森林総研など、種の変化や空間的バラつきを数理モデルで説明
発表日:2021.04.07
森林総合研究所、理化学研究所およびトロント大学の研究グループは、種の入れ替わりを考慮した数理モデルを考案し、生物群集の「空間異質性(以下「β多様性」)」の度合いを定量的に説明できることを実証した。種多様性は種類の多さ(豊富さ)や構成種のバランスにより評価されており、生息域全体の種多様性はある環境の種多様性(α多様性)とβ多様性の積と考えられている。同研究グループは、土地改変や外来種の導入により元来の自然に備わっていたβ多様性が失われつつあることから、生態学的知識や経験科学では説明し得ない「β多様性の定量化手法」開発に取り組んだ。β多様性の時間的変化を「絶滅」と「移入(コロニー形成」の成分に分解し、全国の森林モニタリングデータに適用したところ、β多様性は樹種の局所絶滅によって増加し、移入によって減少する過程を説明できることが分かった。また、サンゴ群集のβ多様性がエルニーニョ現象の直後に増加し、その後徐々に減少していく様子を種の絶滅と移入によって詳細に評価した。今回開発した手法は、比較的一様な人工林を、多様な樹種からなり、複雑な構造を持つ「混交林」へと誘導する際の生物多様性評価、自然撹乱の増加や外来種の拡大による影響予測のみならず、鳥群集や微生物群集など、さまざまな生物群集の評価に適用できるという。