山梨県、有機薄膜太陽電池によるブドウ着色促進FSを開始
発表日:2025.08.29
山梨県は8月27日、県オリジナル品種「サンシャインレッド」の着色向上を目的とした世界初の実証試験の説明会を開催した。本実証では、有機薄膜太陽電池をブドウ棚の雨よけとして設置し、昼間に発電した電力を夜間のLED照射に活用することで、果実の着色を促進する新たな農業技術の可能性を評価している。
有機薄膜太陽電池は、従来の光を通さない太陽光パネルとは異なり、光透過性と柔軟性を兼ね備えた素材で構成されている。これにより、農作物の育成と発電を両立できる点が特徴であり、農地での利用が期待されている。今回の実証では、6㎡のフィルム状太陽電池(厚さ0.3mm、重量0.4kg/㎡)を使用し、日中に蓄電した電力を夜間にLED照射へ転用することで、着色効果を高める「ソーラーマッチング」技術が採用された。
説明会では、公立諏訪東京理科大学の渡邊康之教授が技術的背景を解説し、参加者はLED照射区と非照射区の比較を通じて着色効果を確認した。渡邊教授は、「有機薄膜太陽電池がペロブスカイト型とは異なり、鉛やスズを含まない安全性の高い技術であることを強調し、果樹分野での初の実証に手応えを感じている」と述べた。また、山梨県知事の長崎幸太郎氏は、農業の高付加価値化とエネルギー自給型農業の構築に向けた展望を語り、「将来的にはハウス全体を太陽電池で覆い、水素製造と加温に活用することで、カーボンフリー農業の実現を目指す」と宣言した。
本実証は令和9年まで継続される予定であり、山梨県では並行して水素を活用した農業用ハウスの加温試験にも取り組んでいる。これらの施策は、「やまなしカーボンフリー農業」の一環として、地域資源を活用した脱炭素型農業モデルの構築を目指している。