レアメタルを含めた金属リサイクルと小型家電リサイクル法

レアメタルを含めた金属リサイクルと小型家電リサイクル法

レアメタルを含めた金属リサイクルと小型家電リサイクル法


【目次】


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法の目的と各主体の責務
・各主体の取組状況
     自治体   学術研究機関   企業

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Part1と2では小型電気電子機器とは何か、また法が施行されるに至った背景について見てきました。Part3では小型電気電子機器のリサイクルの目的や各主体の責務についてもう少し詳しく紹介し、具体的な取り組み事例についても紹介します。


もったいない見出し

 小型家電リサイクル法がつくられる背景には、資源として再利用することができる有用金属が含まれていながらも、そのまま捨てられている使用済みの小型電気電子機器が多くあることから、単純に「もったいない」というところから話が始まっており、資源の確保という側面が大きいものとなっています。また、特徴的であるのは、このリサイクルは促進型であり、義務ではないということ。これらの点から、本法は今後のリサイクルの流れを示唆する新しい制度であると言えます。

参考)
- ECO QUESTION 環境省エコジン2012年10・11月号20-21ページ より


 この制度をうまく機能させていくためには、国民を含めた各主体が、意識的に仕組みに参加して取り組んでいくと共に、持続的に動くような仕組みづくりに向けたアイデア出しなどが継続的に必要になってきそうです。



小型家電リサイクル法の目的と各主体の責務

 小型家電リサイクル法では、何に対してどう対応しようとしているのでしょうか?法の目的や誰がどんなことに取り組むことを定めているのかを見ていきます。


法律の目的

 小型家電リサイクル法は、資源制約面(①新興国の需要増大に伴う資源価格高騰、②資源供給の偏在性など)と環境制約面(①最終処分場のひっ迫、②適正な環境管理)により、特に使用済み小型電子機器等に焦点を当て、再資源化を促進することで、貴金属やレアメタル等の貴重な資源の有効な利用の確保と、廃棄物の適正な処理を図ることが目的となっています。


小型家電リサイクル


リサイクルの流れと役割分担

 法の仕組みとして、リサイクルの流れと関係者の役割分担を見ていきます。小型電気電子機器の製造から、使用済みになったものの排出、回収、再資源化のための中間処理や金属精錬に至るまでの流れの中で、それらに関わる各関係者(主体)に次のような責務を定めています。 ※責務とは、義務ではないものの「果たすべき役割」のような意味

製造業者の責務
 : 設計、部品、原材料の工夫により再資源化費用低減 / 再資源化により得られた物の利用

小売業者の責務
 : 消費者の適正な排出を確保するために協力

消費者・事業者の責務
 : 分別して排出

認定事業者の責務
 : 責任を持って適正な再資源化事業に取り組む

自治体(市町村)の責務
 : 分別して収集 / 認定事業者への引渡し / 消費者への普及啓発
   ※各市町村の特性に合わせて回収方法を選択

自治体(都道府県)の責務
 : 市町村への助言や回収への協力

国の責務
 : 必要な資金の確保 / 情報収集、研究開発の推進 / 教育、広報活動


フロー

図1 : 小型電気電子機器リサイクルの流れ



 ここでポイントとなるのは、使用済み小型電気電子機器リサイクルに参加する各主体の採算性を確保するためには、より多くの量の使用済み小型電気電子機器を集める必要があり、広域的かつ効率的に回収することが大事である、という点、また市町村が回収した使用済み小型電気電子機器を、さらに広域で収集・運搬したり、中間処理や精錬をする事業者は、国によって認定された者(認定事業者)でなければならない、という点です。


 再資源化事業の認定について、法では、事業者と国に対し以下のように定めています。

再資源化事業を行おうとする者
 : 再資源化事業の実施に関する計画を作成し、主務大臣の認定を受けることが出来る。




 : 再資源化事業計画の認定

認定された事業者
 : 再資源化事業計画の認定を受けた者又はその委託を受けた者が使用済小型電子機器等の再資源化に必要な行為を行うときは、市町村長等の廃棄物処理業の許可を不要とする。 / 収集を行おうとする区域内の市町村から分別して収集した使用済小型電子機器等の引取りを求められたときは、正当な理由がある場合を除き引き取らなければならない。




 : 再資源化事業計画の認定を受けた者に対する指導・助言、報告徴収、立入検査 / 認定の取消し


 また、大きなポイントとして、小型家電リサイクル法は規制的な手法ではなく、各主体がそれぞれの実情に合わせて自主的に参加していける仕組みとなっていることが特徴です。回収する品目や消費者の費用負担についても自治体ごとに決めることになっています。


