土壌・地下水汚染対策

2003年2月に、市街地の土壌汚染を規制する「土壌汚染対策法」が施行されて以降、土壌や地下水の浄化技術の開発・実用化が急速に進んでいます。ここでは、土壌汚染の現状、土壌汚染の特徴、土壌汚染の影響、土壌汚染対策技術の概要を整理します。

※掲載内容は2017年3月時点の情報に基づいております。
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1.土壌汚染の現状

土壌汚染対策法が施行された背景には、近年、工場跡地などの再開発にともなって、重金属類や揮発性有機化合物(VOC)などによる土壌汚染が顕在化してきたことがあげられます。

環境省では、毎年、都道府県などが把握した土壌汚染事例数を公表していますが、土壌環境基準が制定された1991年(平成3年)以降増加傾向にあり、土壌汚染対策法が施行された2003年2月を含む2002年度(平成14年度)に急増、改正土壌汚染対策法が施行された2010年度(平成22年度)に再度増加していることがわかります(図1)。

図1 土壌汚染調査・対策事例数の推移
環境省「平成26年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果」をもとに作成
http://www.env.go.jp/water/report/h28-01/index.html

2014年度(平成26年度)末までに都道府県などが把握した土壌汚染事例は累計で、調査を実施した事例が19,927件、調査したなかで環境基準値を超えた事例は9,733件となっています。超過事例9,733件を土地利用別にみると、工場や事業場の敷地・跡地が6割を超えています。

超過事例の内訳を物質別にみると、揮発性有機化合物(VOC)ではトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ベンゼン、ジクロロエチレンにかかわる事例が多く、重金属類では鉛及びその化合物、砒素及びその化合物にかかわる事例が多くなっています。

2.土壌汚染の特徴

土壌は、いったん汚染されると、有害物質が蓄積され、汚染が長期にわたるという特徴があります。揮発性有機化合物(VOC)は土壌中で分解されにくく、ベンゼンを除くと比重が水よりも重いため地下に深く浸透して、いつまでも土壌や地下水中に残留します。また、地下水の流れにのって汚染が拡散して、広域化してしまうことがあります。一方で、重金属は土壌粒子に吸着されやすいため、地表近くに保持される傾向があります。自然由来で元から下層の土壌に存在している場合や六価クロムなど移動しやすい物質を除いて、地下水汚染を引き起こす可能性はあまり高くありません(図2)。これらの物質以外にも、硝酸性窒素や亜硝酸性窒素、PCBやダイオキシン類などが、土壌や地下水の汚染物質となっています。

土壌では重金属や、揮発性有機化合物、ダイオキシン類による汚染が問題となります。また、地下水では硝酸性窒素や亜硝酸性窒素、揮発性有機化合物、砒素などの移動しやすい物質が問題視されます。

これらの汚染は、汚染物質の不適切な取り扱いによって漏れ出たり、これらの物質を含んだ排水が地下に浸透したりすることが主な原因と考えられます。この他、重金属は自然源からも発生しますし、硝酸性窒素や亜硝酸性窒素は農地や市街地が発生源となっています。

図2 重金属と揮発性有機化合物による土壌汚染の特徴
環境省・日本環境協会「土壌汚染による環境リスクを理解するために」をもとに作成
http://www.jeas.or.jp/dojo/business/promote/booklet/files/06/all.pdf

3.土壌汚染の影響

土壌汚染による影響としては、人の健康への影響や、農作物や植物の生育阻害、生態系への影響などが考えられます(図3)。

土壌汚染の環境リスクの大きさは、土壌が有害物質で汚染されている程度と、汚染された土壌に接した量(暴露量)によって決まります。たとえば、汚染されている土壌にふれることがない場合、あるいは汚染された土壌から有害物質が地下水に溶け出さなかったり、たとえ溶け出していても、汚染された地下水を飲んでいなかったりした場合、すなわち暴露量がないと考えられる場合は、土壌汚染による環境リスクは問題にならなくなります。

図3 土壌汚染の影響
出典:環境省・日本環境協会「土壌汚染による環境リスクを理解するために」
http://www.jeas.or.jp/dojo/business/promote/booklet/files/06/all.pdf

4.土壌汚染対策技術の概要

土壌汚染は、汚染物質の性状や地質、汚染の深さや規模、濃度がさまざまで、環境へ与える影響も異なります。こうしたことから、土壌汚染対策技術は、調査技術から汚染処理技術まで非常に多岐にわたり、それぞれの汚染状況に対応した措置をする必要があります。

汚染土壌の除去などの措置は、土壌を掘削して区域外の汚染土壌処理施設で処理する「区域外処理」と、区域内で浄化などの処理や封じ込めなどの措置を行う「区域内措置」があります。「区域内措置」にはさらに、土壌の掘削を行うが汚染土壌処理施設への搬出を行わない「オンサイト措置」と、掘削を行わず原位置で汚染の除去などを行う「原位置措置」があります(図4)。

図4 汚染の除去などの措置の区分
出典:環境省「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン」
https://www.env.go.jp/water/dojo/gl_ex-me/

措置の実施状況をみると、重金属などは掘削除去の事例が多くを占めています。これは、重金属類は土壌に吸着しやすく、原位置での浄化が難しいことなどによるものと考えられます。揮発性有機化合物(VOC)では掘削除去と原位置浄化が多く採用されています(図5)。

図5 土壌汚染対策の実施内容(平成22年度からの累計)
環境省「平成26年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果」をもとに作成
http://www.env.go.jp/water/report/h28-01/index.html

