世界6例目・日本初報告―二枚貝類に共生するマルハサミヨコエビ
発表日:2025.10.02
京都大学大学院理学研究科・花岡朋哉氏(研究当時:鹿児島大学水産学部)らの研究グループは、三重県菅島(すがしま)の海底において、二枚貝類に共生する甲殻類の新種「ユキミノノマルハサミヨコエビ(Leucothoe limidicola)」を発見・記載した(掲載誌:Zootaxa)。
マルハサミヨコエビ属では、ホヤ類やカイメン類などに共生する種が多く知られているが、二枚貝類の共生種は世界でも稀であり、本種は6例目、日本国内では初報告となる。今回の発見は、ウスユキミノ(Limaria hirasei)というミノガイ科の二枚貝の体表、具体的には触手や外套膜の内部から採集された個体に基づいており、形態とDNA配列(18S rDNAおよびミトコンドリアCOI領域)を詳細に解析した結果、既知種とは異なる新種であることが判明した。
本種は、姉妹種とされるアカイセンマルハサミヨコエビが自由生活性またはカイメン共生性であることから、二枚貝との共生への移行が種分化の要因である可能性が示唆された。こうした「宿主転換」が他のヨコエビ類でも普遍的に起こるのか、宿主ごとに移行のしやすさが異なるのかなど、今後の研究が期待される。――本研究は、JAMBIO沿岸生物合同調査の協力のもと実施され、沿岸域における未発見の生物多様性の存在を示す成果である。研究者らは、「地域の生物相を正しく把握することが今後の多様な研究の基盤になる」と述べており、身近な海域にも未知の種が潜んでいる可能性を強調している。
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