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 国環研、温暖化による「稚樹」分布のずれを解明

発表日:2021.12.09


  国立環境研究所は、国内の森林樹木において稚樹の分布が全体に寒い場所にずれている現象を解明した。気候変動の影響により、樹木の分布や生長量、死亡率や稚樹の加入率などの動態、開花・展葉などの生物季節などに変化が生じている。しかし、樹木の寿命は長く、長期間にわたって観測するには膨大なコストがかかってしまう。また、従来の観測は森林限界や、異なる森林タイプ(常緑広葉樹林や落葉広葉樹林など)の境界部分といった特定の場所で行われてきたため、限定的な事例報告の域を脱することができなかった。こうした課題を踏まえ、同研究所は、日本で初めて小さな個体(稚樹)と大きな個体(母樹)の分布差(稚樹母樹差)に着目し、世界で初めて亜熱帯〜亜高山帯を含む広域の302種にのぼる多数の樹種を対象とした調査を遂行した。その結果、1回の調査で広域・多種の分布移動を効率的に評価し、稚樹の分布域が過去において寒冷で生育できなかった場所に移動していた科学的な証拠を得ることに成功した。また、稚樹の高緯度・高標高方向への分布移動は、近年の温暖化の影響である可能性が高く、森林タイプにより異なり、樹種ごとの種子散布能力や、種間競争、地形や撹乱等の影響を受けて変化していることも示唆された。特に常緑広葉樹の温暖側の分布限界では、全体とは逆に稚樹分布の温暖側へのずれが検出されている。分布移動に複雑性をもたらす生態的プロセスの解明に寄与し、気候変動による生物分布変化の予測手法を改善する上で欠かせない成果であると述べている。

情報源 国立環境研究所 報道発表
機関 国立環境研究所
分野 地球環境
自然環境
キーワード 気候変動 | 常緑広葉樹林 | 高緯度 | 森林限界 | 稚樹 | 落葉広葉樹林 | 母樹 | 稚樹母樹差 | 高標高 | 生態的プロセス
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