森林総研ら、"地下の森林"による気候変動対策を提唱
発表日:2025.06.23
森林総合研究所は、飛島建設、ソイルウッドとの共同研究により、「地中に打設された木材杭(本研究では『地下の森林』)」が80年以上にわたり劣化せず炭素を安定的に貯蔵していることを実証した。これは、軟弱地盤対策として古くから用いられてきた丸太打設工法が、気候変動対策にも資する可能性を科学的に示したものである。
森林は大気中の二酸化炭素を吸収・固定する炭素貯蔵庫として知られているが、伐採や災害などにより炭素が失われるリスクがある。一方、地中に打設された木材は、酸素濃度が低い環境下で微生物による分解が抑制され、長期にわたり炭素を保持する可能性がある。研究では、福井県で地下水位以下に80年以上埋設されていたマツ杭4本を対象に、軟X線デンシトメトリーを用いて密度分布を解析。結果として、外周部と内部の密度に差がなく、劣化が生じていないことが確認された。この成果は、木材製品の炭素蓄積量を評価する新たな科学的根拠となる。──現在、国際的な炭素会計ルールでは、製材やパネルなどの木材製品に対して一定の半減期(35年・25年)を設定しているが、本研究は「地下の森林」としての木材杭がそれを大きく上回る長期安定性を持つことを示した。今後、こうした地下埋設木材の炭素蓄積量を正式に計上する制度設計が進めば、木材需要の拡大と気候変動の抑制に寄与する可能性がある。