アマゾン川から流入する栄養分が大陸棚を越えて広がり、熱帯海洋の炭素循環に役立っているという研究成果が、南カリフォルニア大学のカポーネ氏らの研究チームにより「米国科学アカデミー紀要」に掲載された。これまで熱帯大西洋は、海洋生物の呼吸によりトータルでは炭素排出源だと考えられていたが、この研究により、アマゾン川から流入する水の中の植物プランクトン(その多くはジアゾ栄養生物)が、大気中のCO2を大量に吸収し、呼吸分を相殺していることが分かった。ジアゾ栄養生物は大気中の炭素や窒素を取り込んで有機固形物を作り出しているが、窒素を固定化することで栄養分の少ない水の中でも生存できる。ジアゾ栄養生物に必要なリンや鉄も、アマゾン川が沖合に運んでいる。ただし、これらの微生物は土地利用の変化や気候変動の影響を受けやすく、ダム建設や農業慣行の変化で炭素削減量も変わるという。熱帯地方の他の大河川も炭素吸収に貢献していると考えられ、現在、調査が進められている。