合併処理浄化槽

 合併処理浄化槽とは、主として住宅から排出されるし尿と、台所・洗濯所・洗面所・風呂場などからの生活排水を、各戸毎に処理し、排水基準以下まで浄化してから放流する設備である。その構造は、例えば、(1)汚水中の浮遊物・固形物を沈殿させるとともに、嫌気性微生物により有機物の一部を分解する「嫌気槽」、(2)送風器で空気を送り込み、接触材に付着した好気性微生物により大部分の有機物を分解する「好気槽」、(3)処理水中に含まれる汚泥と上澄み液を分離する「処理水槽」などからなる(下図参照)。
 本体はFRP(ガラス繊維強化プラスチック)などを使用して、工場で一体的に製造され、各戸の庭先などに埋設される。また、浄化した放流水は側溝や河川などに放流される。その性能は、BOD除去率90%、処理水質BOD20mg/l以下で(窒素、リン除去に対応した高度処理型もある)、下水道と同等の性能を有しており、水環境保全上重要な施設であることから、設置に対する国、都道府県、市町村による助成制度がある。

浄化槽の概略図(通常、浄化槽は地中に埋められ、マンホールのみが見えている)

浄化槽の概略図
(通常、浄化槽は地中に埋められ、マンホールのみが見えている)
出典:国立環境研究所ニュース第26巻第2号
http://www.nies.go.jp/kanko/news/26/26-2/26-2-04.html

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1.合併処理浄化槽の経緯と特長

 家庭の台所、洗濯所、風呂場、洗面所等から排出される生活排水は、1人1日あたり約250リットルであり、汚濁物質として約27gのBOD負荷量を有していることから、これが処理されずに放流されている河川や湖沼では、生活排水が水質汚濁の大きな原因の一つとなっている。
 生活排水を処理し、浄化する施設としては、公共下水道など様々なシステムがある。ここで紹介する、各戸別に設置される合併処理浄化槽は、日本独自の技術として、排水負荷(量・質)の時間変動への対応能力が高い「生物膜法」を浄化槽に適用し、昭和50年代に技術が確立したもので、その後、改良が加えられることにより、他の処理施設と遜色ない水準まで技術的な進歩を遂げてきたものである。
 合併処理浄化槽には、なにより公共下水道のように排水を収集するための排水管網を必要としないことを含めて、以下のような特長がある。

(1) 合併処理浄化槽は、生活排水を少量ごとにその場で処理し、排出することから、排出後の水路等においても大きな水量の変化を与えない。
(2) 排出後、小水路などを通り、河川等の流域に流れ込む間に、さらに植生等の自然環境を介して自然浄化作用を効率的に利用することから、二重の浄化作用を持つとともに、自然の水循環に近い状況を作り出すことができる。
(3) その場で処理することで、搬出を必要とする有機物質等の絶対量を減量化できる。
(4) 適切に処理した処理水は、散水、便所洗浄水、災害時の緊急用水等として利用可能である。また、処理後の汚泥も重金属等の含有量が少なく、再利用しやすい。
(5) 日常生活の身近なところで生活排水を処理しており、住民の環境意識を高めることができる。
(6) 排水管網を必要とする他の処理施設は、人口の少ない市町村で整備すると人口1人当たりの整備費用が高くなるが、合併処理浄化槽は、そうした影響をほとんど受けず、効率的な整備が可能である。
(7) 設置のためのスペースは、自動車1台分程度の広さ(の地下)であり、敷地の限られる大都市中心部を除けば、設置場所や地形・地質による影響を受けにくい。
(8) 個別分散型施設であるため、家屋の減少等の処理対象人口の減少などの変動に対応し、適正規模の整備が可能である。

 もともと浄化槽としては、トイレを水洗化するために、し尿のみを処理する浄化槽(いわゆる単独処理浄化槽)が多く普及していた。しかし、この場合、水環境への汚濁負荷の高い他の生活排水は未処理のまま放流され、また、浄化槽自体の性能も良くなかった(図1)。

