高効率照明

 期待高まる照明の省エネ技術
 わが国では、照明によるエネルギー消費量が、家庭で約16%、オフィスで約21%と大きな割合を占めており、省エネルギーによる地球温暖化対策を進める上で、少ないエネルギーで明るさを実現できる「高効率照明」への期待が高まっています。
 こうした状況を踏まえ、政府は、2030年頃までの短中期的な温室効果ガス排出削減対策に必要な技術の1つとして高効率照明を取り上げ、生活の質を維持しつつエネルギー需要を削減するために、既存技術の普及やさらなる効率の向上、コスト低減を図ることが重要としています。また、メーカー各社や研究機関などにおいても、高効率照明の研究開発が積極的に進められています。
 そこで今回は、現在のさまざまな照明技術とその省エネルギー対策を概観するとともに、今後の実用化や普及が期待されている次世代の照明技術として、高効率蛍光灯、高効率LED照明、有機ELなどを取り上げ、技術の原理や最新の開発動向を紹介します。

LEDによるメインエントランスの照明(兵庫県立芸術文化センター)

LEDによるメインエントランスの照明(兵庫県立芸術文化センター)
出典:(社)照明学会「フォトギャラリー」(「照明学会誌」第90巻第7号より引用)
出典URL:http://www.ieij.or.jp/what/gallery/pg_25.html

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1. 照明によるエネルギー消費の現状

 照明は古来、私たちの生活に重要な役割を果たしてきました。とりわけ現代は、白熱灯や蛍光灯などが室内・屋外のさまざまな空間で幅広く利用され、昼夜を問わず不自由のない行動や生活が可能になっています。
 今日主流となっている照明の多くは電気を利用したものですが、その技術は、発電機の発明と実用化(1869年)により大きく進展しました。1880年前後に白熱灯が実用化されたのをはじめ、1890年代には水銀灯が発明され、1938年には初めて蛍光灯が発売されました。
 20世紀を通じてこれらの照明は改良が重ねられ、利用場面も広がってきましたが、それに伴いエネルギー消費量も増加してきました。今日、わが国のエネルギー消費量に占める照明の割合は、家庭で約16%(図1)、オフィスビルで約21%(図2)と、大きな割合を占めています。

図1 品目別家庭用電力消費の推移

図1 品目別家庭用電力消費の推移
出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー2008」
出典URL:http://www.enecho.meti.go.jp/topics/energy-in-japan/energy2008.pdf

注)このエネルギー消費構造は、テナントビルにおけるレンタブル比60%以上(熱源有)の例

図2 ビルのエネルギー消費構造
出典:(財)省エネルギーセンター「オフィスビルの省エネルギー」
出典URL:http://www.eccj.or.jp/office_bldg/03.html

2. さまざまな照明技術と省エネルギー対策

 今日利用されている代表的な照明には、蛍光灯、白熱灯、ハロゲン電球、HIDランプがあります(表1)。
 蛍光灯は、発光管に封入されている水銀蒸気中の放電によって発生した紫外線を、蛍光体に当てて可視光に変えることで発光します。寿命が長く、発光効率注1)が80~100 lm(ルーメン)/Wと高いのが特長で、最近では、白熱灯と同様の形状に加工され、取替えが可能な「電球型蛍光灯」も発売されています。
 白熱灯は、タングステンのフィラメントが電気抵抗によって2千数百℃に熱せられ、発光します。発光効率は15~25 lm/Wにとどまりますが、暖かみのある色味により演色性注2)に優れるなどの特長があります。
 ハロゲン電球は、白熱灯と同じ原理で発光しますが、ハロゲンガスを封入することによってハロゲンサイクル注3)による長寿命化と発光効率の向上(白熱灯より10~40%アップ)を可能にした点などが異なります。
  HIDランプは、蛍光灯と同様に放電によって発光しますが、封入する金属の蒸気圧と温度が蛍光灯よりも高くなっています。封入する金属の違いにより、メタルハライドランプ(種々の金属とヨウ素などとの化合物)、高圧ナトリウムランプ(ナトリウム)、水銀ランプ(水銀)に区分されます。

