産業と環境対策

 産業活動における環境対策として、かつては工場から排出される汚染物質を削減するなど、ものづくりの最終段階での対策が主流であった。しかし今日では、ものをつくる段階だけでなく、原料の採取から製品の廃棄、再利用にいたるまでの全ての過程(ライフサイクル)を視野に入れて、環境負荷を削減することが重要になっている。
 わが国は、省エネルギーをはじめとする環境技術で、世界のトップレベルにあるといわれている。今後、地球規模で持続可能な社会を実現していくためには、わが国が培ってきた環境技術をさらに進歩させ、国内のみならず、国際的にも貢献していくことが期待されている。

省エネによるCO2排出削減 ~世界トップの日本の省エネ技術~

 日本が得意とするものづくり産業の礎である鉄鋼業は、2006年度のCO2排出量が約2億トンと日本の総排出量の6分の1近くを占め、典型的な「エネルギー多消費型」産業である。その製造工程は、焼結、コークス炉、高炉、製鋼、圧延、加工などの多くのプロセスからなり、各工程でのエネルギー効率向上、CO2排出削減の取り組みが不可欠である。
 例えば、国内有数の鉄鋼メーカーでは、コークス炉や転炉といった工程で発生する副生ガスをエネルギー源として100%有効活用しているほか、排熱回収による発電を行うことで省エネルギーを推進するとともに、CO2分離・回収技術や水素還元製鉄などの技術開発にも取り組んでいる。こうした設備導入を業界全体として進めるなどといった取り組みの成果により、日本の鉄鋼業のエネルギー原単位は世界でもトップクラスにある。また、これら技術の海外移転によって、地球全体の人為的なCO2排出の削減に大きく貢献できると期待されている。

新日鐵の省エネ・CO2削減の取り組み

新日鐵の省エネ・CO2削減の取り組み
http://www.nsc.co.jp/eco/warming/index.html


鉄鋼業のエネルギー原単位の国際比較

鉄鋼業のエネルギー原単位の国際比較
出典:社団法人日本鉄鋼連盟の資料より作成
http://www.jisf.or.jp/business/ondanka/iea/docs/ieareportj.pdf

産業廃棄物の削減(ゼロエミッション) ~埋め立て廃棄物ゼロを目指す取り組み~

 産業界では、環境管理の国際規格ISO14001の普及や、埋め立て処分費用の上昇などもあり、生産活動から出る廃棄物のうち最終埋め立て処分量をゼロにする「ゼロエミッション」化に取り組む企業が増えてきている。
 例えば、自動車・発動機メーカーのマツダでは、副生物・廃棄物の発生量の削減と分別の強化およびそのリサイクルの推進を通じて産業廃棄物の削減に取り組み、2008年度に全埋立廃棄物量の完全ゼロを達成した。
 国連大学により提唱された「ゼロエミッション」とは、単に廃棄物を削減するという発想だけでなく、産業から排出される全ての廃棄物や副産物が他の産業の資源として活用されるように材料や生産工程から見直しを図ることで、自然の生態系のように全体として廃棄物を一切出さない資源循環型のシステムを構築しようという考え方である。このような取り組みは、個別の企業での活動に加えて、複数の企業やコミュニティ、地域レベルでも進んできている。

マツダの廃棄物削減の取り組み

マツダの廃棄物削減の取り組み
全埋立廃棄物量の推移(左)と、2008年度の生産領域における副生物・廃棄物のリサイクル(右)
http://www.mazda.co.jp/csr/environment/production/reducing_waste.html

資源としての水の保全 ~節水から森づくりまで~

 食品産業や製紙業など、水を多く使用する産業にとって、用水の安全確保と安定供給は、エネルギー供給と並んで生産を維持する生命線である。そうした視点で、水資源の保全を最重視する企業は少なくない。
 例えば、飲料メーカーで「水と生きる企業」を掲げるサントリーでは、水の循環利用や雨水利用などに加えて、工程洗浄水の中で汚れが少ない水を設備の冷却水に用いたり廃棄物関連施設の洗浄水に使ったりと水の多段階利用を徹底している。これによって、水使用量の原単位の削減を実現している。
 水質についても、工場からの排水をできる限り自然に近い状態で還すために、嫌気性排水処理システムなどで浄化処理した後、法律よりも厳しい自主基準を設定して24時間体制の監視のもとで、下水道や河川へと放流している。
 また、原料である地下水源の涵養を目的に、工場の水源地にあたる場所を中心に、全国8府県9カ所の森林の保全活動も展開し、地球温暖化対策や生態系の保全にもつなげるなど、幅広い取り組みを進めている。

※水使用量の原単位
 水やエネルギーの使用量は、通常、生産量に比例して、生産が増えれば使用量も増え、生産が減れば減る。単純な使用量の削減だけでは、削減の取り組みの評価は難しいため、使用量を生産量などで割った原単位として管理する。