東北大ら、もみ殻と鉱山副産物から高耐久性電池触媒を開発

東北大学学際科学フロンティア研究所を中心とする研究グループは、秋田大学、北海道大学らとの共同研究により、農業廃棄物のもみ殻と鉱山副産物のパイライト(黄鉄鉱:FeS₂)を原料とした高耐久性の燃料電池用触媒の開発に成功した。従来、電池の酸素還元反応(ORR)には高価で希少な白金(Pt)が用いられてきたが、本研究により、未利用資源を活用し、白金に匹敵する性能を持つ代替触媒が実現した。

もみ殻は世界で年間約1億トン以上発生し、分解されにくいため焼却処分されることが多く、環境負荷が課題となっていた。一方、銅鉱石の採掘に伴って副産物として大量に発生するパイライトも、活用が進まず廃棄されており、酸性水の発生による土壌・水質汚染が懸念されている。本研究では、パイライト由来の鉄イオンを含む水溶液にもみ殻を浸漬し、水熱炭化によって鉄を均一に分散させた後、窒素雰囲気下で高温炭化し、尿素を添加することでFe–N₄構造を形成。この構造はORRに対して高い活性を示すが、酸性条件下では不安定になりやすいという課題があった。今回のプロセスにより、構造の均一性と安定性が向上し、酸性・中性・アルカリ性の各条件下で白金触媒に匹敵する起電力を示した。さらに、14時間の連続運転試験では、白金触媒を上回る電流保持率を記録。特筆すべきは、従来は除去対象とされてきたもみ殻中の非晶質シリカ(アモルファスSiO₂)が、鉄との相互作用により構造安定化に寄与している可能性が示された点である。これは、未利用資源に含まれる成分を無駄なく活用する新たな触媒設計のアプローチとして注目される。

本触媒は、安価な原料と簡便な工程で製造可能であり、将来的な量産・実用化に向けた展開が期待される。今後は、亜鉛空気電池をはじめ、燃料電池、微生物燃料電池、有機空気電池など多様な次世代エネルギーデバイスへの応用が検討されている。また、地域資源の地産地消型活用モデルとして、自治体や企業との連携による地域エネルギーインフラへの応用も視野に入れている(掲載誌:Journal of Power Sources)。

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