表1 代表的な照明の種類

出典:(社)日本電球工業会「あかりの省エネ」
出典URL:http://www.jelma.or.jp/bulb/pdf/akari_shoene.pdf

 こうした各種照明の特性を踏まえつつ、適切な利用による省エネルギー化を促進するため、(社)日本電球工業会では、2010年までに採用すべき施策として以下の4つの提案を行い、その効果として、127億kWhの電気消費量削減と、535万トンのCO2削減が可能と試算しています。


<(社)日本電球工業会が提案する省エネ施策>

(1)白熱灯の半分を電球型蛍光灯へ切替え
(2)ハロゲン電球の半分を高効率蛍光灯(Hf蛍光灯)やメタルハライドランプに切替え
(3)直管形蛍光灯をすべて高効率蛍光灯(Hf蛍光灯)へ切替え
(4)水銀ランプをすべてメタルハライドランプに切替


注1)
発光効率とは、光源の効率を表すもので、単位電力当たりの全光束(光源からの可視光の総量)を「lm/W」で表します。
注2)
照明が物の見え方に及ぼす影響を演色といい、これを光源の特性と考えたときには演色性といいます。光源の演色性を評価する方法は、JIS Z 8726(光源の演色性評価方法)で規定されており、基準となる照明光で照明した色と、どのくらい違って見えるかを色差で表し、演色評価数を計算する方法が採用されています。
参考資料:(財)日本色彩研究所「照明用光源(LEDを含む)の演色性評価方法に関する調査研究」
http://www.jcri.jp/hiroba/buhou/146-3.htm
注注3)
フィラメントから蒸発したタングステン原子がハロゲン原子と結合し、ガラス球内で移動したあと、高温のフィラメント付近で再び分離して、タングステン原子はフィラメントに戻り、ハロゲン原子は同様の反応を繰り返します。これをハロゲンサイクルと呼びます。

3. 環境・エネルギー政策における位置づけ

 わが国政府は、2008年5月、温室効果ガス排出低減に向けて「環境エネルギー技術革新計画」を策定しました。この中で、2030年頃までの短中期的対策に必要な技術の1つとして高効率照明を取り上げ、生活の質を維持しつつエネルギー需要を削減するために、既存技術の普及や更なる効率の向上、コスト低減を図ることが重要としています。
  また経済産業省が策定した「Cool Earth -エネルギー革新技術計画」では、重点的に取り組むべきエネルギー革新技術として21の技術分野を取り上げており、次世代高効率照明をその1つと位置づけています。同計画では、白熱灯と蛍光灯をすべて150 lm/Wの次世代高効率照明に置き換えると、照明の消費電力は1/2になると見込んでいます。また、同計画の技術開発ロードマップでは、現在の蛍光灯を大幅に上回る発光効率と高演色性を持つ照明技術として、高効率LED照明、有機EL照明などを挙げており、高効率LED照明については2010年頃に100 lm/W、2020年頃に200 lm/W、有機EL照明については2020年頃に100 lm/W、2030年頃に200 lm/Wの実現を目指すとしています(図3)。

図3 次世代高効率照明の技術開発ロードマップ
出典:経済産業省「Cool Earth -エネルギー革新技術計画 技術開発ロードマップ」
出典URL:http://www.meti.go.jp/press/20080305001/04cool-earth-p.r.pdf

4. 新たな技術開発の動向

1)高効率蛍光灯

 高効率蛍光灯とは、新たな発光・蛍光材料の開発や周辺回路の省エネルギー化などにより、発光効率をこれまで以上に高めた蛍光灯を指します。
  現在、高効率蛍光灯として実用化されているのは、専用インバータ(電子安定器)と専用蛍光灯を組み合わせた高周波点灯専用(Hf:High Frequency)形の蛍光灯です。このタイプは、数十kHzの高周波で点灯することにより発光効率が高く、ちらつきも無いという特長があり、各社から100 lm/Wを超える発光効率の製品が発売されています。

