青い涙を流しているような婚姻色―新種魚ナミダクロマスク
発表日:2025.08.20
鹿児島大学総合研究博物館・大学院連合農学研究科と北里大学海洋生命科学部の研究チームは、ヘビギンポ科クロマスク属魚類の新種「Helcogramma flammata(ヘルコグラマ・フラマータ)」を記載し、新標準和名として「ナミダクロマスク」を提唱した。学名は本種の体色が「燃えるような」オレンジ色であることに由来し、和名は婚姻色の雄が眼の下にもつ青色の模様が涙を連想させることに因む。リリースの画像(雄の婚姻色)では、確かに青い涙を流しているように見える。
本種は、同属の既知種Helcogramma fuscipectoris(クロマスク)と形態が酷似しており、過去の文献ではクロマスクとして報告されていた。しかし、多数の標本を用いた比較研究により、感覚管孔の開口数や婚姻色の雄がもつ頭部の青色線の位置などの形態的差異が確認され、別種であることが明らかとなった。
Helcogramma flammataは、伊豆諸島、小笠原諸島、日本本土の太平洋岸に分布しており、琉球列島に生息するクロマスクとは異所的に分布していると考えられる。なお、使用された標本(タイプシリーズ)は、同大学総合研究博物館をはじめ、高知大学、神奈川県立生命の星・地球博物館、国立科学博物館、和歌山県立自然博物館、東京大学総合研究博物館に収蔵されている。