屋上緑化・壁面緑化

ヒートアイランド対策や都市空間の美化演出などを目的として、建造物の屋上緑化・壁面緑化を推進する動きが続いています。政府は2007年5月に、「2012年までの6年間で建築面積1,000m2以上の国の庁舎に建物緑化を集中的に進める」という方針を発表しました。この方針を受けて、地方自治体も条例や助成制度の整備を行った結果、2000年から2014年までの15年間で少なくとも約413.8haの屋上と、約68.0haの壁面が緑化され(国土交通省調べ)、その取り組みは続いています。ここでは、屋上・壁面緑化の適正な推進に役立つ情報として、その現状や、効果と課題、参考にすべき優良事例などを紹介します。

※掲載内容は2016年3月時点の情報に基づいております。
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1. 屋上緑化・壁面緑化の現状

国土交通省の調査によれば、日本国内では2000年から2014年までの15年間に、少なくとも約413.8haの屋上緑化空間と、約68.0haの壁面緑化空間が生まれました。その内訳について紹介します。

1.1 施工面積の推移

2014(平成26)年度に施工された面積は、屋上緑化空間で約26.9ha(サッカーコート1面あたり0.71haとして、約38面分)、壁面緑化空間で約5.0ha(同、約7面分)となっています。

年度ごとの施工面積では、リーマン・ショックのあった2008(平成20)年度までは拡大基調にあったものの、翌2009(平成21)年度には約2割も縮小しました。

その理由は、屋上緑化が施工される建物の約8割は新築物件であり、1件当たりの施工面積は200m2前後で横ばいのため、トータルの施工面積は着工数そのものに大きく影響されるからです。その後、施工面積は2012(平成24)年度を底として、徐々に上向きに転じています。また、壁面緑化の施工面積は2011(平成23)年度以降、縮小傾向にあります。

図1 屋上緑化・壁面緑化の施工面積の推移
出典:国土交通省「平成26年全国屋上・壁面緑化施工実績等調査結果」(p.2)
http://www.mlit.go.jp/common/001104759.pdf

1.2 植栽タイプ別の施工面積推移

屋上緑化を植栽タイプで分類すると、樹木、草木、セダム(乾燥や温度変化に強い、ベンケイソウ科の多肉植物)、コケなどが主体となるもの、またはそれらを複合したものに分けることができます。壁面緑化の場合は、ツル性植物主体の施工比率が8割近くを占めています。

図2 屋上緑化の植栽タイプ別の施工面積割合と推移
出典:国土交通省「平成26年全国屋上・壁面緑化施工実績等調査結果」(p.6)
http://www.mlit.go.jp/common/001104759.pdf

1.3 条例や助成制度による促進策

屋上緑化・壁面緑化の推進のため、多くの地方自治体で、条例や助成制度が設けられています。たとえば、東京都では「東京における自然の保護と回復に関する条例」により、敷地面積1,000m2以上の民間施設または250m2以上の公共施設の新築や増改築の際に、「緑化計画書」の届出が義務付けられています。この条例において、一定比率以上の地上緑化、接道部(敷地のうち道路に接する部分)の緑化とともに、「建築物上の緑化」、つまり屋上緑化・壁面緑化を求め、次のようなガイドラインを示しています。

緑化に当たっては、地上での緑化に加え、建物の屋上、壁面及びベランダ等の緑化に努め、緑化面積を可能な限り大きくしてください。また、次の点について配慮した緑化を行うようにしてください。

① 緑化は樹木を中心とし、屋上、ベランダ等で樹木による植栽が困難な場合は、芝、多年草等による緑地面積の確保に努めてください。
② 既存の樹木は可能な限り生かし、実のなる木や草花、水辺の配置、昆虫や鳥などの生物多様性への配慮など多彩な緑化を行ってください。
③ 緑化の際は、東京都環境局作成の「植栽時における在来種選定ガイドライン(東京都環境局)」を基本として樹種を選定してください。また、環境省選定の「侵略的外来種リスト(仮称)」掲載種は使用しないでください。
(以下略)

出典:東京都環境局「緑化計画の手引」(平成27年度4月1日版)
https://www.kankyo.metro.tokyo.jp/nature/green/attachement/27midori_tebiki.pdf

設計者・施工者に一定比率以上の屋上緑化を義務として課す一方で、無利子融資や補助金などの助成制度をつくって緑化を促す施策も、都道府県や政令指定都市、特別区などの地方自治体で実施されています。

2. 屋上緑化・壁面緑化の効果と課題

ここでは、屋上緑化・壁面緑化の効果と、設計・施工や維持管理にあたって配慮すべき事項について触れます。

2.1 屋上緑化・壁面緑化の効果

近年、屋根から室内への伝導熱を抑える「クールルーフ技術」に関心が集まっています。ヒートアイランド(別項で詳説)の緩和や空調負荷低減による省エネルギー効果、夏季の熱中症対策など多くの効果が見込めるためです。

