レアメタルを含めた金属リサイクルと小型家電リサイクル法

レアメタルを含めた金属リサイクルと小型家電リサイクル法

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【目次】


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はじめに


 「レアメタル」という言葉を良く耳にするようになりました。「携帯電話やPCを動作させる上で無くてはならない」とか、「とても貴重な資源なので、リサイクルをして大事に使っていこう」という認識が徐々に広まってきているように感じられます。


 そうした中、平成25年4月から「小型家電リサイクル法」という新しい法律が施行されました。


 法律の目的条文には「使用済小型電子機器等に利用されている金属その他の有用なものの相当部分が回収されずに廃棄されている状況に鑑み、使用済小型電子機器等の再資源化を促進するための措置を講ずる」と書かれています。


 ここに挙げられている「使用済小型電子機器等に利用されている金属」とはとはどんな金属のことを指すのでしょうか?


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 このトピックスでは、小型電気電子機器製品中に含まれる金属のリサイクルと平成25年4月に施行された小型家電リサイクル法について、そしてその中でレアメタルリサイクルはどのような位置づけであるのか、に焦点を当てて紹介します。


※外部リンクは別ウィンドウで表示します


※本トピックスでは次の類似の3つの語句を同じ意味として用いますが、場合により使い分けております。
 - 小型電気電子機器 : 代表的に用います。
 - 小型電子機器等 : 法律文を引用する際に用います。
 - 小型家電 : 「小型家電リサイクル法」という語句として用います。また一部タイトルとして「小型家電リサイクル」という語句を用います。
  *その他、引用文献、参考文献等を記載する場合にはそれぞれ記載の通りとして用います。



Part1.金属リサイクルについて

まず金属リサイクルの概況について、続いて小型電気電子機器製品に焦点を当てて紹介していきます。


金属リサイクルの現状

 私たちの国では循環型社会の形成を推進することを重要な方向性として定めており、使用済み製品に含まれる有用金属(資源として価値のある金属)のリサイクルもそのうちのひとつとして重要であると考えられます。


 それでは現在、一旦製品となった金属のリサイクルはどの程度進んでいるのでしょうか。


金属スクラップ


 金属は種別に大きく分けると、代表的なものとしてベースメタル、貴金属、レアメタルなどに分けられます。

・ベースメタル : 鉄、銅、アルミニウム、鉛など。比較的埋蔵量が多く、古くから幅広く利用されてきた金属で、現在も生産量が多い。リサイクル技術も既に確立しているものが多く、特に鉄と鉛をはじめとして他の金属よりもリサイクル率は高い


・貴金属 : 金、銀、白金、パラジウムなど。埋蔵量、生産量共に少なく、希少価値が高い。リサイクル技術は確立しているものの、利用形態によっては(製品中で非常に少量しか使用されないなど)経済性に見合うまでに「量」を集めることが困難なこと等により、リサイクル率が低いものもある


・レアメタル : リチウム、ニッケル、タングステンなど。また17種類の元素を総称したレアアースもレアメタルの1鉱種として含まれる。製品中での使用量は非常に少ないものの、高機能を発揮するためには欠かせない必須元素として使われているケースが多い。現在では使用済み製品として回収しても、レアメタルのリサイクル技術としては発展途上であり、リサイクル率は低いか殆どリサイクルされていないものが多い、といった状況である。


※レアメタルについて補足 : なお、現在、経済産業省では、レアメタルとして、「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、現在工業用需要があり今後も需要があるものと、今後の技術革新に伴い新たな工業用需要が予測されるもの」との定義のもとで、31鉱種を対象としているが、定義を踏まえ鉱種は情勢に応じて見直しがあり得るとされている。


※用語の使い分け「回収」と「リサイクル」 : 「回収」とは使用済み製品を集めることを指し、「リサイクル」とは使用済み製品から部品や有用金属などを取り出すプロセスを指す。


※リサイクル率については、鉱物資源マテリアルフロー(JOGMEC)を参考とした。

参考)
- 鉱物資源マテリアルフロー JOGMECデータベース検索ページ
※検索キーワード「鉱物資源マテリアルフロー」、カテゴリー選択「報告書&レポート」

   ベースメタル例 : 鉛(2011)

   貴金属例 : プラチナ、パラジウム、ロジウム(2011)

   レアメタル例 : リチウム(2011) 、 レアアース(2011)

