名大ら、非滅菌メタン残さを用いた高効率エタノール生成を実現
発表日:2025.09.12
名古屋大学未来社会創造機構の則永行庸教授らの研究グループは、食品廃棄物由来のメタン発酵残さを滅菌せずに発酵基質として利用し、高効率でバイオエタノールを生成する手法を確立した(掲載誌:Bioresource Technology Reports)。
メタン発酵残さとは、食品廃棄物などを微生物分解してメタンガスを得る過程で生じる副産物で、窒素やリンを含む液体である。従来は肥料として利用されてきたが、排出量が多く、余剰分の処理が課題となっていた。――本研究では、メタン発酵残さと廃飲料を混合した培地に酵母<i>Saccharomyces pastorianus</i> NBRC 11024 Tを接種し、滅菌条件と非滅菌条件で発酵性能を比較した。その結果、非滅菌条件では48時間で最大27.4 g/L(理論収率89.4%)のバイオエタノール生成に成功した。一方、滅菌条件ではほとんど生成されなかった。さらに、発酵中の微生物群動態を16S rRNA解析で追跡したところ、Leuconostoc属が優占するなど、常在微生物が酵母と共存し、発酵環境を整える可能性が示唆された。これにより、滅菌や酵素添加を必要としない低コスト・省エネルギー型の燃料生産が可能となる。
本成果は、メタン発酵残さに「燃料化」という新たな出口を与えるものであり、持続可能なエネルギー供給システムの構築に貢献する。将来的には、バイオエタノールに加え、持続可能な航空燃料(SAF)など次世代バイオ燃料への展開も期待される。