国際農研ら、植物ホロビオントの多様性評価枠組みを提示
発表日:2025.07.01
国際農研ほか海外5大学・機関からなる国際研究グループは、植物と共生微生物の多様な相互作用を活用した持続可能な農業の実現に向けた意見論文(Opinion Paper)を、米国の科学誌『Trends in Plant Science』に発表した。――本論文では、植物と微生物の集合体である「植物ホロビオント(holobiont)」の自然な多様性に着目し、その分子生態の理解が、環境負荷の少ない作物開発に資することを提唱している。
holobiontは、ギリシャ語の holos(全体)とbiosから派生したbiont(生物、生命体)に由来する概念で、1990年代に進化生物学者 Lynn Margulisによって提唱された。複数の異なる生物が共生して一つの機能的なユニットを形成するという考え方・見方と理解されており、これまでホロビオントの機能や状態を測るための具体的な方法が検討されてきた。
国際農研は、世界で初めて、植物の根から分泌される物質が土壌中の硝化を抑制する「生物的硝化抑制(BNI)」現象を発見し、これを活用することで窒素利用効率の向上や環境負荷の軽減が可能になると述べている。今回の論文では、BNI活性や土壌微生物叢の構成を制御する植物遺伝子の特定に向けて、ゲノムワイド関連解析(GWAS)とPANOMICSアプローチ(メタボロミクス、プロテオミクスなどの統合解析)を組み合わせる研究戦略を提案している。また、未活用の遺伝資源から新たな遺伝的多様性を発見し、育種に活かす可能性も示している。――こうしたアプローチにより、作物の成長促進、ストレス耐性、健全な土壌維持、自然に近い施肥方法の確立など、現代農業が直面する課題への対応が期待される。
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