図1 単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違い

図1 単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違い
出典:環境省「合併処理浄化槽パンフレット」
http://www.env.go.jp/recycle/jokaso/pamph/p4.html

 このため、国、都道府県、多くの市町村は、住民が合併処理浄化槽を新設する場合に、その設置費用の一部を助成する制度を創設し、普及を図ってきた。さらに、浄化槽法が改正、施行され、平成13年4月1日からは単独処理浄化槽の設置が原則禁止されている(このため、合併処理浄化槽を単に「浄化槽」と呼ぶようになりつつある)。

2.処理の仕組み

 合併処理浄化槽の処理は、微生物による生物処理が主であり、他の下水道などの排水処理と同様の原理である。具体的には、例えば図2のような構造の浄化槽において、以下のような手順で処理が進む。

図2 浄化槽の概略図

図2 浄化槽の概略図
(通常、浄化槽は地中に埋められ、マンホールのみが見えている)
http://www.nies.go.jp/kanko/news/26/26-2/26-2-04.html

1)嫌気槽

 嫌気槽では、通常、排水中の浮遊物・固形物を沈殿させ、分離するとともに、嫌気性微生物(酸素を嫌う微生物)により、一部の排水中の汚濁物質(有機質)を分解する。メーカーにより異なるが、様々な形状のろ材に微生物を付着させ、処理効果を高めている。

2)好気槽

 好気槽は、処理の主体である生物処理を行う装置である。外部に設置した送風器(ブロワ)から、槽の底部に細かい気泡状の空気を送り込み、接触材の表面に付着した好気性微生物(酸素を好む微生物)の膜により、排水中の大部分の汚濁物質(有機質)を分解する。

図3 有機質を分解する微生物の例

図3 有機質を分解する微生物の例
出典:環境省「合併処理浄化槽パンフレット」
http://www.env.go.jp/recycle/jokaso/pamph/p5.html

3)処理水槽(沈殿槽)

 処理水槽(沈殿槽)では、好気槽の処理水から増殖した微生物などからなる汚泥を沈殿・分離する。分離後の上澄み液は、合併処理浄化槽の性能に応じて浄化された水質となっている。その後、小規模な消毒槽で固形の消毒剤と接触させ、殺菌した上で放流する。
 なお、図2の緑色の「P」は、処理槽の底に貯まった汚泥の一部を嫌気槽に循環させるためのポンプである。これは有機質(BOD成分)だけでなく、湖沼等の富栄養化の原因となる窒素分も除去するための装置で、高度処理型合併処理浄化槽といわれるタイプである。

3.合併処理浄化槽の種類

 合併処理浄化槽には、その性能や処理方式より、様々なタイプがある。例えば、その放流水質について、標準的なBOD20mg/l以下とするものの他、10 mg/l以下、5 mg/l以下にするものがあり、また、窒素やリンを除去できるタイプもある。さらに、処理方式では、図2に示した「嫌気ろ床接触ばっ気方式」がもっとも普及しているが、この他、例えば図2の「好気槽」の接触材の替わりに「生物ろ過槽」を設置し、処理効率を上げて全体の容量をコンパクトにした「生物ろ過方式」などがある。
 浄化槽の規模は、処理対象人員を想定した「人槽」という単位で区分されており、最も小さい「5人槽」をはじめ、住宅の大きさ等にあわせて「7人槽」、「10人槽」などと大きさが決められる。

図4 合併処理浄化槽(嫌気性ろ床接触ばっ気方式)の外観

図4 合併処理浄化槽(嫌気性ろ床接触ばっ気方式)の外観
出典:環境省「浄化槽管理者への設置と維持管理に関する指導・助言マニュアル」
http://www.env.go.jp/recycle/jokaso/data/chpt3.pdf

