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 実現可能性高い!潮位差エネルギーで巨大地震を乗り切るインフラモデル

発表日:2024.01.18


  日々繰り返す潮の満ち引きを利用して発電する「潮位差発電(潮汐発電とも言う)」が有望視されて久しい。干満差の大きい国・地域では既に大規模な発電施設が運用されている。しかし、日本は干満差が比較的小さく、発電量が期待できないという認識が強いため、本格的な社会実装には至っていない。東京工業大学環境・社会理工学院融合理工学系の高木泰士教授らは、潮位差エネルギーを多目的に活用するインフラモデル『自己発電型可動式防潮堤による潮位差発電システム』を考案した。同システムは災害大国・日本ならではの着想に基づいて設計された。全国の主要河川・河口部には津波・高潮に伴う海水の侵入や河川への逆流を防止するために防潮水門が設置されている。なかには開閉可能なフラップゲートを内蔵した水門もあり、近年では港の出入り口を緊急時に閉鎖する技術(可動式防潮堤)への応用が進んでいる。可動式防潮堤は、平時は海底面に横たわるゲートを発災前に起伏し、津波や高潮等を最前線で食い止める仕組みとなっている(施工方法:ニューマチックケーソン工法等)。被災した港の周辺地域では停電が起きる可能性が高く、可動式防潮堤の安定運用は予備電源の確保と一体不可分な関係にある。本研究では、全国56の工業港や漁港などにおいて潮位差エネルギーが可動式防潮堤の操作に活用できるか否か精査している(FS条件:日中はゲート格納、夜間は締め切り・発電利用)。その結果、起潮力の多寡(大潮~小潮)によらず自己発電できるのは9港、大潮時の好条件で実現できる港は14港にのぼることが判明し、なかには余剰電力を後背地に供給できるほどのポテンシャルを持つ港があることが明らかになった(最大発電量:1,000 kWh以上)。また、同システムを導入可能な港は西日本の太平洋側に多く(上記23港中20港)、南海トラフ地震(被害想定:震度6~7)の津波対策として有効であると考えられた。高木教授は、気候変動に伴う台風・高潮の激甚化への備えとして、日本発の“発電もできる画期的な防災技術”として海外に訴求できる成果であり、ひいては国内で遊休状態に陥るおそれがある港のストックマネジメントとしても有効、と抱負を語っている。なお、本成果は東京工業大学と全国の建設コンサルタント・エンジニアリング企業11社(2024年1月現在)が組成した「潮位差エネルギーの利用による港の活性化研究会」の共同研究成果として発表された(掲載誌:Renewable Energy、DOI : 10.1016/j.renene.2023.119563)。

情報源 東京工業大学 東工大ニュース
(株)ワールド設計 TOPICS
機関 東京工業大学 協同エンジニアリング(株) オリエンタル白石(株) (株)センク21 中外テクノス(株)
分野 環境総合
キーワード 余剰電力 | 津波 | 高潮 | 自己発電 | 潮位差発電 | 潮位差エネルギー | 可動式防潮堤 | フラップゲート | 南海トラフ地震 | ニューマチックケーソン工法
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