NIMS、超高速評価で構造材料データベースを構築~合金設計を革新
発表日:2025.07.07
物質・材料研究機構(NIMS)は、航空機エンジン用超合金を対象に、プロセス条件・ミクロ組織・降伏強度に関する数千点の実験データセットをわずか13日間で収集可能な「自動×超高速評価システム」を開発した(掲載誌:Materials & Design)。
従来法では同規模のデータ取得に7年以上を要していたが、本システムは200倍以上の速度で、単一サンプルから完全な「プロセス-構造-特性」データセットを生成できる。耐熱超合金は多数の元素で構成され、複雑なミクロ組織を有するため、構造・プロセスの最適化には高精度かつ大量の実験データが不可欠である。NIMSはNi-Co基超合金を例に、温度傾斜熱処理炉を用いて単一試料内で広範な温度条件を再現し、走査型電子顕微鏡(SEM)とナノインデンテーション(NI)をPython言語で自動連携させることで、各座標における組織情報と力学特性を高速取得した。得られた硬さ情報は、逆解析手法により応力-ひずみ曲線へと変換され、合金設計に直結するデータとして活用可能である。
この成果は、析出物の成長モデルや強化機構の高度化に資するほか、今後は温度・組成を同時に傾斜させた試料への展開も視野に入れている。多元系平衡状態図の構築やデータ駆動型新合金探索を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する新たな耐熱材料の創製が期待される。なお、本研究は、防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度(JPJ004596)の一環として実施されたものである。