グリーン物流

グリーン物流とは、物流システムの改善により物流段階における二酸化炭素排出量を削減する取り組みの総称である。モーダルシフト、輸送拠点の集約、共同輸配送、車両等の大型化などに分類される。

グリーン物流への取り組みは、民間企業によるパートナーシップの設立、グリーン経営認証制度(国土交通省)、グリーン物流パートナーシップ推進事業(グリーン物流パートナーシップ会議)など、様々な形で実施されている。今後、一層の物流システム研究および普及・推進が期待される。

※掲載内容は2021年7月時点の情報に基づいております。
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1.背景

1)運輸部門からの二酸化炭素排出量の推移

運輸部門からの二酸化炭素排出量の推移を図1に示す。近年、右肩上がりの増加を続けていた自動車等からの二酸化炭素排出量は、2001年以降、車両台数の頭打ちや燃費性能の向上によって漸減傾向にある。一方、貨物自動車からの二酸化炭素排出量は、微減にとどまっている。

我が国の二酸化炭素排出量の内訳をみると、産業部門が約40%、民生部門が約25%、運輸部門が約20%となっている。運輸部門の二酸化炭素排出量のうち約90%は道路交通によるものとなっている。トラックをはじめとする自動車中心の物流システムの改善は、低炭素社会を作るうえで重要な課題になっている。

図1 運輸部門における二酸化炭素排出量の推移
出典:国土交通省ウェブサイト「運輸部門における二酸化炭素排出量(令和3年4月27日更新)」

2)荷主のエネルギー削減義務

我が国における温室効果ガス排出量を削減するためには、産業部門だけでなく、民生部門においてもエネルギー使用の合理化が不可欠である。こうした状況のもと、2008年に、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)が改正された。これにより、一定規模の貨物輸送を発注する荷主に対しても、モーダルシフト等の方法により、貨物輸送に伴うエネルギーの削減が義務付けられることとなった。2018年の省エネ法改正では、ネット小売事業者等を規制の対象と確実に位置付け、また到着日時を指定した荷受け側を準荷主と位置づけ、省エネへの協力を求めた。

資源エネルギー庁は、省エネ法の改正を受け「省エネ法(荷主に係る措置)について」を運営しており、同サイトを通じて、荷主が知っておくべき省エネ法の内容や輸送トンキロの計算方法などを紹介している。


3)グリーン物流パートナーシップ会議の発足

グリーン物流を推進するためには、各企業が単独で取り組むだけでなく、荷主、運輸業者を含めた関係者の連携が不可欠である。こうした背景から、日本ロジスティクスシステム協会、日本物流団体連合会、経済産業省、国土交通省、日本経済団体連合会(オブザーバー)の協力により、グリーン物流パートナーシップ会議が2005年に発足した(図2)。同パートナーシップ会議には、物流関係の企業、団体、個人など3,300以上の会員が加盟し、グリーン物流の普及事業や情報提供、行政への提言などを行っている。

図2 グリーン物流パートナーシップ会議の体制
出典:グリーン物流パートナーシップ会議


2. 技術の概要

1)モーダルシフト(輸送手段の転換)

モーダルシフトとは、輸送手段を小規模なものから大規模なものへと変更することである。東京と大阪など、拠点間の輸送において有効で、我が国では、トラックから鉄道および船舶へ変更することが多い。

貨物輸送においては、鉄道や船舶など、輸送機関が大規模になるほど二酸化炭素排出量が少ない(図3)。

図3 輸送量当たりの二酸化炭素排出量(貨物)
出典:国土交通所「運輸部門における二酸化炭素排出量」


○鉄道へのモーダルシフト

国土交通省では、モーダルシフトによる二酸化炭素排出削減の実証事業を2002年度から2004年度にかけて実施した。図4に示す北海道の事例では、トラック輸送を鉄道に切り替えることで、年間約290tの二酸化炭素を削減した(削減率約85%)。