5.汚染の拡散を防止する技術

土壌汚染の拡散を防ぐ技術には、液状のセメントや水ガラスなどの固化剤を用いて土壌を固め、安定化する技術、薬剤を用いて汚染物質を溶け難くして安定化させる技術、汚染土壌を加熱し固形化する技術があります(表1)。

 
表1 土壌汚染の拡散防止技術
対策 技術例 対策物質概要
VOC 重金属
拡散防止 固化 液状のセメントや水ガラスによって固化する
不溶化 硫酸第一鉄などの薬剤を使って不溶化する
溶融固化 高圧電流を通電し土壌を固形化する
封じ込め 遮断工、遮水工により封じ込める

これらは汚染物質を除去する技術ではないため、適用後もモニタリングが必要になります。モニタリングで土壌溶出量基準を超える土壌汚染が見つかった場合には、遮断工、遮水工などの封じ込め措置が行われます(図6)。

図6 原位置での封じ込め処置
出典:環境省「地下水をきれいにするために」
http://www.env.go.jp/water/chikasui/panf/

6.汚染物質を分解・除去する技術

汚染物質を除去する技術は、「掘削除去」と「原位置浄化」に大きく分けることができます。

「掘削除去」後の汚染土壌は、土壌洗浄などにより汚染物質を除去して埋め戻される場合と、管理型最終処分場などに場外処分される場合がありますが、後者のほうが多いのが現状です。しかし、最終処分場の確保が難しくなっており、低コストで、汚染現場で土壌処理が可能な技術が求められています。

掘削せずに汚染物質を除去する「原位置浄化」技術には、分解技術と抽出(除去)技術があります。分解技術は、有機汚染物質をCO2などの無害な形にまで分解する方法で、抽出技術は、汚染物質を土壌から分離して取り除く方法です。表2は、現在実際に採用されていたり実用化されていたりする技術例を整理したものです。なお、○がついている技術が、どのサイトにも適用できるわけではありません。例えば、微生物や植物を利用する生物学的技術は、低コストでの実施が可能ですが、物理化学的技術に比べて浄化が完了するまでに時間がかかります。そのため、どのような技術を使って浄化を行うかは、汚染物質の種類に加えて、汚染の規模や浄化完了までに求められる期間などにより、ケースバイケースとなります。

土壌汚染対策法が施行され、土壌汚染事例が急増しているなか、土壌・地下水浄化は環境ビジネスとして成立しており、各社の技術開発競争も激化しています。

   
表2 原位置浄化の技術例
対策 技術例 対策物質概要
VOC 重金属
分解 酸化分解 地下水系に酸化剤を直接注入し、VOCを分解する
鉄粉法 汚染された土壌や地下水に鉄粉を混合し、VOCを分解する
バイオレメディエーション 微生物がもつ有害物質の分解能力を利用して浄化する
反応性バリア法 汚染地下水の下流域に鉄粉を含む透過壁(バリア)を設置して分解する
抽出(除去) 土壌ガス吸引 地表面と地下水面の間(不飽和帯)に存在する汚染物質を真空ポンプなどで吸引し、除去する
地下水揚水 汚染地下水を揚水し、汚染物質を分離し、活性炭などに吸着させることで浄化する
エアースパージング 土壌中や地下水中に空気を注入してVOCの気化を促し、浄化を促進する
電気泳動 地中に装入した電極から電流を流し、重金属類をイオン化して地下水に溶け出させ、電気により移動させて集める
高圧洗浄揚水ばっ気処理 土の粒子に吸着している汚染物質を高圧水と空気で洗浄、ばっ気し浄化する
ファイトレメディエーション 汚染物質を蓄積・分解する植物の能力を利用して浄化する

引用・参考資料など

[1] 環境省. 平成26年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果. 2016,
http://www.env.go.jp/water/report/h28-01/index.html, (参照 2017-02-20)

[2] 環境省,日本環境協会. 土壌汚染による環境リスクを理解するために. 2009,
http://www.jeas.or.jp/dojo/business/promote/booklet/files/06/all.pdf, (参照 2017-02-20)

[3] 環境省,日本環境協会. 土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン. 2012,
https://www.env.go.jp/water/dojo/gl_ex-me/, (参照 2017-02-20)

[4] 環境省. 地下水をきれいにするために(揮発性有機化合物による地下水汚染対策に関するパンフレット) . 2004,
http://www.env.go.jp/water/chikasui/panf/, (参照 2017-02-20)

[5] 有田正光編著. 地圏の環境. 東京電機大学出版局, 2001, 284p.

[6] 宮本和明. "汚染された土壌環境の対策技術の動向". 科学技術動向. 2002, 3月号,
http://data.nistep.go.jp/dspace/handle/11035/1389, (参照 2017-02-20)

[7] 産業技術総合研究所. "浄化技術". 地圏環境リスク研究グループ,
https://unit.aist.go.jp/georesenv/georisk/japanese/home/home_remediation.html, (参照 2017-03-30).

[8] 高橋和夫. "重金属汚染土壌の浄化技術の動向". 汚染土砂等超難度資源化技術セミナー講演録. 2002,
http://www.recycle-solution.jp/shinki/dai3/02.html,(参照 2017-03-30)

[9] 地球環境センター. "電気泳動土壌修復技術". 土壌・地下水汚染の調査・対策技術. 2002,
http://nett21.gec.jp/SGC_DATA/JP/html/sgcj-032.html,(参照 2017-03-30)

(2017年3月現在)
2006年7月:掲載
2017年9月12日:更新