参考)
- 金属のリサイクル率(Recycling Rates of Metals)2011年5月 国連環境計画(UNEP) より ※日本国内に限らず調査可能なデータによる



 ここまで金属種別に見てきましたが、「製品種別」ではどうでしょうか。既存の法律によりリサイクルが義務付けられている品目(PC・家電4品目(テレビ、冷蔵庫など)・小型二次電池など)、また国のガイドラインにより事業者の自主的な取組みを促進することを目的としてリサイクルが進められている品目(スチール缶、アルミ缶、携帯電話、自動車など)、については一定程度のリサイクル率があるようです。


家電4品目写真


 例えば、デスクトップ型PC本体の再資源化率(※)は平成23年度において74.1%(法定目標は50%)と報告されています(パソコン3R推進協会HPより)。特に金属で言えば、技術的・経済的理由により、最終的に再生資源として利用されるまでのリサイクルが行なわれているのは一部の種類に留まる状況です。


 ※ここで言う再資源化率とは、処理した廃PCの総重量のうち中古リユースした部品や、鉄などとしてリサイクルした再生資源の重量が占める割合を指す。 ※参考:パソコン3R推進協会HP

参考)
- 廃棄物処理・リサイクルガイドラインの概要 産業構造審議会 より

- 使用済パソコンの回収および再資源化実績 一般社団法人 パソコン3R推進協会 より

- 関連省令


 また、家電4品目、パソコン以外の製品については、これまで回収・リサイクルするシステムがほぼ存在せず(※)、それらの製品に含有されている銅、アルミニウム、貴金属、レアメタルはほとんど有効利用されていませんでした。


 ※自治体の粗大ごみや不燃ごみ処理等では鉄や一部の銅、アルミニウムがリサイクルされているケースがあります。



小型電気電子機器に含まれる金属

 製品種別のうち「小型電気電子機器」に焦点を当ててみます。


 小型電気電子機器とは、家電リサイクル法で定める家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)を除く、比較的小型(※)で、有用金属を高濃度で含む部品(例として電子回路基板等)を有しているもの、を指します。


 ※「小型」についての決まった定義はありません。政令(法律施行令第一条)では、電気マッサージ器、ランニングマシン、電気芝刈機といった、通常では小型と分類しないような機器もリストアップされています。


 1年間に使用済みとなる小型電気電子機器の台数・重量と有用金属含有量について推計した報告があります。


表1 : 1年間に使用済みとなる小型電気電子機器台数・重量と有用金属含有量

使用済み小型家電中の金属推計



 これらの製品を捨ててしまうことなく回収し、中の有用金属を全てリサイクルすることができればとても良さそうに思えます。


 しかし、使用済み小型電気電子機器の回収及び有用金属のリサイクルは今までほとんど行われてきませんでした。一番大きな理由は、経済的に見合わない、ということです。


 経済的に見合うための条件の一つとして効率の良いリサイクルをすること、つまりリサイクルしたい物質の濃度が高いことが重要となります。そのためには回収される一つ一つの使用済み製品中に目的物質が多く含まれていれば良いのですが、小型電気電子機器でそれに該当する金属は鉄やアルミニウム、銅くらいであり、大抵の金属はほんの少し含まれているくらいです。


表2 : 1年間に使用済みとなる小型電気電子機器(携帯電話、パソコン)に含まれる有用金属の種類別含有量

使用済み小型家電中の金属推計2


 沢山の使用済み製品を集めて、そこから濃度を高めることも技術的には不可能ではありませんが、小型電気電子機器は「小型」であるがゆえに回収の手間(=コスト)がかかり、また非常に多種多様であるために同質のものを大量に集めることが大変です。多様であることは、技術の焦点を絞り辛く、ある特定の金属の濃度を効率良く高めることが難しい、ということになります。現在の技術はまだ発展途上のものも多く、経済性を大きく高める低コストな技術の登場が待たれるところです。


家電写真



発展的内容見出し「使用済み小型電気電子機器の回収と、有用金属リサイクルの効果推計」

 使用済みとなった小型電気電子機器のうち、実際に国内でリサイクルされる割合は、下記のいくつかの理由により、減少していきます。

 - 排出せずに家等で保管される(退蔵)
 - 海外でリユース等される(海外流出)
 - 排出されるもののリサイクルされないルートで処分される(回収率問題)
 - 中間処理や精錬段階での歩留まり(技術的問題)

