環境技術解説

太陽光発電

太陽光発電は、光エネルギーを電気に変換する発電方法です。日射があるかぎり発電ができ、発電にともなって温室効果ガスを発生しないなど、代表的な再生可能エネルギーです。また、規模によっても発電効率が変化する水車、風車、蒸気タービンなどと違って、太陽光発電の効率は規模の大小に左右されにくいため、電卓からメガソーラー(大規模太陽光発電所)まで幅広く利用されています。

一方、発電電力量当たりの導入コストや立地の問題、天候などによる発電能力の変動が系統へ連系した際に周波数や電圧の変動を引き起こすことへの対応など、解決すべき課題も多く残されています。ここでは、太陽光発電の原理と技術、普及のための諸制度や、今後の課題と展望について説明します。

※掲載内容は2016年3月時点の情報に基づいております。
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1. 太陽電池の原理と種類

太陽光発電の中核をなす太陽電池は、慣例で電池と呼ばれてはいますが、それ自身に電気を蓄める機能はありません。その実体は半導体です。ここでは太陽電池の原理と種類について説明します。

1.1 太陽電池の原理

太陽電池とは、光のエネルギーを直接電気に変換できるよう、材料や構造に工夫が加えられたダイオード、すなわち電流を一方向だけに流す半導体素子の一種です。物質に光が当たると、その物質から電子が外に飛び出してしまう「光電効果」と呼ばれる原理を利用して発電を行います。

図1 太陽電池の原理
出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)太陽光発電研究センター


コラム◆「光電効果」と太陽電池

物質に光が当たると、その物質の電子はエネルギーを吸収します。吸収して振動が大きくなった状態が「温度が上がった状態」ですが、物質によっては電子が外に飛び出してしまう(叩き出される)場合があります。これを「光電効果」と呼びます。ちなみに、この現象を説明するアインシュタインの「光量子仮説」が、現代物理学の始まりと言われています。

代表的なシリコン太陽電池で説明します。

半導体には、電子がすこし多いn型と、電子がすこし少ないp型があります。p型半導体は、ホール(正孔、正電荷を持つ仮想的な存在)が多いとも言えます。これらを接合すると、n型半導体からp型半導体に電子が移って、n型半導体はプラスに、p型半導体はマイナスになります。図1のピンク側のp型半導体と、ブルー側のn型半導体の接合面に光が当たると、光電効果で電子とホールが生じます。生じた電子はプラスに帯電しているn型半導体のほうに流れ、ホールはマイナスに帯電しているp型半導体のほうに流れます。するとこれらの間に起電力、すなわち電子を流そうとする力が生まれます。これを外部で利用するのが太陽電池の基本原理です。


1.2 太陽電池の種類

太陽電池の種類は、材料や厚み、接合数(接合面の数)、動作原理などで分類されます。ここでは代表的な種類について、材料による区分を主に、それぞれの特徴を紹介します。

表1 太陽電池の種類と特徴
分類 区分 種類 説明




結晶系 多結晶シリコン 現在の太陽電池の主流。多くの結晶でできたシリコン基盤を使ったもの。
単結晶シリコン 単結晶のシリコン基盤を使ったもの。多結晶より高価だが、性能や信頼性に優れる。
非晶質系 薄膜系シリコン アモルファス(非晶質)シリコンを使ったもので、シリコン層の厚みを薄くできる。電卓などの電源に利用されている。


化合物系 CIGS系 銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)の4つの元素の化合物による半導体。高効率が期待される。
CdTe系 カドミウム(Cd)とテルル(Te)を使うもので、製造時のエネルギーが小さく、低コストでもある。
有機物系 色素増感型 色素を吸着させた二酸化チタンを電極ではさんだもの。新しいタイプの太陽電池。
有機半導体 有機物を含む固体の半導体膜を使う。常温で塗布するだけで製造できるなど、コストダウンに期待がかかる。

太陽電池にはこれら以外にも研究・開発が進められており、複数の種類を組み合わせて、異なる波長の光を余さず利用して効率を上げる試みも行われています。


2. 太陽光発電の導入状況

太陽光発電の導入量は急激に増加しています。世界と日本の太陽光発電の導入量についてみてみましょう。なお、数字の単位は設備容量W(ワット)で、M(メガ)は100万、G(ギガ)は10億を意味する接頭辞です。