法と政令での対象回収物

 自治体回収の対象となる小型電子機器等について法や政令の記述を見てみます。


 小型家電リサイクル法の第二条、第一項では、「小型電子機器等」とは、一般消費者が通常生活で使用する電子機器その他の電気機械器具(エアコン、テレビ、電気冷蔵庫・電気冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機を除く)であって、廃棄物(※)になった場合に、
[1]効率的な収集及び運搬が可能であるもの
[2]廃棄物の適正処理あるいは資源の有効利用を図る上で再資源化が特に必要で、再資源化における経済的制約が著しくないもの
として、政令で定めるものという、としています。


 ここで「政令で定めるもの」としていますが、法施行令第一条では、政令で定める電気機械器具として、次に掲げるものを挙げています(これらの附属品を含む)。


一 電話機、ファクシミリ装置その他の有線通信機械器具

二 携帯電話端末、PHS端末その他の無線通信機械器具

三 ラジオ受信機及びテレビジョン受信機

(家電リサイクル法施行令、第一条第二号に掲げるテレビジョン受信機を除く。)

四 デジタルカメラ、ビデオカメラ、ディー・ブイ・ディー・レコーダーその他の映像用機械器具

五 デジタルオーディオプレーヤー、ステレオセットその他の電気音響機械器具

六 パーソナルコンピュータ

七 磁気ディスク装置、光ディスク装置その他の記憶装置

八 プリンターその他の印刷装置

九 ディスプレイその他の表示装置

十 電子書籍端末

十一 電動ミシン

十二 電気グラインダー、電気ドリルその他の電動工具

十三 電子式卓上計算機その他の事務用電気機械器具

十四 ヘルスメーターその他の計量用又は測定用の電気機械器具

十五 電動式吸入器その他の医療用電気機械器具

十六 フィルムカメラ

十七 ジャー炊飯器、電子レンジその他の台所用電気機械器具

 (家電リサイクル法施行令、第一条第三号に掲げる電気冷蔵庫及び電気冷凍庫を除く。)

十八 扇風機、電気除湿機その他の空調用電気機械器具

(家電リサイクル法施行令、第一条第一号に掲げるユニット形エアコンディショナーを除く。)

十九 電気アイロン、電気掃除機その他の衣料用又は衛生用の電気機械器具

(家電リサイクル法施行令、第一条第四号に掲げる電気洗濯機及び衣類乾燥機を除く。)

二十 電気こたつ、電気ストーブその他の保温用電気機械器具

二十一 ヘアドライヤー、電気かみそりその他の理容用電気機械器具

二十二 電気マッサージ器

二十三 ランニングマシンその他の運動用電気機械器具

二十四 電気芝刈機その他の園芸用電気機械器具

二十五 蛍光灯器具その他の電気照明器具

二十六 電子時計及び電気時計

二十七 電子楽器及び電気楽器

二十八 ゲーム機その他の電子玩具及び電動式玩具

 ※廃棄物の処理及び清掃に関する法律、第二条第一項に規定する廃棄物(ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。))をいう。


法と省令での対象金属資源

 リサイクルの対象となる金属資源について法や省令の記述を見てみます。


 小型家電リサイクル法の第十条、第一項では、使用済み小型家電の再資源化事業を行なおうとする者は、再資源化事業計画を作成し、主務大臣の認定を申請することができるとしています。


 認定のための適合条件の一つとして、同、第三項、第一号では、再資源化事業の内容が、基本方針に照らし適切なものであり、かつ、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保に資するものとして主務省令で定める基準に適合するものであることとしています。


 ここで、主務省令で定める基準とありますが、その基準の一つとして、小型家電リサイクル法施行規則の第四条では、破砕、選別その他の方法により、使用済小型電子機器等に含まれる鉄、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム及びプラスチックを高度に分別して回収し、回収物に含まれる次に掲げる資源の再資源化等を自ら行うか、又は当該再資源化等を業として行うことができる者に当該回収物を引き渡すこと、として、次の資源を挙げています。


