OISTら、島しょアリ群集の個体数変化を再構築―固有種は79%減
発表日:2025.09.12
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、メリーランド大学、オーストラリア国立大学との共同研究により、フィジー諸島に生息するアリ群集の個体数変化をゲノム解析により明らかにした(掲載誌:Science)。
本研究では、数千点に及ぶ博物館標本を対象に、コミュニティゲノミクスの手法を用いてアリの進化的系統関係と定着の歴史を再構築。固有種の79%が減少傾向にある一方で、近年人為的に導入された外来種は個体数が急増していることが判明した。特に減少傾向は、欧州人との接触や植民地化、世界貿易、近代農業技術の導入といった人類の活動と相関しており、島しょ生態系の脆弱性が浮き彫りとなった。――具体的な手法としてはDNAが劣化した標本に対して「ミュゼオミクス」と呼ばれる特殊なシーケンシング手法を用いて、100種以上のアリから数千個体のゲノムを解読している。これにより、自然到達から人為的導入まで、65件の定着事例を確認した。集団遺伝学モデルを用いた解析では、固有種の減少と外来種の増加が時間軸に沿って明確に示された。
島しょ地域は閉鎖的かつ孤立した環境であるため、人間活動の影響を受けやすく、保全の観点から「炭鉱のカナリア」とも言える存在である。研究チームは、沖縄でもOKOEN美ら森プロジェクトの一環として、音声モニタリングやトラップ調査を通じて昆虫群集のリアルタイム観測を進めている。本成果は、昆虫の保全と生物多様性コレクションの重要性を示しており、科学的知見の蓄積と同種の保全活動推進に資するものである。