環境技術解説

再生材利用土木資材

 再生材利用土木資材とは、建設廃棄物や産業副産物、溶融スラグ(一般廃棄物や産業廃棄物の熱処理後の残渣)及び下水汚泥などを原料として製造された土木資材であり、具材的には、骨材、路盤材、透水性ブロックなどがある。
 建設廃棄物(コンクリート塊、アスファルトコンクリート塊等)は、平成17年度時点で産業廃棄物全体の排出量の約20%程度を占めていることから、その再資源化推進は循環型社会を確立する上で非常に重要である。建設リサイクル法の制定を受けて再生材利用土木資材の利用が促進されており、コンクリート塊、アスファルトコンクリート塊はほぼ全量、廃木材は70%以上が再資源化されている。また、産業副産物(鉄鋼スラグ、非鉄スラグ、石炭灰等)は、金属製錬や発電等に伴い発生し、90%以上が再資源化されている。しかし、建設廃棄物や産業副産物は発生量が多いことから、一層の再資源化用途の拡大が求められている。土木資材としてのリサイクルは、こうした背景の中でさらに重要になってきている。
 さらに、一般廃棄物の焼却灰から作られる溶融スラグや産業廃棄物も土木資材の原料として利用できる。下図に示す溶融スラグは、焼却灰や下水汚泥などを約1300℃以上の高温に保った炉の中で溶融し、これを空気中や水中で冷却固化することで得られるもので、路盤材や透水性ブロックに用いられている。
 再生材利用土木資材は各種の原料から製造できることから、様々な研究開発が行われており、今後も新たな技術が実用化されるものと期待される。

一般廃棄物の焼却灰から作られた溶融スラグ
出典:国立環境研究所ニュース27巻4号「廃棄物の溶融スラグ化-将来とその課題は?-」
http://www.nies.go.jp/kanko/news/27/27-4/27-4-04.html

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1. 背景 ~建設廃棄物の現況~

 建設工事に伴い廃棄されるコンクリート塊や建設発生木材等の建設廃棄物は、平成17年度時点で7700万トン、最終処分量は600万トンとなっている(図1)。比率で見ると、これらの数字は、それぞれ産業廃棄物全体の排出量の約20%程度、産業廃棄物全体の最終処分量の約25%を占める。
建設廃棄物は不法投棄も多く、投棄量の合計は14.3万トン(建設混合廃棄物7.1万トン、がれき4.6万トン、建設系木くず1.5万トン等)と、不法投棄全体(17.2万トン)の83.3%を占めている。

図1 建設廃棄物の排出量と最終処分量
出典:国土交通省「平成17年度建設副産物実態調査」
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/011208_2/01.pdf

 国土交通省の予測によれば、建設廃棄物の発生量は、昭和40年代の建築物が更新時期を迎えるなどの要因により、今後も増加すると予測されている。このような背景から、平成12年5月に建設リサイクル法(「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」)が制定された。
 また、鉄鋼スラグ、非鉄スラグ、石炭灰等の産業副産物は、それぞれ約4000万トン、500万トン、1000万トンが毎年発生し、セメント原料や土木資材として再資源化されている。しかし、その量は膨大であり、セメントの需要増は大きくは見込めないことから、各業界で建設材料としての用途開発が積極的に行われている。
 さらに平成18年7月には、アスファルト合材や路盤などの道路用材、および、コンクリート用の骨材としての廃棄物溶融スラグの日本工業規格(JIS)が制定された。JIS規格が制定されたことにより、これらの廃棄物のリサイクルがさらに進むことが期待される。
このような背景から、建設廃棄物や産業副産物、焼却処理に伴い発生する溶融スラグ等を原材料とした土木資材へのニーズが高まっている。

2. 技術の概要

1)再生土木資材の製造技術

 再生土木資材の主な原料は、建設廃棄物、産業副産物、一般廃棄物(焼却灰、溶融スラグ等)、及び下水汚泥などであり、これらの原料と再生利用用途の対応は表1の通りである。表1に掲げた以外にも、例えば、ガラスびんから路盤材や軽量骨材を製造する方法などもある。
 以下、本稿では、特に建設廃棄物と一般廃棄物から再生土木資材を製造する技術について、利用用途別に紹介する。なお、建設廃棄物のリサイクル技術全般については、「建設リサイクル技術」の解説を参照されたい。

表1 再生土木資材の原料となる廃棄物と再生土木資材との関係
原料品目再生利用用途
建設廃棄物コンクリート塊再生骨材、路盤材等
アスファルトコンクリート塊路盤材、再生アスファルト
建設汚泥埋戻材、路盤材、透水性ブロック等
産業副産物鉄鋼スラグセメント原料、再生骨材、路盤材等
非鉄スラグセメント原料、再生骨材等
石炭灰セメント原料等
一般廃棄物焼却灰、溶融スラグ路盤材、透水性ブロック等
下水汚泥下水汚泥路盤材、透水性ブロック等

1)再生骨材

 骨材とは、セメントコンクリートやアスファルトコンクリートを作る際にセメントやアスファルトに混ぜる砂利や砂などのことである。骨材はその粒径によって、粗骨材と細骨材とに大別される。
 建築物を解体した際に発生するコンクリート塊は、細かく破砕され、セメント分を除去した後、再生骨材として利用される。下図は左側が砂利を粗骨材として、右側が砂を細骨材として利用する例である。具体的な製造方法は以下の通りである。

