農工大、樹木107万本の寿命を解析-人間との共通点が浮き彫りに
発表日:2025.05.13
東京農工大学の研究チームは、日本全国107万本の樹木データを解析し、主要53種の「最大寿命」と「平均寿命」を定量化することに成功した。直径1cmの主要樹木における最大寿命は平均378年、平均寿命は81年と算出された。こうした比率は、人間における最大寿命122歳と平均寿命73歳の関係に近似しており、樹木にも寿命のばらつきが存在することを示している。
注目すべきは、寒冷・乾燥な環境に適応した樹種ほど、最大寿命と平均寿命の差が大きくなる傾向がある点である。たとえば、ダケカンバは544年生きる可能性を持つが、平均寿命はわずか40年。一方、タブノキは最大184年に対し平均124年と、より多くの個体が長寿を全うする。これは、厳しい環境では「長寿の宝くじ」に当たる確率が低くなることを意味する。
本研究は、非破壊的な手法で樹木の寿命を推定し、気候変動下での絶滅リスク評価や森林保全の優先順位決定に資する科学的基盤を提供する。また、樹木の寿命を人間と同じ尺度で捉えることで、伐採をめぐる社会的対立の緩和にもつながる可能性がある。(掲載誌:Nature Ecology and Evolution)
筆頭著者・責任著者である同大学の小林勇太助教は、プレスリリースに「木は永遠に生きるという思い込みを見直し、植物にも“尊厳死”の概念を適用すべき時代が来ているのかもしれない」と書き添えている。