グリーンIT

IT機器の革新的な技術開発によりグリーン化をめざす
 現在、「グリーンIT」に対して高い関心が寄せられています。
グリーンITは、「IT機器等のグリーン化」と「IT機器によるグリーン化」の両面から、エネルギー消費の削減や地球温暖化対策を果たそうとするものです。急速な情報化社会の進展によって、IT機器やシステムが消費する電力量は2025年には2006年に比べて約5倍に急増し、国内総発電量に占める割合も大幅な増加が懸念されています。こうした情勢のなか、IT機器やネットワークシステムを含めたITインフラ全体の省エネ・発熱量低減によって消費電力量の増加を抑えつつ、IT技術の利用によって電気機器の省エネ化を達成したり、社会活動や生産・流通・業務・稼動設備の効率化を図ることにより、エネルギー消費の削減や地球温暖化対策につなげる技術の開発が積極的に行われています。これらの技術の総称がグリーンITです。
今回は、グリーンITの全体像と主な内容、内外の最近の動向などを紹介します。

グリーンITによる省エネ効果
出典:経済産業省「グリーンITイニシアティブ(第2回)」
出典URL:http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80520c03j.pdf

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1.グリーンITの概要

1)グリーンITとは

 急速な情報化社会の進展によって、社会で扱う情報量は2025年には約200倍(2006年比)にまで爆発的に増えると見込まれています(経済産業省「グリーンITイニシアティブ」(平成19年12月))。それに伴いIT機器やシステムが消費する電力量も2025年には2,400億kWhと約5倍(同比)に急増し、国内総発電量に占める割合も2006年の5%から20%にまで増加すると懸念されています。この傾向は世界全体においてさらに顕著で、2025年のIT機器・システムの消費電力量は約9倍(同比)にまで膨れ上がると予測されています(図1)。

図1 日本と世界のITの電力消費予測
出典:経済産業省「グリーンITイニシアティブ(第2回)」(平成20年5月)
出典URL:http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80520c03j.pdf

 こうしたことから、エネルギー消費の削減や地球温暖化対策にはIT関連機器の省エネが必須の課題とされ、IT機器の革新的な技術開発に高い関心が寄せられています。 
  「グリーンIT」は、このような状況の下で世界的にも急速に注目を集めてきた取り組みです。
  グリーンITには、次の2つの概念が含まれています(表1参照)。
  一つは「IT機器等のグリーン化」です。IT機器やネットワークシステム、さらにはデータセンターも含めたITインフラ全体の省エネ・発熱量低減を指します。
  もう一つは「IT機器によるグリーン化」を指し、ITを活用した高度な制御・管理を行うことにより、照明や家電などの電気機器のさらなる省エネ化や、テレワークやテレビ会議の普及など、生産・流通・業務・稼動設備の効率化を行うものです。

表1 グリーンITの全体像
区分 内容
IT 機器等のグリーン化 IT機器の消費電力の抑制 電源装置の高効率化、使用電力の制御・制御区分の細分化等
冷却効率の向上 ラック冷却の局所化、データセンター等の温度監視・空調の最適化等
サーバー稼動率の抑制(仮想化技術) 仮想化技術によるサーバー・ストレージの台数削減、サーバー構成部品自体の削減等
クライアント PC (ディスプレイ・筐体)の消費電力の抑制 省電力プロセッサーの搭載、使用時以外の時間帯の消費電力の削減等
ネットワーク部分の消費電力の抑制 ルーター、リピータ、スイッチ、ハブ、回線等の消費電力の削減等
IT 機器によるグリーン化 電気機器の IT 技術による更なる省エネ化 照明の LED 化、 家電(エアコン , 冷蔵庫)等の省エネ
産業用燃焼機器等の省エネ化 高性能ボイラー , 給湯器等の省エネ
自動車等輸送機器の省エネ化 クリーンエネルギー自動車、自動車の燃費改善等
オフィスビル、住宅の省エネ化( HEMS 、 BEMS ) センサー等による建物内の電力利用の最適化
ITS 、エコドライブ ITS 、 ETC 、 VICS 、アイドリングストップ等
流通の効率化 IC タグ等を利用した精緻なサプライチェーン管理
IT /インターネットを利用した社会活動の効率化 テレワーク、在宅勤務、テレビ会議、ペーパーレス、オンラインショッピング、電子流通等
IT による省エネ情報の普及・認知促進 エネルギー消費量の可視化を通じた事業者の省エネ管理徹底、 インターネット等による省エネの啓蒙普及による効果