図2 再生骨材の例
左:再生骨材(砂利)、右:再生骨材(砂)
出典:清水建設(株)「コンクリート資源循環システム」
https://www.shimz.co.jp/solution/tech272/index.html

(1) 加熱すりもみ方式
 加熱すりもみ方式は、図3及び図4に示すように、セメントコンクリート廃材を300℃まで加熱することで、付着する硬化セメント部分を脆弱化させ、さらに骨材にすりもみ作用を与えることで、現骨材に付着する硬化したセメント分を剥離させ、再生骨材を精製する方式である。

図3 加熱すりもみ方式のメカニズム
出典:三菱マテリアル(株)「コンクリート廃材からの環境負荷低減型セメントの開発」
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/pdf/3Rseika_mitsubishimaterial.pdf

図4 加熱すりもみ方式の処理フロー
出典:三菱マテリアル(株)「再生骨材回収プラント」

(2) スクリュー摩砕方式
 スクリュー摩砕方式は、図5に示すように、中間と排出部にコーンを持つ一軸スクリューを持ち、主にすりもみ作用によって骨材表面に付着するセメントペースト分を除去する方式である。機械が比較的小さく、解体現場で処理を行うことが可能である。

図5 スクリュー摩砕方式の処理フロー
出典:太平洋セメント(株)「再生骨材への取り組み」
https://www.taiheiyo-cement.co.jp/rd/research/resource-environment-recycling/006.html

(3) 偏心ローター方式
 偏心ローター方式は、図6に示すように、偏心回転型の処理装置に上部から供給されたコンクリート廃材が、偏心回転する内筒により揺すられて、互いにすりもみ合い、粗骨材とすりもみで崩れたセメント部分に分離される方式である。

図6 偏心ローター方式の概要
出典:(株)竹中工務店「北九州エコタウンにコンクリート塊を再利用するユニークなニューフェース登場 」(2000年8月1日)
https://www.takenaka.co.jp/news/pr0008/m0008_01.htm

2)路盤材

 路盤材とは、道路の基礎として、道路表面から伝達される自動車等の荷重を分散して地表に伝える役割をもつ部材である。建築廃棄物であるコンクリートやアスファルトは細かく破砕して、路盤材の原材料として用いることができる。
 また、焼却灰や下水汚泥などを溶融処理した際に生じる溶融スラグも路盤材に用いられている。溶融スラグは、廃棄物を約1300℃以上の高温に保った炉の中で溶融し、これを空気中や水中で冷却固化して得られる生成物(図7)のことで、石や砂に近い性質を持っている。
 その他の原料としては廃棄ガラスやセラミック等が挙げられ、これらは破砕・粉砕し、粒状にして利用される。

図7 一般廃棄物の焼却灰から作られた溶融スラグ
出典:国立環境研究所ニュース27巻4号「廃棄物の溶融スラグ化-将来とその課題は?-」
http://www.nies.go.jp/kanko/news/27/27-4/27-4-04.html

3) 透水性ブロック

 透水性ブロックとは、雨水を地中に浸透させる性質を有した舗装用建材である(図8)。この原材料として、建設廃棄物や溶融スラグ等が利用されている。その製造工程においては、重量比で溶融スラグ30~90%、廃棄セラミックス粉砕物10~70%からなる骨材に、成形助剤1~10%、焼結バインダ3~20%を混合し、プレス成形後に1000~1250℃で焼成して完成させる。
 透水性ブロックには、下水道や都市河川に流入する雨水を低減する効果があり、下水処理場の負荷の軽減や、河川の氾濫防止を図ることが可能となる。

図8 透水性ブロックの利用例
出典:船橋市環境部 北部清掃工場・南部清掃工場「ISO14001環境活動報告書」

4)再生加熱アスファルト

 アスファルトコンクリート塊は、再生加熱アスファルトや再生骨材としてほぼ全量がリサイクルされている。再生加熱アスファルトとは、一般的に道路の舗装材料として使用されているアスファルトのことで、アスファルト6%に骨材・砂・石灰の粉を混ぜ合わせたものである。アスファルトは常温では硬く、固形状であるため、アスファルト塊を破砕の後、約160℃で加温してアスファルトを溶解し、再びアスファルト混合物として表層や基層あるいは上層路盤に利用する(図9)。

図9 再生加熱アスファルト混合物
出典:広島県「広島県登録リサイクル製品」(品目名:再生加熱アスファルト混合物、写真提供:日本道路(株)尾道合材センター)
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/eco/i/i1/tourokuseido/tourokuseihin/sinseitouroku/2-2302-016.html

3. 技術を取り巻く動向

関連する技術開発の動向

 国立環境研究所では、スラグの再生利用を促進するために、再生利用の際の長期にわたる安全性を確認するための実験的評価手法および再生品全体についての管理手法を構築することを目的とした研究を行っている。
 具体的には、ごみ溶融スラグの環境安全性に関する項目として、「溶出量基準」と「含有量基準」について、物性劣化・化学変化を模擬する促進試験や、路盤材やコンクリート成型利用など利用形態を考慮した試験などを行った。この結果は、日本工業規格(JIS)の基礎情報として活用され、2006年7月には道路材料とコンクリート材料のそれぞれに用いられる際の、ごみ溶融スラグの「JIS規格」が策定された。

引用・参考資料など

(2009年6月現在)