知的財産戦略本部（内閣府）は2025年6月3日、「知的財産推進計画2025～IPトランスフォーメーション～」を決定した。本計画は、知的財産（IP）の創造・保護・活用を通じて日本の競争力を強化し、経済社会の活力を高めることを目的とする国家戦略である。
本計画では、AI技術の進展や経済安全保障の重要性の高まりを背景に、知財政策の抜本的な転換を図る「IPトランスフォーメーション（IPX）」を中核に据える。IPXは、①イノベーション拠点としての競争力強化、②AI等先端技術の利活用、③グローバル市場の取り込み、の3本柱から構成される。
具体的には、知財・無形資産への投資促進、AIによる知財創出支援、発明者の定義見直しなど、制度面の整備が進められる。また、博士人材の活躍促進や知財教育の普及、多様性と包摂性の確保を通じて、創造人材の基盤強化も図られる。さらに、知財・無形資産ガバナンスガイドラインの普及やインパクト投資の推進、イノベーション拠点税制の活用など、企業の知財経営を後押しする施策も盛り込まれている。
国際的には、WIPOやUSPTOとの連携を強化し、AI関連発明の国際的な保護体制の整備を進める。農業分野では、地理的表示（GI）保護や品種・遺伝資源の管理強化を通じて、輸出促進とブランド保護を図る。さらに、コンテンツ産業の海外展開支援やデジタルアーカイブの整備、Web3.0・メタバース技術の活用など、文化資源の戦略的活用も推進される。
KPIとしては、グローバルイノベーション指数での上位4位以内、無形資産の時価総額比率50%以上、AI利活用率100%などが掲げられている。知的財産戦略本部は、政府・産業界・大学等の連携のもと、これらの目標達成に向けた実行を求めている。