出典:環境省「技術分野の概況について(IT 機器等グリーン化技術)」(平成20年9月)、経済産業省「グリーンITイニシアティブ(第2回)」(平成20年5月)
(出典URL:http://www.env.go.jp/air/tech/model/heat_aeh-wg2-20_01/mat02.pdf
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80520c03j.pdf

 グリーンITのこれら2つの要素を推進することによって、わが国のエネルギー消費量の削減効果は2025年時点で約5900億kWh(2006年比)とされ、全エネルギー消費量の約10%を削減できると見込まれています(図2)。また、世界全体でも2025年時点で合計約13兆kWh(電力換算:世界の全エネルギー消費量の約15%)の省エネ効果が可能と考えられ、グリーンITの国際的な推進は極めて重要なことといえます。

図2 グリーンITによる省エネ効果
出典:経済産業省「グリーンITイニシアティブ(第2回)」(平成20年5月)
出典URL:http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80520c03j.pdf

2)グリーンITをめぐる国の施策

 平成20年3月28日に改定された「京都議定書目標達成計画」によると、エネルギー起源CO2の排出量が増えた背景のひとつとして、パソコンや家電などの保有台数が増加しオフィスや家庭におけるエネルギー消費量が増大したことを挙げています。このため、地球温暖化対策および施策のひとつとして、「IT機器の省エネ」、「ITによる社会の省エネ」に向けた取組、IT企業の活動における環境インパクトの評価手法の確立(グリーンITイニシアティブ)を産学官が連携して推進し、その国際展開を図ることなどが必要としています。
  平成20年5月に策定された総合科学技術会議の「環境エネルギー技術革新計画」でも、エネルギー需要をさらに減少させるために、個々の機器レベルだけでなく、IT 等の活用により住宅、オフィス、交通機関及びライフラインを含む地域レベルでのエネルギー効率の一層の向上に努めることなどが提唱されています。また、平成20年3月に策定された経済産業省の「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」では、重点的に取り組むべきエネルギー革新技術として「省エネ型情報機器・システム」がうたわれています。
  こうしたなかで、平成19年12月に「グリーンITイニシアティブ」が打ち出され、平成20年2月には産学官のパートナーシップによる「グリーンIT推進協議会」が設立されて、国際シンポジウムなど精力的な活動が進められています。
  環境省でも、平成20年度からスタートした「環境技術実証事業」の一環として「ヒートアイランド対策技術分野」のIT機器等グリーン化技術について検討することとしています。このほか国土交通省の「環境行動計画2008」においても、新エネルギー・新技術の活用等による先導的取組としてグリーンITを取り上げています。また、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、データセンターとネットワーク部分の年間消費電力量の30%以上の削減を目標として、平成20年度から「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)」をスタートさせました。

図3 「グリーンITプロジェクト」の目標
出典:経済産業省「グリーンITについて」(平成20年6月)
出典URL:http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80619b08j.pdf

2. グリーンITの技術動向

1)IT機器等のグリーン化

 現在取り組まれているIT機器等のグリーン化技術を分類すると、大きく次の3つに分けられます。

  • 電力利用効率の向上
  • 冷却効率の向上
  • 機器や部品の削減

 これらの技術は、図4に見るようにファシリティを含めた機器構成の全体にかかわっています(図の「対策方法の分類」欄を参照)。
 このうちデータセンターの消費電力については、空調系、給電系等の消費電力量が少なくないとされており、データセンターの省エネのためには、サーバーの省エネだけでなく、空調や給電、ストレージシステムの消費エネルギー低減が進められる必要があります。

図4 IT機器等のグリーン化関連技術の全体像
出典:環境省「技術分野の概況について(IT 機器等グリーン化技術)」(平成20年9月)
出典URL:http://www.env.go.jp/air/tech/model/heat_aeh-wg2-20_01/mat02.pdf

○データセンターのファシリティ対策

  • データセンターを発電所の近くに建設したり、使用領域だけに電力供給を行うモジュール化などにより、データセンターの消費電力の効率化を図ることができます。

図5 データセンターのモジュール化による消費電力の効率化
出典:環境省「技術分野の概況について(IT 機器等グリーン化技術)」(平成20年9月)
出典URL:http://www.env.go.jp/air/tech/model/heat_aeh-wg2-20_01/mat02.pdf