図4 北海道でのモーダルシフトによる二酸化炭素排出削減実証事業
出典:国土交通所「平成16年度に認定した実証実験」

現在は行われていないが、トラックの荷台あるいは荷台を積んだトラックを鉄道で輸送し、目的地近傍の駅まで鉄道で輸送したあと、トラックで目的地まで輸送するピギーバック輸送もこうした試みの一環であった。(廃止の原因の一つとして、我が国の鉄道規格が、ピギーバック輸送を行うには不十分な大きさだったことが挙げられている。)


○船舶へのモーダルシフト

船舶は、国内貨物輸送量の4割、産業基礎物資の8割を担う、我が国の経済活動・国民生活にとって必要不可欠な輸送・交通手段である。さらに、二酸化炭素排出量はトラックの1/4と、環境特性にも優れている。

だが、課題も残されている。船舶輸送の場合、港での貨物の積み下ろし作業が発生するが、このための時間が多くかかってしまう。高速船の就航により状況は改善されつつあるが、生鮮食品の輸送ではトラックの方が利便性は高い。また、船舶輸送はエネルギー効率および輸送コストに優れているものの、貨物の積み下ろし作業に必要な人件費などの各種コストが大きいため、海運コストが押し上げられている点も指摘されている。そのため、一層の企業体質の改善・サービスの向上が求められている。

このような状況のもとで我が国の内航海運では、図5に示すような内航RORO船(ろーろーせん)が海運を担っている。RORO船は、Roll On Roll Off Shipの略で、トレーラーが貨物を積んだまま自走して乗り込み、そのまま上陸できる構造の貨物船である。カーフェリーに似ているが、客室は設けられていない。RORO船により、生鮮食料品、雑貨品などがトラックに積まれたまま輸送されている。

図5 内航RORO船
出典:運輸省(現:国土交通省)「平成10年版 日本海運の現況 ~物流改革を担う~」


サッポロビール(株)は、2011年にベトナムロンアン省に建設したビール工場における物流部門での環境負荷の低減および長距離トラック輸送の削減を目的に、2020年よりロンアン省とハノイ市の間の輸送モードを長距離トラックから内航海運にシフトしている。海運比率を高めることで年間の二酸化炭素排出量を約450 t(従来比で約64.5%)削減できる見込み。サッポロビール社は、これまで日本国内において温室効果ガス対策・長距離トラック輸送のドライバー不足に伴う物流インフラのひっ迫に対して、モーダルシフトの取組を進めており、これらのノウハウをもとに国を超えた輸送体制の構築を進めている。

図6 ベトナムにおけるサッポロビール社の取り組み
出典:サッポロビール ニュースリリース(2020年8月17日)

2)輸送拠点の集約

輸送拠点の集約とは、各地に分散している拠点および配送網を集約・再編成することで、輸送に掛かる時間・コスト・環境負荷を削減する取り組みである。

図7にこうした取り組みの事例を示す。この例では、全国9拠点あった日用品会社の物流拠点を、5拠点に集約している。生産工場からの効率的な輸送作業を行うことで、各拠点へのスムーズな在庫補充を実現している。さらに、各拠点から納品先までの納入に要する期間は、集約前の水準を維持できており、最適な配送体制となっている。

これにより、輸送効率が向上し、輸送コストが削減された。また、拠点数が少なくなった事で、在庫圧縮が可能となり、拠点スペース及び拠点人員のコストも低減された。さらに、物流管理に関わる事務作業量も減少した。

図7 輸送拠点の集約事例
出典:(株)日立物流 ウェブサイト「事例紹介」

3)共同輸配送

各企業が別個に行っている流通業務を共同化して、車両の走行台数や走行距離を減らすのが、共同配送である。共同配送の導入は、物流コスト削減という狙いも大きい。

図8に示す物流企業の事例では、関東と中部を結ぶ物流フローを同業他社と統合化し、中継点である御殿場から関東と中部への配送をそれぞれの会社が分担することにより、トラックの台数を削減し、燃料使用量も4%削減した。

