気候変動に応答する腸内フローラ~サケ稚魚の生残率と関連
発表日:2025.08.25
東京大学大気海洋研究所・濱﨑恒二教授らの研究グループは、シロザケ(Oncorhynchus keta)の稚魚における腸内フローラが、餌の摂取開始および海水環境への移行に応じて大きく変化することを明らかにした。
地球温暖化に伴う海水温の上昇や海洋熱波の頻発が水産資源に深刻な影響を及ぼす中、特に回遊魚であるシロザケの稚魚は、河川から海洋への移行直後に生残率が低下する傾向が指摘されている。
本研究では、孵化直後から90日間にわたり稚魚を淡水および海水環境で飼育し、13の時点で個体を採取。腸内容物、飼育水、餌の微生物群集を回収し、16S rRNA遺伝子のアンプリコンシーケンスを用いて腸内フローラの構成変化を高解像度で解析した。その結果、孵化後35日目に餌を摂取し始めた時点で腸内フローラは急速に安定化し、Bartonella属やEnterococcus属などが定着。一方、海水環境への移行後にはColwellia属やAliivibrio属といった海洋起源の細菌が急増し、腸内環境が海水対応型へと再構築される様子が確認された。
また、餌や飼育水と腸内フローラの間で共有される微生物は全体の5〜20%にとどまり、多くの腸内微生物が魚体特異的に保持されていることが示された。BartonellaやAcinetobacterなど一部の細菌は淡水・海水のいずれの環境でも安定して存在し、「コアマイクロバイオーム」として宿主と共生している可能性が高い。
研究グループは、腸内フローラの変化が気候変動による環境変化に対する稚魚の感受性に影響を与える可能性を指摘しており、今後はコアマイクロバイオームの機能解析や、プロバイオティクスの開発を通じた稚魚育成技術の高度化を目指すとしている。本成果は、学術誌「Current Research in Microbial Sciences」に掲載された。