異常気象頻発化時代の交通政策-災害レジリエンス強化の全貌
発表日:2025.05.27
国土交通省は、令和7年版交通政策白書(閣議決定)を公表した。本白書は、交通政策基本法に基づき、交通の動向および政府の施策を国会に報告するものであり、今年度は異常気象への対応や災害レジリエンスの強化が重点的に取り上げられている。
白書は三部構成で、第1部では令和6年度の交通の動向を分析。人口減少や高齢化、インバウンド観光の回復、都市のコンパクト化といった社会経済的背景を踏まえ、鉄道・バス・航空・海運など各交通モードの利用状況や事業環境を整理している。特に2023年には、鉄道2,260億人、バス380億人、航空10億人と、コロナ禍からの回復傾向が顕著であった。第2部では、令和6年度に講じた施策を紹介。地域公共交通の持続可能性確保、バリアフリー化の推進、観光需要への対応、そして異常気象に備えた交通インフラの強靱化が柱となる。TEC-FORCEの迅速な派遣や、道路・港湾・空港の災害対応機能強化が進められた。特に2024年の能登半島地震や豪雨災害を受け、代替ルートの確保や「道の駅」の防災拠点化が加速している。
第3部では、令和7年度に講じようとする施策を展望。地域交通の再構築に向けた「地域公共交通計画」の策定支援、スマートシティとの連携、MaaSや自動運転技術の導入促進が挙げられる。また、脱炭素化に向けた取り組みとして、LRT・BRTの導入支援、ゼロエミッション船の開発、SAF(持続可能な航空燃料)の普及などが盛り込まれている。異常気象への対応としては、地震・津波・台風・豪雨に備えたインフラ整備の加速、港湾・空港・道路のBCP(事業継続計画)策定、物流ネットワークの多重化が進められる。さらに、災害時の代替輸送訓練やAIカメラを活用した監視体制の強化も計画されている。