北大と名大、両極使用可・寒冷地仕様ポータブルPM2.5測定装置を共同実用化
発表日:2022.03.11
北海道大学と名古屋大学の共同研究チームは、北極・南極などでもPM2.5を安定して連続測定可能にする「自動温度制御断熱ボックス(以下、PM<sub>2.5</sub>センサーと合わせて『PM<sub>2.5</sub>測定装置』)」を開発した。低コストPM<sub>2.5</sub>センサー(本研究の使用例:パナソニック製LED式センサー)が大気汚染の観測に広く活用されている。しかし、そのセンサーの「動作温度」は一般的に極寒での使用を想定したものではないことが多く、北極圏の厳冬期や常時寒冷である南極などで長期的に運用することは困難であった。一方、北極域研究では、冬季の気温の逆転層時の大気質低下や(Tran and Mölders, 2011, doi:10.1016/j.atmosres.2010.08.028)、夏季の森林火災とその火災由来の大気汚染に関する知見がこれまで得られており(Yasunari et al., 2018, doi:10.1038/s41598-018-24335-w; Yasunari et al., 2021, doi:10.1088/1748-9326/abf7ef)、年間を通した大気質モニタリングが必要とされている。そこで同研究チームは、このような寒冷地域でPM<sub>2.5</sub>の通年観測を可能にするため、断熱ボックス内の温度を湿度コントローラーで自動的に制御し、内蔵した白熱電球ヒーターで昇温する仕組みを考案した。さらに今回、室内及び低温室(-25℃)における動作確認・検証実験を元に、通風口2つと電動の防水ファンでの強制通風を行う構造を考案した。また、冬季札幌・夏季アラスカでの現地観測を行い、現地の独立したPM<sub>2.5</sub>観測データとの比較検証を実施したところ、札幌冬季の寒冷環境下、また夏季アラスカ森林火災のような高濃度PM<sub>2.5</sub>環境下でもPM<sub>2.5</sub>質量濃度(単位:μg/m<sup>3</sup>)が十分実用的な範囲で測定できることが分かった。世界には8,300を超えるPM<sub>2.5</sub>観測サイトが存在しており、その多くは中緯度に偏在しているが高緯度地域は相対的に非常に少ない(Lary et al., 2014, doi:10.4081/gh.2014.292)。今回開発したPM<sub>2.5</sub>測定装置を「観測が希薄な高緯度寒冷地域」に積極的に導入することで、今後は北極域や南極におけるPM2.5定常観測ネットワークの展開が期待できるという(Yasunari, T. J., et al., J. Environ. Manage., 311, 114784, doi:10.1016/j.jenvman.2022.114784)。
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