筑波大など、セシウムの長期環境動態を予測できる数理モデルを開発
発表日:2021.10.15
筑波大学、東京都市大学および群馬県水産試験場の研究チームは、放射性セシウム137(以下「<sup>137</sup>Cs」)濃度を長期予測できる数理モデルを開発した。福島第一原発事故で放出されたセシウムは広範囲におよぶ放射能汚染をもたらし、未だ閉鎖性の湖沼に生息する淡水魚の風評被害などが顕在化している。内陸の湖沼では事故直後に<sup>137</sup>Cs(半減期:30年)の濃度が急激に低下し、低レベル汚染が長期化する。しかし、それが食品基準値以下のレベルで推移するか否か、科学的に裏付けることは困難であった。同研究グループは、現象を概括的・長期的にとらえる上で、詳細なモデル分割・統合や大規模な計算資源を要するコンピュータシミュレーションは不向きであると考え、湖水中の<sup>137</sup>Csは循環や底質との吸着・溶出により妨げられ「ゆっくり拡散」するという仮定に基づく拡散モデル(以下「FDM: Fractional Diffusion Model」)を創出した。群馬県の赤城大沼にFDMを適用した結果、湖水の<sup>137</sup>Cs濃度を精度良く、比較的簡単に再現できることが分かった。また、湖水とワカサギの<sup>137</sup>Cs濃度に関する知見(強い相関関係)に基づき、ワカサギの<sup>137</sup>Cs濃度を原発事故から10,000日(約27年)先まで計算したところ、事故直後〜2,000日後までは実観測結果と一致する傾向が再現された。2,000日以降の放射性セシウム濃度の減少スピードは、一般的な予測モデル(2成分減衰関数モデル)よりも鈍化するものの、100 Bq/kgを大きく下回ったままで緩やかに減少していくことが示唆された。
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