大学研究室紹介

「環境経済学」(細田衛士教授)

慶應義塾大学経済学部細田研究室

研究内容

  • テーマ:
  • 環境経済学
  • 概要:
  • (1)資源循環の理論分析:廃棄物やリサイクルを経済理論モデルを用いて分析し、定性的な結果を導き出します。さらに、経済で循環するモノがグッズ(有価物)にもバッズ(逆有償物)にもなることに注目して、静脈経済・市場(使用済み製品・部品・素材および残渣などを取引する経済や市場)の機能や成果を分析しています。
    (2)資源循環の制度分析:静脈経済の場合、動脈経済とは異なり、市場がうまく機能しません。情報の非対称性という問題があるからです。この問題を解消して、円滑な資源循環を促進するためにはどのような制度あるいはシステムが必要なのかを、制度論的な観点から分析しています。
    (3)素材の経済分析:従来、経済論では、「素材」という特徴づけを行うことなく経済分析を行ってきました。しかし、資源循環を分析する場合、製品と素材を切り分けて考える必要が出てきます。そこで、素材を経済学的に特徴づけ、円滑な資源循環のための生産物連鎖制御のあり方を検討しています。
  • キーワード:
  • グッズ, バッズ, 動脈経済, 静脈経済, 潜在資源性, 潜在汚染性
  • 学部体系:
  • 人文社会科学系(経済学系)
  • 研究分野:
  • ごみ・リサイクル(3R関連, 廃棄物処理関連)

    酒田港における港湾設備を用いたリサイクル物流の調査の様子。

    ある種の産業廃棄物は、日本国内で東から西に送られる。これを西送り現象という。この事実を解析的に確認した。

    研究室概要

  • 大学・研究室名:
  • 慶應義塾大学経済学部細田研究室
  • 研究室の特色・PR:
  • 本研究室の特徴は、経済理論、実証分析、制度分析をバランスさせて環境問題を分析することにあります。私の専門は、資源循環の経済分析ですが、ゼミの学生は、環境問題である限り何をテーマとしても構いません。ただ、バランスを考えつつ研究を遂行することが求められます。したがって、経済理論や計量経済学の基礎を学習することを求められるのと同様、実際のフィールドに出て事実の集積や法制度の問題点を自らつかみとり、その意味で「足で稼ぐ」ことも求められます。もう一つの特徴は、個人研究とともに、グループ研究を行い、プレゼンテーションを行うことも重要な作業となります。ここで、研究をする際にいかにチームワークが必要となるかがわかります。一人でできないことも協力して行えば、一定の成果が出ることが体得されます。
  • 先生のプロフィール:
  • 氏名:
    細田衛士
    出身大学:
    慶應義塾大学経済学部
    出身大学院:
    慶應義塾大学経済学研究科博士課程
    卒業研究のテーマと概要:
    学部:マックス・ウエーバー研究、一般均衡理論の基礎
    大学院:スラッファ型線形体系の経済分析
    職歴など:
    1980年慶應義塾大学経済学部助手
    1987年同助教授
    1994年同教授
  • 所属学生の人数:
  • 21人~
  • 研究室連絡先:
  • 東京都港区三田2-15-45
    (内線23211)

    研究室メンバーからのメッセージ

    大学での研究というと、黙々と専門書を読むというイメージがあるかもしれませんが、細田研究室では、指導教授である細田先生の研究スタイルを反映して、専門的な資料を読んで得られる知識と同様に、自分で実際に体験したことを通じて得られる知識をとても大切にしています。そのため、学問的な理論の研究以外にも、研究室の外に出て汚染の現場を調査したり、環境問題に実際に取り組んでいる現場の人へのヒアリングを行ったりといった実践的な活動を研究の中で多く行っています。理論と実践の両方を重視するのが細田研究室の特徴です。研究室の学生は、それぞれ自分が興味を持ったテーマの研究に取り組んでいて、その内容もゴミのリサイクル制度についての研究から環境保全型農業の推進策についての研究までと多岐にわたっています。研究の成果や専門書で学んだ知識は、研究室の全員が参加するゼミでの報告を通して研究室内で共有されるので、個人の研究であっても研究室のみんながコメントなどを通して協力してくれます。また、学部よりも一歩踏み込んだ大学院での研究では、常に環境経済学の最新の研究動向を意識しつつ研究を進めています。先生と一日かけて研究テーマについて議論することもしばしばで、環境経済学研究の最先端に触れているという実感とともに研究への意欲をかきたてられる毎日です。(博士課程2年:一ノ瀬大輔)

    先生からのメッセージ

    高校時代には、なんでも興味を持って、何でも勉強してほしい。無駄になる勉強などどこにもない。学んだことは、すべて人間の脳のなかに集積され、知力を高める。また、苦手意識を持たずに数学を学習してほしい。難しいことをやる必要はなく、教科書程度のことを確実にマスターすればよい。私自身も数学は苦手であったが、とにかく無理やり高校時代に勉強しておいたことが相当に役立った。
    それともう一つ。本を読むこと。自分の興味に従って、どんどん読んでほしい。サイエンスであろうが小説であろうがまたノンフィクションであろうが、徹底的に本を読むことである。本当の所を言うと、バランスよく読んで欲しいのだが、まずは何でもよいからトライして読みこなすことである。
    推薦図書
    ・ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』草思社
    ・武内和彦『地球持続学のすすめ』岩波ジュニア新書
    ・中尾佐助『栽培植物と農耕の起源』岩波新書
    ・中西準子『水の環境戦略』岩波新書

    (2009年1月現在)