ペラルゴン酸とも言う)は特定の植物等から排出される難溶性・無色の飽和脂肪酸で、海洋表面やエアロゾルなどの液体界面に普遍的に存在している。対流圏を模した真空(減圧)下において、レーザー誘起蛍光法(Laser Induced Fluorescence: LIF)と和周波発生振動分光法(Vibrational Sum-Frequency Generation spectroscopy: VSFG)を組み合わせることで、当該反応の実態把握に接近した。LIFによる観察を通じて、液体状のNAに由来するOHラジカルが検出され、その生成効率は極めて低いことが明らかになった(気体状の脂肪酸の100分の1以下)。一方、VSFGによる計測によって、液体NAが特殊な環状二量体構造を呈しており、それがOHラジカルの形成を阻害し、光化学反応性の低下をもたらしていることが示唆された。本研究の着眼点と開発手法は、地球大気化学のみならず物理・化学の分野においても世界に類を見ない新しい試みであり、基礎科学として今後の発展が大いに期待されるという。 |
目的 | ニュースリリース等の配信 |
状態 | 完成 |
問合せ先(識別情報)1 |
【組織名】東京大学 【役職名】 【個人名】 【電話番号】 【FAX番号】 【住所】 【E-mail】 【オンライン情報源】東京大学 【案内時間】 【問合せのための手引き】 【役割】情報資源提供者 |
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分野 |
大気環境 地球環境 |
種別 | ニュース・イベント:ニュース:国内ニュース |
場所 | アジア:日本 |
キーワード | 地球大気化学、エアロゾル、OHラジカル、活性酸素、対流圏、液体脂肪酸、光分解、ヒドロキシラジカル、ノナン酸、環状二量体構造 |
言語1 | 日本語 |
文字集合1 | utf8 |
主題分類 | 環境 |
ファイル識別子 | 113795 |
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言語 | 日本語 |
文字集合 | |
親識別子 | |
階層レベル | 非地理データ集合 |
階層レベル名 | 国内ニュース |
日付 | 2022/10/05 |
メタデータ標準の名称 | JMP |
メタデータ標準の版 | 2.0 |
国内ニュース | https://tenbou.nies.go.jp/news/jnews/detail.php?i=34446 |
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