  • レイアウトの工夫により排熱位置をコントロールしたり、温度分布測定や空調制御を行うことによって、データセンター内の効率的な冷却を図ることができます。例えば図6は、サーバーからの排熱が集まる通路(ホットアイル)と、冷房からの冷気が通る通路(コールドアイル)を区分し、排熱と冷気が混合しないような空気の流れをつくるとともに、温度分布をモニタリングすることで、空調の最適制御を行うというものです。

図6 データセンターの室内環境のモニタリング・最適制御の事例
出典:大成建設(株)WEB.LIBRARY.TAISEI「環境配慮型データセンターの潮流と技術(第2回)」
出典URL:http://librarytaisei.jp/feature/datacenter/002/index_02.html

  • 現在わが国のベンダーでも、最先端のグリーンIT技術を駆使したデータセンターの新設や、グリーンITにより顧客の環境負荷低減を支援するプロジェクトなどが進められています。

○ラックの冷却

  • ラック内に設置されたダクトやファン、冷凍機によって、サーバー等の熱の効率的な排除・冷却を図ることができます。

○サーバーのグリーン化

  • サーバーのグリーン化について進められている主な技術開発は、次の3つが挙げられます。
[1]
サーバー構成要素(筐体、ファン、電源、HDD、プロセッサー、メモリー)の省電力化、高効率化
[2]
ブレードサーバー(プロセッサーなどのサーバー構成要素をブレード形状の小型ボードに集積したハードウェア。従来のサーバー機器と比べ集積率が高い)の開発
[3]
サーバー仮想化技術の開発

図7 サーバーのグリーン化
出典:環境省「技術分野の概況について(IT 機器等グリーン化技術)」(平成20年9月)
出典URL:http://www.env.go.jp/air/tech/model/heat_aeh-wg2-20_01/mat02.pdf

  • サーバーなどに電力が供給される際の電力損失を低減するために、交流から直流に電流が変換される際の電力変換効率を、より高効率とする電源装置が開発されています。特に、直流電源を用いることができるサーバーを採用する技術により、直流(DC)から交流(AC)に変換するプロセスが削減され、大きな省エネが実現されるとされています。
  • また、上記の3つのグリーン化技術のうち、[3]の仮想化技術は近年、高い関心を集めています。
  • 仮想化技術とは、コンピュータを複数のユーザー(あるいはユーザープログラム)が同時に効率的かつ安定的に利用できるようにシステムリソースを抽象化、多重化/統合化するための技術の総称です。稼働率の低いサーバーのCPU パワーを、別のサーバーのタスクに割り当て、使用サーバーを一部に集約することで、導入すべきサーバーやそれに関連するITハードウェアの台数を減らし、全体の消費電力の削減を図ることができます。

図8 サーバー仮想化のイメージ
出典:あいてい堂 繁盛記「サーバ仮想化」byWisdom(NEC)
出典URL:http://www.blwisdom.com/wagashi2/22/P2.html

○ストレージの省電力化

  • ハードディスクなどのシステム内でデータやプログラムを記憶する装置であるストレージも、仮想化技術によって統合、台数削減を図ることができます。
  • アクセス数の少ないHDD の回転を止め、電力消費量を最適化するMAID(Massive Array of Idle Disks)によっても、ストレージの省電力化を図ることができます。

図9 MAIDのイメージ
出典:ビジネス用語辞典「MAIDテクノロジー」byWisdom(NEC)
出典URL:http://www.blwisdom.com/word/key/000831.html

○クライアントPCの省電力化

  • 低電圧版プロセッサーの採用やディスク、ファンなどの省電力化が進み、すでにクライアントPC、特にノートPCはサーバーに比べて省電力化が図られています。
  • クライアントPCは、データセンターのように機器が集約されていないうえに台数も多く、一括管理が困難なために、利用者の自主的省エネ対応が一層の省電力化に寄与することができます。
  • 最近では、クライアントPCの電源設定を集中管理して消費する電力を削減するとともに、電力消費量を計測し可視化できるプログラム商品も開発されています。

