東大、サンゴ骨格の黒色バンドで人為的な環境変動を復元
発表日:2020.05.25
東京大学は、サンゴ骨格に刻まれた年輪から海洋の人為変動を読み解くことに成功した。サンゴは骨格に年輪を刻みながら成長するため、年輪に沿って化学分析を行うことで月単位・年単位の海洋環境を復元することができる。太平洋の島国「ツバル」で採取したハマサンゴ骨格試料を用いて13項目におよぶ化学・生物分析を行った結果、骨格の最上部に「黒色バンド」が認められ、赤褐色-灰青色-黒色のグラデーションを呈することや、11月から翌年3月頃にかけて西風の雨季に混入したものであることが明らかになった。黒色部は鉄を多く含んでおり、グラデーションは鉄の酸化還元状態を反映していることや、有機物と嫌気性バクテリアの遺伝子断片を含んでいることも分かったことから、同地のサンゴ礁生態系において嫌気性バクテリアの硫酸還元による無酸素状態が1990年代から季節的に発生し、枝サンゴの斃死(へいし)などにつながったことが示された。生活排水による富栄養化と廃棄物汚染などに関する新しい環境指標として「黒色バンド」を活用できるという。
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