[環境技術解説] ヒートアイランド対策技術
都市部の気温が郊外よりも高くなるヒートアイランド現象により、さまざまな弊害やリスクが生まれています。ここでは、人工排熱の低減や地表面被覆の改善、都市形態の改善をはじめとするヒートアイランド対策技術を紹介します。

クールルーフの具体的な対策は、植物を植える「緑化」のほか、水の潜熱を利用する「蒸発利用」、日照反射率を上げ入熱を抑える「高反射化」の3つに分類されます。なかでも屋上緑化・壁面緑化は、一定程度の太陽光を反射し、伝導熱をさえぎる効果があり、また、蒸発・蒸散により周囲の温度を下げる効果があるため、想定されるすべての効果が期待できるものと位置づけられています。

屋上緑化・壁面緑化には、省エネルギーなど定量化しやすい効果のほか、生態系保全、雨水の貯留・流出防止、騒音低減、延焼防止、都市景観形成、地域コミュニティ形成支援など、定量化は難しいながらも重要な各種の効果が期待されています。

表1 屋上緑化・壁面緑化の効果(「緑化」「高反射化」「蒸発利用」の比較)
◎:大きな効果が期待される、◯:効果が期待される、△:逆効果となる場合がある、‐:関係なし。
対象 対策 ヒートアイランド緩和効果 省エネルギー効果 その他の特徴 配慮事項
昼間 夜間 夏季 冬季
屋根・屋上 高反射化 室内温熱環境の改善、外気温度の非上昇 性能の経年劣化に注意が必要、周辺に対する反射日射に配慮が必要、暖房負荷が増える可能性が高い
緑化 景観、集客、生態系の保全、環境教育、不動産価値の向上 適切な維持管理が必要
蒸発利用
(保水、散水)
雨水浸透 散水時の水むら・水みちの対策や保水性能の維持が必要、冬季の凍結融解による劣化に注意が必要
壁面 緑化 景観・生態系の保全 適切な維持管理が必要
蒸発利用
(保水、散水)
景観、雨水浸透 散水時の水むら・水みちの対策や保水性能の維持が必要
出典:『クールルーフガイドブック』(日本建築学会編、地人書館)
「都市被覆に関するヒートアイランド緩和効果の整理」を参考に作成

2.2 屋上緑化・壁面緑化の課題

屋上緑化・壁面緑化の導入には、建築と造園の両分野にまたがる知識や技術が必要とされるため、設計・施工・維持管理のそれぞれの局面で留意点や課題が存在します。

まず、設計段階では、積載荷重に関する検討が必要となります。屋上に敷く土壌の厚みを増すことで、背の高い樹木を導入してより高い効果が期待できますが、その分、建物に加わる荷重も増し耐震性にも影響が出ます。建築計画の最初の段階から、緑化にともなう荷重を固定荷重として組み込んでおくことが重要です。

また、屋上緑化は、建物の防水層に植栽土壌が接する形となります。成長する植物の根が防水層を突き破ってしまうことのないよう、防根層を設ける必要があり、コストも膨らみます。あるいは風による土壌の飛散を防止する措置が必要となる場合もあります。

さらに屋上緑化には、継続的な灌水が欠かせません。灌水により、植物の成長を促すだけでなく、蒸発・発散による効果を高めることもできます。しかし、たとえば芝生の場合で、1日1m2当たり5L(リットル)の灌水が必要だと言われています。屋上緑化の導入コストとは、初期の建設費用にこれらの維持費用が加わったものであることに留意しておかなくてはなりません。

3. 優良事例の紹介

ここでは、屋上緑化・壁面緑化における特徴的な優良事例を紹介します。

3.1 なんばパークス(大阪市浪速区)

大阪ミナミのターミナル拠点、南海電鉄難波駅に隣接する「なんばパークス」は、旧大阪球場跡地を利用した土地活用事業として2003年に竣工(周辺施設も含め2007年に全館オープン)した複合商業施設です。

ここでは屋上緑化・壁面緑化を徹底的に行い、2階から8階まで続く段丘上の屋上庭園を含む1万1,500m2の庭園に、高木を含め約300種、約7万株の植物が植えられた約5,300m2の緑地を整備し、一部のスペースは貸し農園として市民に提供する試みも行われました。事業的な成果を狙い戦略的に屋上緑化が組み込まれた先進的な事例として高い評価を受けており、現在も鳥類や昆虫類などの生物調査、ヒートアイランド緩和効果の調査、樹木のCO2吸収量の調査などが継続して行われています。