○シンクライアントによる省電力化

  • シンクライアントは、サーバーにデータやOS、アプリケーションなどが集約され、クライアント端末がネットワークを通じてそれらを利用する技術であるため、クライアント側では機能が大幅に縮小され、消費電力の削減を図ることができます。
  • 現在、システム全体の消費電力低減を図った仮想PC型シンクライアントシステムも開発されています。

図10 シンクライアントのイメージ(画面転送型の例)
出典:(独)情報処理推進機構(IPA)ホームページ「リモートアクセス環境におけるセキュリティ」(平成19年11月)
出典URL:http://www.ipa.go.jp/security/fy18/reports/contents/remote/Chapter7/7.htm

○ネットワーク部分の省電力化

  • これまでのネットワーク・ルータは、情報量の多少にかかわらず常時一定の性能で動作しているので、情報量が少ない低負荷時や待機時でも大きな電力を消費しており、消費電力の削減が課題とされています。
  • 現在、NEDO による前出の「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)」において、情報量の減少に応じて動的に省電力モードに切り替わる革新的省エネルギーネットワーク・ルータシステムの実現可能性と有効性に関する研究開発が進められています。

2)IT機器等によるグリーン化

 グリーンIT技術は、生産や流通・業務のプロセスの効率を向上させ、すべての経済・社会活動の生産性やエネルギー効率の向上を可能とすることから、環境負荷を大きく低減させることが期待されています。
 例えば、家庭やビルにおける省エネについては、IT機器とセンサー、無線技術を駆使し、HEMS(Home Energy Management System:ホームエネルギーマネジメントシステム)やBEMS(Building Energy Management System:ビルエネルギーマネジメントシステム)の導入を図ることによって実現が可能になると考えられます。また、LED照明や有機EL照明などの高効率照明、ブラウン管に代わる液晶、プラズマ、有機ELなどの省エネ型ディスプレイ、冷蔵庫やエアコンなどの家庭用・業務用機器類についても、グリーンITの導入によって高効率化が図られると期待されています。
 そのほか、自動車等輸送機器の省エネ化や、高度道路交通システムITS(Intelligent Transport Systems)の導入、エコドライブの普及などによる運輸・交通関連の環境負荷低減や、ITを活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方であるテレワーク、在宅勤務、テレビ会議などの実現による社会活動の効率化と、それに伴う省エネ化の達成など、IT機器等によるグリーン化はわが国のみならず世界全体のエネルギー消費の削減や地球温暖化対策に向けて、大きな可能性を秘めているといえます。

3.まとめと展望

 グリーンITをめぐる動きはここ数年で大きく加速されてきました。 2008年9月には、グリーンIT推進協議会の主催による「グリーンITアワード」が創設され、第1回の審査の結果、「ITの省エネ」と「ITによる社会の省エネ」の2部門で、合計12件が選出され表彰されました。受賞の優れた省エネ技術の普及と、本制度が一層のグリーンIT進展へのけん引役となることが期待されています。

図11 グリーンITアワード
出典:経済産業省「グリーンITアワード2008 経済産業大臣賞等の受賞結果について」
出典URL:http://www.meti.go.jp/press/20080925001/20080925001-1.pdf

 国際的には、エネルギー効率の高いプロセッサーやサーバー、ネットワークなどの技術開発を推進し、データセンターなどの運用のベストプラクティスを普及させることを目標に、2007年に「グリーン・グリッド」が設立されました。グリーン・グリッドでは、データセンター内のIT設備を支えるインフラ設備のエネルギー使用効率を評価、測定するための指標「DCiE」(Data Center infrastructure efficiency:データセンターインフラ効率)や、データセンターのサーバー電力消費量を削減する方法などを提案しています。
 このように、グリーンITは国の内外で積極的に取り組まれており、今後さらに省エネルギー・低炭素化社会の実現を図るうえで重要な役割を担うものと期待されています。

引用・参考資料など

1)総合科学技術会議「環境エネルギー技術革新計画
2)総合科学技術会議「最近の科学技術の動向 情報爆発時代に向けた省エネルギー技術
3)経済産業省「Cool Earth-エネルギー革新技術計画
4)経済産業省「グリーITイニシアティブ
5)経済産業省「グリーンITについて
6)環境省「環境技術実証モデル事業検討会IT機器等グリーン化技術小WG
7)グリーンIT推進協議会
8)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)
9)グリーン・グリッド
10)クライメート・セイバーズ コンピューティング・イニシアチブ
(2009年1月現在)