参考)
- 使用済み小型家電の『退蔵』 / モノの寿命
 環環KannKann(国立環境研究所、資源循環・廃棄物研究センター) より

- 使用済小型電気電子機器のフロー推計結果 環境省資料 より
 ※特に海外流出について


 このうち、回収率を仮に20%、あるいは30%と設定して推計を進めると、表1の製品重量合計65万トンはそれぞれ約13万トン、約19.5万トンに減少し、これらは一般廃棄物最終処分量(平成21年度:約507.2万トン)と比較してみると、それぞれ約0.74%、約1.1%に当たる量となります(※埋立処分割合29%も加味)。つまり、小型電気電子機器がこの程度回収されることで、本来最終処分場に埋め立てられるはずだった分の廃棄物が重量で1%前後減量化される効果があることになります。


 回収した後は、破砕や目的物質をより分ける分離などの多くの工程を行なう中間処理、また高熱で目的金属を分離させる精錬工程などがあります。各工程ごとに、現在の技術力ではどうしても発生する大小のロスがあるのですが、それを表わす値として歩留まり率(1-ロスする率)があります。


 ここで、多くの工程の歩留まり率をひっくるめた経験値を使って大まかな計算をしてみます。表1中の有用金属含有量合計28万トンに対し、上記回収率2パターンに加えて歩留まり率0.63を適用すると、有用資源リサイクル量はそれぞれ約3.5万トン、約5.3万トン、金額にするとそれぞれ約106億円、約160億円になります。


 もちろん、個別の金属種別内訳まで見れば、有用金属資源リサイクル量の数値も大小それぞれです。例えば、回収率30%、歩留まり率0.63での金、銀、タンタルのリサイクル量の効果をそれぞれの国内需要量と比較して推し量ってみると、それぞれ約1.2%、約0.7%、約1.8%のインパクトを持つことが推測されました。つまりリサイクルをすることによって鉱石原料から生産される分のうちこの程度の割合をリサイクル金属で代替することができる、ということです。ただし、これらの金属はまだ数値が大きい例であって、その他の金属のほとんどは0.数%オーダー以下となるようです。





使用済み小型電気電子機器リサイクル制度の必要性

 前述のように、これまでの法制度の枠組みの範囲では、経済的、技術的な障壁により、小型電気電子機器のリサイクルはうまく回らないのではと推測されています。


 しかし、特にレアメタルをはじめとして、鉱物資源のほとんどを輸入に頼っている我が国では、将来的な供給不足等のリスクに備えるためにも、これまでの取り組みを分析し、課題となっているいくつかの点を考慮した新しい制度的な枠組みを設けて、リサイクルを推し進めていく必要性が生じました。それが平成25年4月より施行された小型家電リサイクル法(正式名:使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律)になります。


 新しい枠組みのポイントとしては大まかに次の点が挙げられます。

[1] 義務型ではない促進型のリサイクル法 : 各家庭等から排出される使用済み小型電気電子機器は主に各市町村で分別収集するが、義務ではなく、取組み可能と判断した市町村が自主的に参加する仕組みである。参加を促進させるために、国や都道府県は市町村に対し財政的な支援をしたり、国民が適正に分別排出するように教育、広報活動等のサポートをする。また、市町村が集めた使用済み製品を収集・運搬する認定事業者には、広域収集・運搬を認定の条件とし、代わりに廃棄物処理法上の業許可を不要として、確実安定的にリサイクルを行なう主体として制度的に担保する。また、金属の市況変動等に関わらず、市町村から継続的に引き取りを行なうことができることも認定の条件とする。


[2] 国内リサイクルの促進と海外不適正処理の防止 : 現在、使用済み小型電気電子機器の一部は海外にリユース製品として流れ、あるいは資源として輸出されているが、不適正な処分により環境汚染を引き起こしている事例も指摘されている。資源がなるべく国内で循環することができる制度を作ることによって、そのような海外での環境保全上の問題が起こらないようにしつつ、資源戦略面でもプラスとする。また、国内のリサイクル業者や技術を育成することにもつながるメリットがある。


 [1][2]をポイントとした枠組みを推し進めることにより、小型電気電子機器の回収する種類と量を増やし、また技術力も高めて、経済的にも技術的にもリサイクル可能な状況を作っていこうとするものになります。


 小型家電リサイクル法については、Part3で更に詳しく取り上げることとし、まずPart2でレアメタルについて紹介します。


※国立環境研究所(NIES)の関連研究成果についてはPart4.をご覧ください。



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