図4 高周波点灯回路の基本原理
出典:(社)日本電気技術者協会「電気技術解説講座」天野 尚
出典URL:http://www.jeea.or.jp/course/contents/09104/

 高効率蛍光灯の開発にあたっては、水銀による環境負荷の低減を図ることも重要になっています。
 例えば、蛍光灯には、点灯時間とともにガラス管に水銀が付着して黒ずみ、明るさが低下するという課題があります。これはガラス管から析出するナトリウムと水銀が反応するためですが、この反応を抑えるための保護膜として、従来のアルミナからシリカを用いる技術が開発されました。シリカの保護膜は従来よりも厚さが数倍あるため、水銀付着量の低減と高効率維持が可能となっています。
  さらに、無水銀で放電によらない発光装置の研究も進められています。これは、ナノレベルに加工されたシリコンから電子が放出されるという性質を利用したもので、水銀の代わりに封入されたキセノンガス中にこの電子を放出することによって「真空紫外光」(紫外光よりも短波長の光)を発生させ、蛍光体に当てて可視光に変換するものです(図5)。理論的には、将来150 lm/W以上の発光効率を実現できると期待されています。

図5 放電レス発光デバイスの原理
出典:松下電工(株)「ニュースリリース」2008年7月8日
出典URL:http://www.mew.co.jp/corp/news/0807/0807-6.htm

2)高効率LED照明

 LED(発光ダイオード:Light Emitting Diodes)は、電流により発光する半導体の一種で、従来の光源に比べて、長寿命性や省エネルギー性、視認性、水銀フリー(水銀を使わない)といった利点を持っています。LEDの発光原理は、順方向に電圧をかけて電流を流すと電子(-)と正孔(+)が移動し、PN接合面で結合して電気エネルギーが直接光エネルギーに変換されることによります(図6)。

図6 LEDの仕組み(イメージ図)
出典:(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構「よくわかる!技術解説」発光ダイオードって知ってる?
出典URL:http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/nan/na03/index.html

 LEDは、これまで携帯電話のバックライトや信号機、自動車用のランプなどとして普及してきました。近年、一般照明用の技術開発が進み、街路灯(写真1)や室内用ダウンライト(写真2)、スポットライトなどが実用化されており、さらに最近では、80 lm/Wの発光効率を持つLED素子の開発や、電球ソケット(E26口金)をそのまま利用できる製品、白熱灯150W相当の明るさを持つダウンライト照明、通路などの低照度空間で実用できる総合効率56 lm/Wのダウンライトなどの製品が次々と発売されています。

写真1 街路灯へのLED照明の利用事例
出典:(NPO法人)LED照明推進協議会
出典URL:http://www.led.or.jp/about/application.htm

写真2 LEDによるメインエントランスの照明(兵庫県立芸術文化センター)
出典:(社)照明学会「フォトギャラリー」(「照明学会誌」第90巻第7号より引用)
出典URL:http://www.ieij.or.jp/what/gallery/pg_25.html

 LEDの特徴の1つには、長寿命が挙げられます。しかし照明に利用する場合は、大きな光量が求められることから大電流を流す必要が生じ、その発熱等がLEDチップの周辺材料に影響を及ぼし、LEDの寿命が短くなる可能性が指摘されています。このため、シリコーンを用いた封止材の開発やダイボンド材の開発など、熱に対する安定性が高いさまざまな周辺材料の開発が進められています(図7)。

図7 LEDチップと周辺材料の例
出典:信越化学工業(株)ニュース
出典URL:http://www.shinetsu.co.jp/j/news/s20070912.shtml

