北大、単居性魚類の稚魚が示す社会的学習行動を確認
発表日:2025.05.16
北海道大学大学院水産科学院の修士課程学生である中山大祐氏(研究当時)を中心とする研究グループは、同大学水産科学研究院の石原千晶助教および和田哲教授とともに、単居性の硬骨魚類であるアゴハゼ稚魚が、他個体の行動を観察することで新たな餌と餌場を学習する能力を持つことを明らかにした。これは、単居性の硬骨魚類における社会情報利用の報告としては世界で2例目となる。
動物は、自らの経験に基づく独自情報と、他個体の行動から得られる社会情報を使い分けることが知られている。特に若齢個体は経験が乏しいため、社会情報の利用が有利とされるが、これまでの研究はグッピーなどの群れを形成する魚種に偏っていた。単居性魚類における検証は極めて少なく、硬骨魚類ではカレイ類1種の報告にとどまっていた。
本研究では、日本の潮間帯に生息するアゴハゼ稚魚を対象に、自然界で経験のない「水面に浮かぶ人工フレーク餌」を用いた摂餌課題を設定。経験個体と未経験個体を組み合わせた実験により、未経験個体が経験個体の行動を観察することで、餌の摂取頻度が高まり、摂餌までの時間が短縮されることが確認された。
この結果は、アゴハゼ稚魚が社会情報を活用して新たな餌と餌場を学習できることを示しており、単居性魚類における社会的学習の可能性を広げるものである。特に、カレイ目とは系統的に異なるスズキ目で同様の行動が確認されたことは、硬骨魚類全体における普遍的な能力の存在を示唆する。本研究は、魚類の行動生態学における知見を拡張するとともに、動物の学習メカニズムに関する理解を深める成果である。論文は2025年4月28日付で動物行動学専門誌「Ethology」に掲載された。
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