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 紅色光合成細菌を活かしたゼロカーボン農業の姿を提示 京大・理研など

発表日:2022.05.26


  京都大学大学院工学研究科の沼田教授(理化学研究所チームリーダーを兼任)が率いるプロジェクトチームは、同大学学大学院農学研究科附属農場および京大発バイオマテリアルベンチャー・Symbiobe(株)と協同で、ゼロカーボン窒素肥料の作出に成功した。同プロジェクトチームは、JSTの「共創の場形成支援プログラム(地域共創分野・育成型)」の支援のもと、「ゼロカーボン農業」の普及による地域活性化等を柱とする産学官連携事業に取り組んでいる。京都府全域では、京野菜や宇治抹茶(主産地:木津川市等)をはじめとする特産物の生産が盛んに行われている。他方、化学肥料の多投入による弊害が指摘されて久しく、有機農業やオーガニック肥料(有機質肥料)に立脚した環境保全型農業の確立が求められている。同プロジェクトチームは、NEDOの助成事業も活用し、従来の製法(ハーバー・ボッシュ法)に代わる窒素肥料の生産プロセスを具現化した。大気中の窒素を水素と直接反応させるのではなく、「海洋性紅色光合成細菌」が光合成すると同時に、大気中の「窒素」を酵素(ニトロゲナーゼ)によって固定し、海水中の「ミネラル成分」も利用していることに着眼した斬新かつ画期的なプロセスとなっている。開発は、「海洋性紅色光合成細菌」を効率良く培養する方法の確立(ラボレベル)、精製技術(複数回の洗浄と集菌、精製した細胞の破砕、凍結乾燥)の検証といったステップで行われた。一連の処理を行った結果、土壌散布可能な「粉末状」に加工することが可能となり、植物の生育にとって十分な量の窒素成分(10%以上)を含有していることが明らかになった。さらに小松菜を用いた栽培試験を行ったところ、化成配合肥料と遜色のない肥料効果を発揮し、緩効性肥料のように効くといった特徴が示唆された。サステナブルかつオーガニックな肥料の新たな選択肢として、次世代農業の普及・発展に貢献し、砂漠化地帯の緑化や乾燥農業の促進にも貢献することが期待されるという。

情報源 京都大学工学部・大学院工学研究科 お知らせ・イベント(研究成果)
理化学研究所 お知らせ
ゼロカーボンバイオ産業創出による資源循環共創拠点 プレスリリース
機関 京都大学工学部・大学院工学研究科 理化学研究所 Symbiobe(株)
分野 環境総合
キーワード 京都府 | サステナブル | 有機農業 | ハーバー・ボッシュ法 | 共創の場形成支援プログラム | オーガニック | 海洋性紅色光合成細菌 | ゼロカーボン窒素肥料 | ゼロカーボン農業 | 木津川市
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