休耕田ビオトープを代掻きするとタガメが増える?!
発表日:2025.08.27
兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科・渡辺黎也氏らの研究グループは、休耕田ビオトープにおいて初夏に代掻きを行うことで、水生昆虫類の飛来と定着が促進されることを野外操作実験により明らかにした。今回、特定第二種国内希少野生動植物種であるタガメの幼虫数が増加する傾向が確認され、水田生態系等の保全上の重要な知見と位置づけられる。
ビオトープとは、耕作放棄田を湛水させた水域であり、農薬を使用しないため水生植物が繁茂しやすい。研究グループは、兵庫県内の水田とビオトープを対象に、2023年は水田のみで代掻きを実施し、2024年にはビオトープでも代掻きを行った。ドローン空撮による植被率の計測と、月1回の掬い取り調査による水生昆虫類の個体数記録を通じて、代掻きの効果を検証した。その結果、代掻きを行わなかった2023年のビオトープでは、植被率が高く(平均38%)、タガメやコシマゲンゴロウなど初夏に繁殖する5種の水生昆虫類の個体数が水田よりも少なかった。翌年、代掻きを実施したことで植被率が水田と同程度(平均10%)に抑制され、4種の個体数は水田と同等となった。因果解析(piecewise SEM)により、代掻きによる開放水面の創出が飛来個体数の増加に寄与していることが示された。また、代掻き後のビオトープでは、タガメの卵塊数は水田と同等であったが、幼虫数はビオトープの方が多かった。これは、植被率が高いことで水生植物が捕食者からの隠れ家となり、生存率が高まった可能性がある。研究グループは、代掻きの効果が見られた種は、開放水面を好み、初夏に繁殖地へ飛来する性質を持つことを指摘している。
本研究は、環境省の「自然共生サイト」や各地のビオトープ管理において、代掻きの時期と方法が水生昆虫類の保全に与える影響を科学的に示したものであり、淡水生態系の管理指針に資する成果と言える。
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