4.合併処理浄化槽に関する制度

 合併処理浄化槽については、「浄化槽法」で製造・工事、維持管理のルールや適正な実施のための資格制度などが定められている。また、その性能、構造は、建築基準法に基づき定められる。浄化槽法上の「浄化槽」は、ここで言う「合併処理浄化槽」だけではなく、トイレからの排出されるし尿や、これと併せて生活排水を処理する施設をいう(公共下水道などを除く)。このため、前述の単独処理浄化槽(新設は認められていない)や、1万人以上を対象とした規模の大きなものもある。
 浄化槽がその性能を発揮するためには、適正な維持管理が重要であり、浄化槽法では、浄化槽の管理者(設置者)に、定期的な保守点検、清掃、法定検査の受検などを義務づけている。
 また、浄化槽の清掃後に搬出される汚泥(浄化槽汚泥)は、し尿処理施設(最近では「汚泥再生処理センター」という)で処理し、処理後の脱水汚泥は、堆肥などとしてリサイクル、または適正に処分されることになる。
 合併処理浄化槽は、河川や湖沼などの水質保全に寄与するという社会的便益を有することから、国及び地方公共団体による助成制度が設けられている。具体的には、合併処理浄化槽の設置にかかる費用の約4割を国と都道府県、市町村が助成し、その普及を促進している(助成制度の内容については、各市町村の環境部局又は清掃部局に問い合わせが必要)。

図5 助成措置の概要

図5 助成措置の概要
出典:環境省「浄化槽管理者への設置と維持管理に関する指導・助言マニュアル」
http://www.env.go.jp/recycle/jokaso/data/chpt3.pdf

5.今後の課題(主として技術的なもの)

1)小規模事業場への合併処理浄化槽技術の導入

 規模の小さな事業場には、水質汚濁防止法上のBOD成分などに関する規制は適用されない。水環境保全の観点から、そうした小規模事業場からの汚水も合併処理浄化槽で対応できるようにすることが必要である(従来、事業場系の排水を浄化槽に入れることは禁止されていた)。平成12年からパン・菓子製造業など一部の業種の排水については、合併処理浄化槽で処理してもかまわないとされているが、排出源の特性に柔軟に対応できる合併処理浄化槽を開発し、適用範囲の拡大等を図る必要がある。

2)IT技術の応用

 処理水の負荷をより少なくするとともに、より安定的な処理を行うため、IT技術を活用して自動監視・制御、遠隔監視・制御などを組み込むことにより、汚水の流入状況に合わせて、処理機能をきめ細かく調整できる合併処理浄化槽を実現する必要がある。

6.トピックス

1)膜処理法を利用した高度処理型合併処理浄化槽の開発促進

 いわゆる膜をろ過処理に応用し、高度処理を実現している合併処理浄化槽があるが、この場合、いかに膜分離装置(モジュール)を良好な状態に保つかが維持管理上の重要なポイントである。運転を長期間続けると、膜の細孔が徐々に閉塞する。このため定期的な洗浄を行う必要がある。
 その洗浄方法として、現場で薬液を注入して洗浄する方法と、系外に持ち出し、洗浄用水槽の中で薬品等で洗浄する方法がある。近年、従来の膜モジュールに比べて透過性が高く、高強度のものが開発されている(図6)。これにより、作業が容易な薬液注入による洗浄法のみで効果的な膜洗浄が可能になっている。

図6 新しい膜モジュール

図6 新しい膜モジュール
出典:(社)浄化槽システム協会「膜処理型合併浄化槽に使用している膜の維持管理について」(池野憲一)
http://www.jsa02.or.jp/01jyokaso/02_2_0807.html
(写真提供:(株)INAXアクア事業部)

2)リン除去・回収・資源化技術の開発

 水中に含まれるリンは、湖沼等において富栄養化を引き起こす栄養塩類であるが、一方で、産業活動等で利用されるリンは、その全てを輸入に頼っている状況である。このため、(独)国立環境研究所では福島大学などと協力し、浄化槽において排水中からリンを回収し、循環利用する技術の開発研究を行っている。具体的には、電気的に鉄を溶出させてリン酸鉄として沈殿・除去し、回収する方法や、リンを選択的に吸着する吸着剤を用いる方法などがある。

引用・参考資料など

(2009年6月現在)