図8 共同配送による物流フロー(トラック)の改善例(トヨタ輸送株式会社)
出典:(公社)ロジスティクスシステム協会「ロジスティクス環境会議ウェブサイト「事例一覧 1.食品・流通分野(36事例)」」

表1 共同配送によるトラックの環境負荷削減の事例(トヨタ輸送株式会社)
項  目 対策効果
(実施前を100とした場合の実施後の数値:
実施後/実施前×100)
輸送コストの対策効果 96%
トラック使用台数の対策効果 96%
トラック使用台数の対策効果 96%
燃料使用量(またはCO2排出量)の対策効果 96%

関東→東富士間で61便/日の空車が43便/日(△18便/日)・東富士→中部間で25便/日の空車が4便/日(△21便/日)

4)車両等の大型化

輸送用車両を大型化することで、一度に運搬可能な積荷の量を増やし、エネルギー利用効率を向上させる取り組みである。トラックやタンクローリーを大型化する事例が多い。

2019年1月には、国内において「ダブル連結トラック」の本格導入が開始し、1台で2台分の輸送が可能となり、約4割の二酸化炭素排出量が見込まれている。


図9 ダブル連結トラック
出典:国土交通省 報道発表資料(平成31年1月29日)

5)貨客混載

貨客混載は、貨物と旅客の輸送・運行を一緒に行う形態のことで、鉄道や路線バス、タクシーなどで行われる。図10は佐川急便(株)が北越急行(株)とともに取組む旅客鉄道を利用した貨客混載輸送の実施概要である。新潟県内の上越営業所から六日町営業所までの小口宅配貨物のトラックによる拠点間輸送(245回/年)について、旅客鉄道を利用した貨客混載輸送に転換し、運行1回あたり14.0kg(88%)の二酸化炭素排出削減を可能とした。

図10 旅客鉄道を利用した貨客混載の取組
出典:国土交通省「宅配事業と国際物流の現状と課題(平成30年1月24日)」

2019年4月には佐川急便(株)と北海道旅客鉄道(株)による鉄道とタクシーを組み合わせた貨客混載が開始されるなど、地域の特性に合わせたさまざまな取組が進められている。


6)その他

○ソフトタンクによる輸送

図11は、我が国の飲料メーカーが実施した、拠点間輸送における環境負荷削減の取り組み事例である。この企業では、以前、北海道の工場で生産した飲料の原料(液体)をタンクローリーに充填し、フェリーで関西の工場まで輸送していた。この方法では、タンクローリーが空のままで北海道まで戻ることになり、片荷運行の状態だった(図11(左))。

そこで、液体しか充填できないタンクローリーから、同社製品などの通常貨物を積載できるトレーラートラックに切り替えることで、復路を物流に有効活用する取り組みが実施された。この取り組みにおいて液体原料は、「ソフトタンク」という折りたたみ可能な特殊樹脂織布製の袋状容器に充填されて、トレーラートラックに積載される。使用後のソフトタンクは別便で輸送され、洗浄・殺菌などのメンテナンスを行って再利用される(図11(右))。この取り組みにより、二酸化炭素排出量が年間293トン削減された。

図11 タンクローリー輸送からソフトタンク輸送への転換による環境負荷削減(左)実施前、(右)実施後
出典:国土交通省 報道発表 (平成20年12月4日)



○生産計画の共有による段ボール物流の効率化

(株)Mizkan(ミツカン)とレンゴー(株)は、段ボールの物流効率化実証実験(実施期間:2019~2020年の計24日間)を行い、段ボール納入までのフローを見直すことによる二酸化炭素削減効果を推定した。

