ハイブリッド車

 ハイブリッド車とは、異なる複数の動力源(エンジンとモータなど)を搭載し、それぞれの利点を組み合わせて走行することにより、省エネルギーと低公害を実現する自動車である。動力源としては、下図のようにエンジンとモータを利用することが多く、その組み合わせ方によって、主に「シリーズ方式」「パラレル方式」「スプリット方式」の3つのタイプがある。
 「シリーズ方式」は、モータだけで駆動するタイプで、エンジンを使って発電機を動かし、バッテリに充電しながら、その電気でモータを回転させて走行する。一方、「パラレル方式」は、エンジンとモータを併用するタイプで、エンジンに負荷がかかる発進や加速時には、モータが駆動力を補助するとともに、低速時にはモータ、高速時にはエンジンと、駆動力を使い分けることでエネルギー効率を高める。また、「スプリット方式」は、これら両タイプの機能を併せ持ち、よりきめ細やかに発電と駆動を制御しながらエネルギー効率を高めるものである。いずれのタイプも、減速時にはモータを発電機として使い、ブレーキエネルギーを回収することができる。
 従来より路線バス等に導入されてきたが、1997年に乗用車の分野で量産車が市販されたのを契機に、近年では乗用車クラスでの開発・市場投入が急速に進んでいる。ハイブリッド車は、自動車からの二酸化炭素排出削減の観点から、さらなる普及が期待されている。

代表的なハイブリッド車の機器構成

代表的なハイブリッド車の機器構成
出典:環境省 中央環境審議会地球環境部会資料(図の作成はトヨタ自動車(株))
http://www.env.go.jp/council/06earth/y061-11/ref06-3.pdf

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1.背景

1)ハイブリッド車の歴史

 ハイブリッド車の歴史は古く、19世紀末にはすでに開発されていたが、高い価格水準や短い走行距離などの欠点を抱えていたため、普及には至らなかった。一方でガソリンエンジンや石油産業が著しい発展を遂げ、ガソリン車が急速に普及した結果、 ハイブリッド車の研究は次第に縮小されていった。その後、日本でも1970年代に都営バスでハイブリッド車が導入されるなど、低公害車として導入されるケースもあったが、この時には試験走行だけで終了している。

2)ハイブリッド車の環境保全効果と量産車の出現

 ハイブリッド車は、ガソリン車に比べて走行時の燃費が良く、例えば10・15モード燃費※(カタログ値)では、ハイブリッド車の燃費の良い車種で30~35km/L、燃費の良い軽自動車で25~27km/L、セダンタイプの乗用車では17~22km/Lとなっている。
 そのため、ライフサイクルアセスメント(LCA)でCO2排出量を比較すると、生産時は、ハイブリッド車の方が複雑な駆動系を持つため、ガソリン車よりもCO2排出量がやや多くなるが、走行時はCO2排出量が40%程度も削減され、ライフサイクル全体では、ガソリン車よりもCO2排出量が30%程度削減可能と評価されている(図1)。また、ライフサイクル全体のCO2排出量は燃料電池車よりも少ないとの試算もある(図2)。こうしたことから、ハイブリッド車は、運輸部門からのCO2排出削減を進める上で、有効な対策と位置づけられている。

※10・15モード燃費:自動車が1Lの燃料でどれだけ走行できるかの指標で、市街地の走行を想定した10項目の走行パターンと郊外を想定した15項目の走行パターンにもとづいて測定した数値(単位:km/L)のこと。

図1 ハイブリッド車と通常の自動車の生産時、走行時のCO<sub>2</sub>排出量

図1 ハイブリッド車と通常の自動車の生産時、走行時のCO2排出量
出典:環境省 中央環境審議会地球環境部会資料
(日本自動車工業会資料、トヨタ自動車(株)資料より作成)
http://www.env.go.jp/council/06earth/y060-45/mat06-1.pdf

図2 ハイブリッド車とガソリン車、燃料電池車のCO2排出量の比較

図2 ハイブリッド車とガソリン車、燃料電池車のCO2排出量の比較
出典:環境省 中央環境審議会総合政策部会資料をもとに作成
http://www.env.go.jp/council/02policy/y024-02/mat_05_4.pdf

 こうした環境面の性能の高さから、ハイブリッド車は1990年代以降、再び脚光を浴びるようになり、以下のような点について技術開発が進んだことから、本格的な普及への道が開かれた。