【ベースメタル】 鉄/アルミニウム/銅/鉛/亜鉛


【貴金属】 金/銀/白金/パラジウム


【レアメタル】 セレン/テルル/ビスマス/アンチモン


【その他】 カドミウム/水銀/プラスチック


※【 】内の金属等種別は、本トピックスPart1での分類であり、施行規則内の記述ではありません。


<Part2.の記述の再掲>
 現状では使用済み小型電気電子機器のリサイクルが経済的に回らない状況であっても、将来を見越しつつ、リサイクルが経済的にも成り立っていけるような制度的な仕組みをまず用意し、「できる金属から」、「できる地域から」始めていこう、とするものです。特にレアメタルはリサイクルの経済的・技術的に難易度が高いので初めから無理に取り組む必要はなく、本制度に沿ってリサイクル技術も育てつつ成功事例を増やしながら、金属種類と地域を広げていく考えです。


 それでは、各主体はこれまでどのような取組みをしてきたのか、について主体ごとに見ていきます。



国の取り組み

 関連する法令や主務官庁の環境省、経済産業省のこれまでの取り組み等について紹介します。


使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)


もっと見る「法律」

[法制定の背景]
 資源制約、環境制約より、使用済み小型電子機器等に含まれるアルミ、貴金属、レアメタルなどが、リサイクルされずに埋め立てられていることへの対応が急務である。
   ※資源制約:①新興国の需要増大に伴う資源価格高騰、②資源供給の偏在性と寡占性
   ※環境制約:①最終処分場のひっ迫、②適正な環境管理


[法制定の目的]
 使用済小型電子機器等の再資源化を促進するための措置を講ずることにより、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図る。(第一条)


[法案の内容]

基本方針(第三条)  (pdf)

 - 環境大臣及び経済産業大臣が、使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する基本方針を策定、公表

 * 再資源化の促進の基本的方向

 * 再資源化を実施すべき量に関する目標

 * 促進のための措置に関する事項

 * 個人情報の保護その他の配慮すべき重要事項 等

再資源化を促進するための措置

 - 再資源化のための事業を行おうとする者は、再資源化事業の実施に関する計画(「再資源化事業計画」)を作成し、環境大臣及び経済産業大臣の認定を受けることができる。(第十条)

 - 再資源化事業計画の認定を受けた者又はその委託を受けた者が使用済小型電子機器等の再資源化に必要な行為を行うときは、市町村長等による廃棄物処理業の許可を不要とする。(第十三条)

 - 再資源化事業計画の認定を受けた者又はその委託を受けた者については、産業廃棄物処理事業振興財団が行う債務保証等の対象とする。(第十四条)

環境省、経済産業省の取り組み

環境省
経済産業省
環境省・経済産業省共通
法施行前後の予定

再生した銀

平成25年2月:
 - 基本方針等の公布
 - 関係するガイドラインの公表
平成25年2~3月:
 - 市町村を対象とした、説明会及び認定事業者候補とのマッチングの実施
平成25年4月1日:
 - 小型家電リサイクル法 全面施行
 - 再資源化事業計画の申請受付
認定を受けた認定事業者は市町村と順次契約を開始
(なお、認定を受けようとする事業者等からの問合わせ・相談には、随時対応)


自治体の取り組み

都道府県や市区町村のこれまでの取り組みを紹介します。


自治体先進事例

九都県市小型家電リサイクルキャンペーン

環境省認定「小型電子機器等リサイクルシステム構築協力地域」

 協力地域として認定された自治体のうちからいくつかをご紹介します。 ※協力全地域については こちら 

県提案の回収モデル事業

(既に終了)平成21年度 使用済小型家電からのレアメタルリサイクルモデル事業におけるモデル地域

モデル地域のうちからいくつかをご紹介します。 ※モデル地域については こちら 


学術研究機関の取り組み

様々な学術研究機関の取り組みを紹介します。


(独)国立環境研究所(NIES)

※Part4.内にて別途「研究事例」を紹介しています。


(独)産業技術総合研究所(AIST)

(独)物質・材料研究機構(NIMS)

(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)

  • 希少金属等高効率回収システム技術開発事業(平成19~22年度)
            廃小型家電製品からのレアメタルリサイクル技術に関する基礎研究
  • 使用済電子・電気機器からのレアメタルリサイクルシステム構築調査(平成20~22年度)
            試験的に収集された廃小型家電のレアメタル含有状況等の調査
  • 希土類金属回収技術研究開発事業(平成21~24年度)
            レアアースを含有する使用済み製品からのレアアース回収技術の開発実証

(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

廃棄物資源循環学会


企業の取り組み



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 Part4では小型電気電子機器からのレアメタルリサイクルの課題について紹介します。また国立環境研究所(NIES)の関連研究成果についても紹介しています。



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該当なし

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