これまで、段ボールの納入は、ミツカンからの発注に合わせて、その都度行われていたが、そのフローを、1)ミツカン製品の生産計画がレンゴーに開示・提供され、2)レンゴーが段ボールの生産計画、納入・配送予定表を作成、3)ミツカンが納入・配送予定表を確認・承認、4)レンゴーが納入・配送計画を確定させるという一連の流れにした。その結果、食酢等ボトル製品用外装ダンボールをレンゴー小山工場からミツカン栃木工場(拠点間距離:17.1km)へ納入する1日あたりの平均便数は、約2割少ない5.4便(従来:6.6便)となり、この取組を1年間(年間納入日数:240日)行った場合、二酸化炭素が年間6.07トン削減されることが試算された。

図12 ミツカンとレンゴーによる実証実験のフロー
出典:(株)Mizkan NEWS(2020年6月8日)


○エコドライブ

エコドライブとは、環境低負荷型の自動車の運転方法のことである。国土交通省や環境省、警察庁などからなるエコドライブ普及連絡会、エコドライブ10のすすめ(図13)をとりまとめ普及促進を図っている。このような取り組みを実践することで、走行時の燃費の向上が期待できる。

図13 エコドライブ10のすすめ
出典:環境省「エコドライブについて」

3. 技術を取り巻く動向

1)物流企業を対象にしたグリーン経営認証

国土交通省では、2008年7月に「国土交通省環境行動計画2008」を策定し、トラック、バス、ハイヤー、タクシー運送事業における環境貢献型経営(グリーン経営)を促進することとしている。これを受けて、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団では、国内の物流企業(運送業、タクシー、バス、旅客船、内航海運、港湾運送、倉庫)を対象に、グリーン経営認証制度を実施している。この認証制度では、エコドライブの実施、低公害車の導入、空車走行距離の削減及び効率的走行の推進、エネルギー効率の向上などの項目について、申請企業が審査を受け、合格すれば2年間の有効期間で認証が受けられる。2021 年 3 月末現在、認証登録したトラック、バス、タクシー事業者数は3,287社、保有する車両の総数は約18万台であり、これは日本全国の事業者の保有台数の11%に相当する。

認証を取得した事業者への調査(図14)によれば、認証を取得した事業者の平均燃費は、総重量8トン以上のトラックの場合で認証取得時比3.3%、8トン未満で3.3%、バス2.7%、タクシー1.6%とそれぞれ向上している。

図14 グリーン経営認証の取得による効果
出典:(公財)交通エコロジー・モビリティ財団 交通環境対策部パンフレット「グリーン経営認証取得」

2)市民レベルでの低環境負荷型交通への取り組み

この解説では、「物流」という視点から、貨物の輸送について述べてきたが、「物の流れ」を「人の流れ」に置き換えてみると、私たちの暮らしの中でも同様の事例があることに気づくだろう。例えば、通勤やレジャーでマイカーではなく公共交通手段を用いることや、近隣のターミナル駅まで車で移動して電車やバスに乗り換えて目的地まで行くパーク・アンド・ライド、同じ目的地に向かう人が一台の車に乗る「相乗り」などは、グリーン物流の取り組みと似ている。なかでも、環境に配慮した交通システムとして「ライトレール」が注目されている(詳しくは「ライトレール(LRT)」を参照されたい)。

国土交通省は、エコ通勤ポータルサイトにおいて、(公財)交通エコロジー・モビリティ財団のエコ通勤優良事業所認証ロゴマークを紹介しているほか、「エコ通勤」に主体的に取り組むために必要な基礎知識をとりまとめた「エコ通勤の手引き」を公開している。暮らしの中でできる取組として参考にされたい。

3)さらなる二酸化炭素削減に向けて

私たちのライフスタイルはインターネットの普及等により急速に変化している。たとえば、買い物に占めるネット通販の割合が増大し、各家庭や事業所までの宅配利用による物流が増加している。一方、音楽や映像はデータ配信が一般的となり、オークションによる不要物の再利用やシェアリングによる有効活用の機会が増大するなど、モノの消費量・生産量の減少につながる動きも出ている。今後は、脱炭素の条件下で必要なサービスを利用者に届ける観点から、生産プロセスを含めたサプライチェーンの効率化と脱炭素化が重要になると考えられる。


引用・参考資料など