2.1 世界の太陽光発電の導入状況

太陽光発電導入量の累計では欧州がトップですが、近年はアジアでの拡大が顕著です。欧州市場が冷え込んだ2012年、2013年も中国や日本(図3、アジア太平洋地域に分類)の市場は急伸し、世界全体としては拡大が続いています。2013年だけで新たに38.4GWが導入され、累計の導入量は138.9GWとなっています。

図2 世界の太陽光発電導入量(地域別・累計) 拡大画像↗
出典:Europian Photovoltaic Industry Association. "Global Market Outlook for Photovoltaics 2014-2018" (p.17)

図3 世界の太陽光発電導入量(地域別・単年) 拡大画像↗
出典:Europian Photovoltaic Industry Association. "Global Market Outlook for Photovoltaics 2014-2018" (p.18)

2.2 日本の太陽光発電の導入状況

日本での太陽光発電は住宅用の導入が先行していましたが、2012年7月から始まった固定価格買取制度(FIT)により市場が急拡大しました。FITについては別項[4.太陽光発電の普及に向けて]で詳説します。

制度開始後2年足らずの2013年度末までに8.7GWもの設備が導入され、そのうち約74%が非住宅用システムとなっています。また、年間発電量の割合では、太陽光発電は2.2%(2014年度)を占めています。

図4 日本の太陽光発電導入実績(単年・累計)
出典:NEDO「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」(2014年9月)(p.15)

図5 2014年度のエネルギーミックス(発電量の比率)
認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)調べ


3. 太陽光発電システムの要素と形態

ここでは、太陽光発電システムの構成要素や利用形態について説明します。

3.1 太陽光発電システムの構成要素

太陽電池の最小単位である太陽電池素子を「セル」と呼びます。単体の太陽電池素子の出力電圧(起電力)は、0.5~1.0V程度とされ、必要な電圧を得るためには複数のセルを直列に接続する必要があります。必要枚数のセルをまとめ、樹脂や強化ガラス、金属枠で保護し強度を高めたものを「モジュール」と呼びます。モジュールにすることで扱いやすさや施工性が向上するほか、汚れや紫外線、湿度などからセルを保護することにもなります。このモジュールが施工時の最小単位となります。

モジュールを複数並べ接続したものを「アレイ」と呼びます。アレイにすることで、より大きな電力が得られます。

太陽電池で得られた電気は直流のため、家庭などで使うには交流に変換する必要があります。このための機器が「パワーコンディショナ(パワコン)」です。パワコンは、電力用半導体(パワートランジスタ)及び制御のための電子回路で構成されています。

さらに、系統に連系し、売電を行う場合には、電力会社から電力を受けるための買電用の電力計と、発電した電力を電力会社に売電するための電力計の2つが必要となります。また、2015年1月以降に新設される、系統連系する太陽光発電システムには遠隔出力制御機能を備えた機器(主にパワコンに内蔵される)の設置が義務付けられました。

図6 住宅用太陽光発電システムの構成例
出典:一般社団法人 太陽光発電協会

3.2 太陽光発電システムの利用形態

太陽光発電システムの利用形態は「独立蓄電」と「系統連系」の2つに大別されます。

1) 独立蓄電

独立蓄電は、他の送電線とは接続せず、発電した場所でのみ電力を使用する形態です。夜間に電力を使用したり、日射量による変動を吸収するために、蓄電システムと一体運用されることが一般的です。遠隔地の灯台や環境モニタリングシステム、人工衛星や宇宙ステーションも独立蓄電で運用されるシステムです。

図7 REGMOS(レグモス、GNSS火山変動リモート観測装置)
活動的な火山の近傍で詳細な地殻変動を捉えるため、国土地理院が開発し運用中の「REGMOS」。太陽電池と衛星電話を使い、電力や通信手段のない場所でも観測が可能。
出典:国土地理院「GNSS火山変動リモート観測装置(REGMOS)の紹介」