  • 車両の小型化・軽量化
  • 走行距離の改善(電池の技術進歩)
  • 低価格化

 とりわけ、1997年に発表されたトヨタ自動車(株)のハイブリッド型乗用車は世界初の量産ハイブリッドシステムにより画期的な燃費の改善が達成され、加えて価格帯も一般車に比べて約50万円高いレベルに抑えられたため日米で大ヒット商品となり、ハイブリッド車の代表的な存在となった。ハイブリッド車の保有台数の推移は下図の通り、近年大きく伸びており、2006年には全国で約34万台を超えている。

図3 ハイブリッド車の保有台数の推移

図3 ハイブリッド車の保有台数の推移
出典:(財)自動車検査登録情報協会「自検協統計自動車保有車両数」に基づき作成

2.技術の概要

1)ハイブリッド車の仕組みと基本的特徴

 ハイブリッド車の基本的な仕組みを図4に示す。ハイブリッド車は、バッテリ(駆動用の蓄電池)、モータ、発電機、インバータ(直流を交流に変換する装置)を、ガソリンエンジンと組み合わせて作動させる。駆動用の動力源に着目すると、モータだけを用いる「シリーズ方式」、エンジンを主体としつつエンジンとモータを併用する「パラレル方式」、パラレル方式にさらにバッテリ充電専用の発電機を組み合わせ、モータとエンジンを効率的に使いわける「スプリット方式」の3タイプがある。
 ハイブリッド車共通の特徴としては、低排出ガス、燃費向上、低騒音というメリットがあり、地球温暖化だけでなく、大気汚染防止、騒音対策の面でも有効である。また、ガソリン車と同様に既存のガソリンスタンドでの燃料補給が可能であり、電気自動車と異なって充電が不要であるため、既存インフラでの一般普及が可能という大きなメリットを有している。
 短所としては、従来の自動車よりも構造が複雑となり、コストが割高になる点があげられる。

図4 ハイブリッド車の基本構成

図4 ハイブリッド車の基本構成
出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構「よくわかる!技術解説 省エネルギー/ハイブリッド自動車
http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/seg/seg04/index.html

2)作動方式の種類

 (1)シリーズ方式

 シリーズ方式では、モータのみが車輪を駆動し、エンジンはモータに電気を供給する発電用として搭載される(図5)。最終的な駆動力はすべて電気なので、発電しながら走行する電気自動車と言うことができる。エンジンは小型で済むが、バッテリとモータは大型化する。

図5 シリーズ方式のハイブリッドシステム

図5 シリーズ方式のハイブリッドシステム
出典:一般社団法人 次世代自動車振興センター
http://www.cev-pc.or.jp/

(2)パラレル方式

 パラレル方式のハイブリッド車は、エンジンを主体にしながらモータを併用して車輪を駆動させる。二つの動力源が平行して駆動に関与することからパラレル方式と呼ばれる(図6)。エンジンは走行を主体とし、場合により電池を充電する動力源として使用される。
 エンジンに負荷がかかる発進や加速時には、エンジンとともにモータが作動して駆動力を補助する。また、低速時にはモータ、高速時にはエンジンと、駆動力を使い分けることでエネルギー効率を高める。さらに、車が止まるブレーキ制動時には、モータを発電機として利用し、バッテリに充電する。
 以上のように、パラレル式は、エンジンとモータの長所を取り入れて、エンジンの燃費向上や排出ガスの低減を図るために考案された方式で、トラックやバスを中心に研究が進められている。最近では乗用車でもこの方式の採用例が出てきている。

図6 パラレル方式ハイブリッドシステム

図6 パラレル方式ハイブリッドシステム
出典:一般社団法人 次世代自動車振興センター
http://www.cev-pc.or.jp/

(3)スプリット方式

 スプリット方式は、パラレル方式にバッテリ充電専用の発電機を組み合わせたシステムで、パラレル方式より、さらに細かくエンジンの負荷制御を行い、エネルギー効率を高める(図7)。スプリット方式という名称は、エンジンの動力を車輪の駆動と発電機の駆動の両方に分割(スプリット)する動力分割機構を備えていることによる。この動力分割機構を用いて、発電機、モータの回転数を制御しながら、効率的に自動車を動かす。スプリット方式は、現在販売されているハイブリッド乗用車の主流となっている。