 また、LED照明は、従来型の蛍光灯などに比べて高コストが指摘されており、さらなる発光効率や演色性の向上とあわせて、今後の課題とされています。

3)有機EL照明

 LED照明と並んで次世代高効率照明として期待されているのが有機EL照明です。EL(エレクトロ・ルミネッセンス:Electro Luminescence)とは、物質が電流によって刺激されて発光する現象であり、ELのうち発光材料が有機物質のものを「有機EL」と呼びます(図8)。
  有機ELは、有機物質自体が発光するためデバイスを軽量かつ薄くすることができるほか、プラスチックや紙などの曲げられる素材の上に貼って自由な形状を得ることができます。
  また、発光材料を平面状に塗るなどして面状に発光することができるため、有機ELを壁や天井一面に用いて照明に利用することも可能です(図9)。

図8 有機ELの発光原理
出典:(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構「よくわかる!技術解説」有機ELってなあに?
出典URL:http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/ele/el02/index.html#02

図9 有機ELによる室内照明のイメージ
出典:(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構「よくわかる!技術解説」有機ELってなあに?
出典URL:http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/ele/el02/index.html#03

 すでに現在、有機ELを利用した携帯電話ディスプレイやテレビが商品化されています。近年では、次世代照明に対する関心が高まるなか、有機EL照明の実用化に向けた研究が盛んになりました。
 山形県では、平成15年に「有機エレクトロニクス研究所」が設立され、(財)山形県産業技術振興機構の所管のもとで山形大学との連携、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構のプロジェクトへの参加などを行うなかで、有機EL照明の高効率化や長寿命化、演色性などについて研究を進めています。
  有機EL照明の高効率化については開発メーカー各社でも研究が進められており、発光材料を蛍光材料からリン光材料に転換し、実験段階とはいえ発光効率64lm/Wを実現した事例があります。
  また、有機EL照明の実用化の障害として、パネル製造時の有機材料利用効率の悪さが挙げられていましたが、利用効率の向上やパネルの大型化に向けた成膜装置の開発も進められています。
  (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構では、現在の生活用照明(蛍光灯など)の代替となる、長寿命で高い演色性を持つ高効率有機EL照明を実現するため、「純青色有機EL材料」や「高性能有機EL材料」の開発と、これを用いた「高性能デバイス構造」の開発、及び低コストで環境負荷の低い「省資源型製造技術」などの開発に向けたプロジェクトを行っています。

4)さらなる次世代照明の研究

 LED照明や有機EL照明のほかに、次世代照明としてマイクロキャビティ発光や、クラスター発光、蓄光技術などの研究開発も関心を集めています。
 マイクロキャビティ発光は、タングステンの表面1平方メートル当たりに100万個以上の空洞(キャビティ)を形成したマイクロキャビティ放射体が、赤外線を抑制して、発光効率を飛躍的に向上する白熱フィラメントとして利用できるということから注目されているものです。
 クラスター発光は、数十から数百個の原子・分子の集まりであるクラスターにマイクロ波を照射することによって、クラスターから熱放射が得られ、その熱放射を光源として利用しようとするものです。白熱灯と同じ原理ですが、より高い演色性と長寿命を持つとされています。
  蓄光は、太陽光や蛍光灯の光(紫外線)を吸収蓄積し、自然発光するというものです。現在の蓄光技術は、避難誘導板や標識板などに利用されています。今後、照明として利用可能な技術について、生化学的・電気化学的な技術も含めた研究開発が期待されています。
  このほか、自然光を光ファイバーなどで伝送し、照明として利用する技術なども研究課題として挙げられており、次世代の高効率照明についての一層の技術開発が期待されています。

引用・参考資料など

1)資源エネルギー庁 「日本のエネルギー2008」
2)(財)省エネルギーセンター
3)(社)日本電球工業会
4)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 「よくわかる!技術解説
5)(NPO)LED照明推進協議会
6)有機エレクトロニクス研究所
7)松下電器産業(株) 「松下テクニカルジャーナル」2008年1月
(2008年9月現在)