木質バイオマス灰を用いたCO2固定型肥料製造プロセス
発表日:2025.10.10
東北大学大学院環境科学研究科と八戸工業高等専門学校の研究グループは、植物由来で生分解性のキレート剤とCO₂を活用し、木質バイオマス灰の環境負荷低減・資源回収・CO₂固定を同時に達成する新しいプロセスを開発した(掲載誌:Resources, Conservation & Recycling)。
本技術は、カーボンネガティブ・バイオマス発電の実現に資するものであり、CO₂削減と資源循環の両立に向けた実用的なアプローチを提示するものである。キレート剤とは、金属イオンと安定的に結合する多座配位子であり、重金属除去や資源回収に広く利用される。木質バイオマス灰は、カリウムやカルシウムなどの有用元素を含む一方で、カドミウムなどの有害重金属も共存するため、従来は産業廃棄物として高コストで処理されてきた。今回のプロセスでは、GLDA水溶液による処理により重金属を除去しつつ、抽出液中の有用元素をCO₂の添加により炭酸水素カリウム(肥料)と炭酸カルシウム(工業材料)として析出させる。炭酸水素カリウムの純度は99.5%に達し、栽培試験でも市販肥料と同等の肥効が確認された。また、キレート樹脂により抽出液の再生が可能であり、灰1トンあたり約300 kgのCO₂固定が実現される。
研究グループは、本技術が地域資源の循環利用と食料安全保障にも貢献すると考えており、今後は産業界との連携や国際展開を通じて、持続可能な社会形成への寄与を目指すと述べている。なお、本研究は、科学研究費助成事業(若手研究・基盤研究・挑戦的研究)および東北大学のオープンアクセス推進事業の支援を受けて実施された。
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