2) 系統連系

系統連系とは、太陽光発電システムを電力会社の送電線につなぎ、電力会社からの電気と太陽光発電の電気の両方を利用する形態です。太陽光発電で得られた電気を電力会社に販売することもでき、その場合は「逆潮流」と呼ばれます。

太陽光発電は日射量による出力変動が避けられないため、大規模な太陽光発電設備を基幹電力系統に連系する場合は、系統サイドの負担軽減のため、必要に応じて系統と切り離すことができる、遠隔出力制御機器が必要になっています。

図8 系統連系型システム(全量売電)のシステム構成例
出典:一般社団法人 太陽光発電協会


4. 太陽光発電の普及に向けて

2012年7月から、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が始まりました。

この制度により、再生可能エネルギーで発電された電気を、国が電力会社に一定価格で買い取らせることになりました。買い取り費用は「再生可能エネルギー賦課金」という形で電力利用者(つまり国民全体)から集められ、国民全体で負担します。この制度により、再生可能エネルギーを事業として見た場合、長期にわたり安定的な収入が見込めることから事業リスクが低減します。これを通じて新規参入を促し、再生可能エネルギーの導入を促す仕組みです。

FITの開始により、2012年から2013年にかけ、再生可能エネルギーの中でも特に太陽光発電の導入量が爆発的に拡大しました。これに伴い、電力系統への影響も無視できないものとなり、2014年以降、既存の電力会社による「連系手続き保留」という事態も起こっています。

図9 平成27年度のFIT調達価格と調達期間
出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー固定価格買取制度ガイドブック2015(平成27)年度版」 (p.6)


5. 太陽光発電をめぐる課題

太陽光発電は、太陽光のエネルギーを直接電気に変換するため、燃料の供給に対する不安がありません。また、発電に伴う廃棄物や温室効果ガスの排出もありません。

国連COP21(2015年)で採択された「パリ協定」では、1997年の京都議定書の際にはメンバーから外れていた米中も加わり、「世界全体の温室効果ガスをできるだけ早く減少に向かわせ、今世紀後半には実質的にゼロにする」としています。

将来にわたってのエネルギー問題を考えると、太陽光発電は人類のエネルギー消費の支柱のひとつとなるエネルギー源です。

NEDOの「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」では、太陽光発電による発電コストを2020年には2012年の電力料金と同等の14円/kWに、2030年には現在の火力発電なみの7円/kWとするシナリオを公表しています。

図10 太陽光発電コストの低減シナリオ(非住宅用システム)
出典:NEDO「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」(2014年9月)(p.3)

一方、さらなる普及のためには、以下のような課題の克服が求められています。

エネルギー変換効率の向上
太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換できる割合(エネルギー変換効率)を、少しでも向上させることが求められています。
シリコン原料の安定確保
太陽電池の原料のひとつであるシリコンは、太陽光発電以外にも多くの半導体の主要原料となっており、競合状態にあります。シリコン原料の安定的な需給バランスの確保が求められます。
太陽電池製造技術の向上
太陽電池の構造や素材の改善・開発、シリコンウエハーの薄型化、耐久性の向上などに向けて、製造技術の一層の開発が求められます。
導入インセンティブの増進
電力メーカーはもとより一般家庭や公共・産業界が、太陽光発電の導入意欲を高めるための政策的な支援策等が求められます。
コストダウン
太陽光発電の導入コストの削減は引き続き重要な問題です。現在、1kW当たり20~40万円と見られる導入コストの、さらなる低減が求められます。
送配電系統対策
より多くの電力を系統に流せるようにするためには、詳細な気象予測に基づいた発電量予測の精度向上や、送配電インフラの改善が求められます。



引用・参考資料など

国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)太陽光発電研究センター

・EPIA(Europian Photovoltaic Industry Association) SolarPower Europe

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)

・国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) )太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)

一般社団法人 太陽光発電協会

・資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー

・国土地理院 GNSS火山変動リモート観測装置(REGMOS)の紹介

<コンテンツ改訂について>
2007年4月:初版を掲載
2016年7月:改訂版に更新