図7 スプリット(シリーズ・パラレル)方式ハイブリッドシステム

図7 スプリット(シリーズ・パラレル)方式ハイブリッドシステム
出典:一般社団法人 次世代自動車振興センター
http://www.cev-pc.or.jp/

3)今後の開発動向

 ハイブリッド車の課題としては、ハイブリッドシステムの小型軽量化と適用車種の拡大が挙げられる。このため、自動車メーカーが最も大きな力を入れているのが高性能なバッテリの開発である。現在は、主にニッケル水素電池が使用されているが、これよりも高性能のリチウムイオン電池の開発競争が各社で進められている。
 また、最近は電気自動車とハイブリッド車の長所を組み合わせ、電気走行可能な距離を長くし、充電設備(例:家庭用電源のコンセントなど)から充電できる“プラグインハイブリッド車”の開発が急速に進められている。この方法によれば、ハイブリッド車のCO2排出量をさらに削減することが可能になる(図8)。ただし、その普及に向けては、充電インフラの整備が課題である。
 その他、電気を電気のまま蓄えることで急速充放電が可能なキャパシタの開発、道路などに埋め込まれた給電装置から電磁誘導によって非接触のまま、車両のバッテリに急速充電するIPT(Inductive Power Tranfer)ハイブリッド車の開発など、バッテリが小さくても対応できる自動車の開発も進められている。

図8 プラグインハイブリッド車のメリット

図8 プラグインハイブリッド車のメリット
出典:環境省 中央環境審議会地球環境部会第5回懇談会資料(作成:トヨタ自動車(株))
http://www.env.go.jp/council/06earth/y060-kondan05/mat01-06.pdf

3.技術を取り巻く動向

1)ハイブリッド車の導入促進策

 低公害車の導入を推進している環境省はハイブリッド車の普及も後押ししており、トヨタ自動車(株)のハイブリッド型乗用車を、発売された1997年に公用車として採用している(図9)。 これは、1995年6月に閣議決定された「率先実行のための行動計画」において、各省庁において公用車への低公害車の導入の可能性を積極的に検討し、その結果を踏まえ、率先的、計画的な導入に努めることとされたことを踏まえたものである。

図9 環境省が導入したハイブリッド車の機器構成

図9 環境省が導入したハイブリッド車の機器構成
出典:環境省 中央環境審議会地球環境部会資料(図の作成はトヨタ自動車(株))
http://www.env.go.jp/council/06earth/y061-11/ref06-3.pdf

2)2020年までの導入シナリオ

 また、環境省では「地球温暖化とまちづくり対策検討会」を設置し、地球温暖化対策の観点から持続可能な都市のあり方について検討を行った。検討の中で、2020年における交通部門からのCO2排出を削減するための対策オプションとして、ハイブリッド車が取り上げられている。それによれば、基準シナリオでは、2020年の交通部門からのCO2量は現状から18%増加すると見込まれている。これに対して、2020年までにハイブリッド車が大量に普及すると、CO2排出量は逆に1%の削減となる。さらに、ハイブリッド車の普及に加えて交通需要管理を組み合わせると、CO2排出量は14%も削減されると試算されている(表1、図10)。
 このように、交通部門からのCO2排出削減を今後進める上で、ハイブリッド車は重要な手段になると考えられる。

表1 2020年のハイブリッド車導入シナリオの概要
シナリオ 基準 ハイブリッド車等
大量普及
+交通需要管理
ハイブリッド車等の
普及
乗用車HEV 20%
小型貨HEV 10%
乗用車HEV 83%
小型貨HEV 50%
軽乗用HEV 83%
ハイブリッド車の燃費 ガソリン/ディーゼル車の現状の燃費を40%改善した数値
CO2排出量 +18% -1% -14%

出典:環境省「地球温暖化とまちづくり対策検討会」配布資料を一部改変
http://www.env.go.jp/council/27ondanka-mati/y270-10/mat01-2.pdf

図10 ハイブリッド車の導入によるCO2排出削減効果

図10 ハイブリッド車の導入によるCO2排出削減効果
出典:環境省「地球温暖化とまちづくり対策検討会」配布資料
http://www.env.go.jp/council/27ondanka-mati/y270-10/mat01-2.pdf

引用・参考資料など

(2009年6月現在)