図3 段丘上の屋上庭園
出典:大林組 実績の紹介:なんばパークス
http://www.obayashi.co.jp/works/work_207

3.2 ゴーヤーカーテン(緑のカーテン)

緑のカーテンは、アサガオやゴーヤー(ニガウリ、ツルレイシ)などのツル性植物を窓側の壁面などに成長させる省エネルギー手法です。生きた植物を使うため、日射をさえぎるだけでなく、葉からの蒸散により周囲の温度を下げることでより、高い省エネルギー効果が得られます。中部電力が1985年に行った比較実験では、よしず(乾燥させた葦の茎を編んだ、窓際に立てかけて使う日よけ)に比べ、20%~30%もの省エネ効果があることが実証されました。

なかでも、夏バテ防止の食べ物として知られるゴーヤーは、他の植物に比べて病虫害や乾燥に強く(手間が少ない)、生育期間が約3か月と短かく(遅く植えても夏に間に合う)、葉がよく茂り(日除け効果が高い)、一年生植物である(日射が欲しくなる秋頃には枯れる)など、緑のカーテンを形成するうえで理想的な野菜です。

図4 緑のカーテンの効果園
出典:中部電力 緑のカーテン(つる性植物による夏の省エネ活動)
http://www.chuden.co.jp/midori/energy-saving/index.html

図5 代表的な野菜「ゴーヤー」
出典:サカタのタネ 緑のカーテン
http://www.sakataseed.co.jp/special/themes/midori@special/pdf/hikakuhyo.pdf

コラム◆CGERグリーンカーテンプロジェクト

国立環境研究所においても、「CGER(地球環境研究センター)グリーンカーテンプロジェクト」として、所内の地球温暖化研究棟においてグリーンカーテン作りに取り組んでいます。このプロジェクトは、2011年の東日本大震災を受けて当研究所が策定した節電アクションプランを先取りして始めたもので、毎年7月後半に開催される「研究所の一般公開」の際には、立派なカーテンになっている様子がご覧いただけます。

コラム◆銀座ミツバチプロジェクト(東京都中央区)

銀座ミツバチプロジェクトは、2006年に有志の手でスタートした都市養蜂の取り組みです。日本有数の繁華街である銀座にはまとまった緑地はありませんが、点在する屋上庭園や街路樹、少し離れた場所に皇居や浜離宮などがあり、季節ごとに移り変わる樹木からミツバチが蜜を集めます。

初年度の収量は約150kgでしたが、2013年には1tを超えるまでになり、銀座ブランドを冠したカステラ、マドレーヌなど洋菓子をはじめ、ミツバチの足についた花粉から採取された酵母による、銀座ブランドのビールも生まれています。

2007年に中央区の屋上緑化助成制度を利用してつくられた100m2の屋上庭園「銀座ビーガーデン」は、この銀座ミツバチプロジェクトによる環境意識の高まりから派生したもので、ミツバチのために「花を植えよう」「食べられる植物を育てよう」という活動を行っています。これが共感を呼び、2011年までに8か所、延べ1,000m2以上の「ビーガーデン」が周辺のビルに整備されました。都市養蜂の取り組みが、都市緑化・屋上緑化のモチベーションとなっている事例です。

引用・参考資料など

[1] 国土交通省. 平成26年全国屋上・壁面緑化施工実績等調査結果. http://www.mlit.go.jp/common/001104759.pdf, (参照 2016-03-15).

[2] 公益財団法人 都市緑化機構. https://urbangreen.or.jp/, (参照 2016-03-15).

[3] NPO法人 屋上開発研究会. http://www.sky-front.or.jp/, (参照 2016-03-15).

[4] 中部電力. 緑のカーテン(つる性植物による夏の省エネ活動). http://www.chuden.co.jp/midori/index.html, (参照 2016-03-15).

[5] サカタのタネ. 緑のカーテン. http://www.sakataseed.co.jp/special/midori/, (参照 2016-03-15).

[6] 大林組. http://www.obayashi.co.jp/, (参照 2016-03-15).

[7] 日刊工業新聞「環境賞」. http://biz.nikkan.co.jp/sanken/kankyo/, (参照 2016-03-15).

[8] NPO法人 銀座ミツバチプロジェクト. http://www.gin-pachi.jp/, (参照 2016-03-15).

[9] 松屋銀座. 銀座ミツバチプロジェクト. 銀座まちがたり. http://www.matsuya.com/m_ginza/about/ginza/details/110608_01.html,(参照 2016-03-15).

[10] 日本建築学会編. クールルーフガイドブック, 地人書館, 2014, p135.

(2016年3月現在)
2007年7月:掲載
2016年5月30日:改訂版に更新