クラゲが重要な餌資源に?東大ら、ウミガメの摂食効果を評価
発表日:2025.08.04
東京大学農学生命科学研究科と同大学大気海洋研究所の研究グループは、アオウミガメの食性と栄養状態に関する新たな知見を発表した。――これまで、アオウミガメは海藻や海草を主食とする草食性とされてきたが、近年ではクラゲ類を捕食する個体も確認されており、同種におけるクラゲ類の栄養的意義が注目されている。
本研究では、沖縄県黒島周辺と岩手県三陸沿岸域の2地域において、亜成体のアオウミガメに記録計を装着し、海中での採餌行動をバイオロギング技術により観察した。黒島の個体は短時間で高頻度に海藻・海草を摂取し、活動時間は放流期間中の約63%であった。一方、三陸の個体は活動時間が約90%と長く、海藻・海草の摂餌頻度は最大21回/時間、クラゲ類は最大9回/時間と低かった.
しかしながら、体長と体重の比率から算出される肥満度や血中タンパク質濃度などの栄養指標を分析したところ、黒島よりも三陸の個体の方が良好な傾向を示していることが判明した。この結果は、クラゲ類がアオウミガメにとって重要な餌資源である可能性を示唆している。「クラゲは栄養価が低い」と認識されてきたが、近年では、魚類や鳥類などがクラゲを捕食する事例も報告されている。研究グループは、ウミガメにおいてもクラゲの栄養的価値を再評価すべきだと考えており、海草藻場の減少が進む中で、クラゲ類の摂取がウミガメの健康維持や沿岸生態系への影響予測に資する可能性があると指摘している(掲載誌:Marine Biology)。