赤外分光・AI融合技術─木造建築物の長寿命化を支持

京都大学大学院農学研究科・寺本准教授らの研究グループは、木材塗装の劣化を非破壊かつ早期に予測する技術を開発した。この技術は、中赤外分光法(ATR-FTIR)と機械学習(PLS回帰)を組み合わせたもので、塗膜の外観には表れない分子レベルの変化を高い精度で予測できる。──世界的にCLT(Cross Laminated Timber)の需要が増えており、欧米では木材のCO2固定能力に着目した高層木造建築の計画が続々と発表されている。寺本准教授らは、早晩、木材の劣化を早期に検出し、メンテナンスの効率化と信頼性の向上に資する技術へのニーズが高まるとにらみ、新たな診断手法の開発に着手した。本研究では先ず、木材用の水系アクリル樹脂塗料に植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)を添加し、複数の塗膜を作製した。そして、人工気象装置による加速劣化試験を行い、得られたスペクトルデータに基づく回帰モデルを構築した。このモデルを実材に適用した結果、塗膜の劣化時間を定量的に予測できることが確認された。つまり、塗装木材建築物の迅速かつ非破壊な点検が可能となり、木材の生物劣化に至る前段階の「目に見えない劣化」を省力的にかつ数値的に把握できるようになったということだ。また、この手法は木材塗料に限らず、金属やコンクリートといった他素材の塗膜にも応用可能であり、さまざまな建築・インフラ分野における耐候性評価の効率化への貢献も期待される。研究グループは今後、実フィールドでの検証データをもとにモデルの精度をさらに高め、劣化予測の標準化に取り組むという。

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