キタキツネは髄膜脳炎を経て絶命?哺乳動物を介した鳥インフル感染に要警戒!
発表日:2022.12.14
北海道大学大学院獣医学研究院・迫田教授らの研究グループは、「高病原性鳥インフルエンザ(highly pathogenic avian influenza virus : HPAIV)」が身近な環境に生息する哺乳動物に急速拡大し、種ごとに異なる感染症を引き起こしていることを解明した。HPAIVの世界的な大流行が常態化し、渡り鳥から地域の野鳥・家禽などへの感染が懸念されている。同教授は、人獣共通感染症のなかでも感染力の高いHPAIVに着目し、ウイルスの封じ込め、撲滅に向けた地道な現地調査と世界規模の研究に取り組んでいる。2021~2022年シーズン(期間の区切り:2021年10月~2022年9月)は、冬から春にかけてHPAIVが世界的に大流行した。同シーズンの3月末には、札幌市内の公園でHPAIVに感染したカラスが大量死するといった事案が発生し、全国的に報道された。本研究は、当該公園で回収したキタキツネ(死亡個体)や、衰弱が激しいため安楽死させたタヌキの病因調査の一環として行われたもの。両個体から臓器を回収し、ウイルス学的、病理学的および糖鎖ウイルス学的に調べたところ、HPAIVが分離された(日本初)。どちらの個体も上部気道でウイルスが増殖しており、キタキツネではウイルス性の髄膜脳炎が、タヌキでは結膜炎や内臓幼虫の移行を伴う二次的な感染が疑われた。呼吸器上皮細胞を検索した結果、鳥型のインフルエンザウイルス受容体が有意に分布しており、呼吸器における感染が裏付けられた。また、分離されたHPAIVが欧州流行株(H5N1亜型)と近縁であることが明らかになった。これらの知見から、キタキツネ等はヨーロッパやアジアから飛来する渡り鳥から同一シーズン中に直接感染したことが示唆された。鳥から鳥のみならず、鳥から哺乳動物へのHPAIV感染に警戒を強め、自然感染の潜在力を理解することが重要、と述べている。