東大、ML✕地震波解析で「超臨界地熱」領域を三次元可視化
発表日:2025.09.25
東京大学大学院工学系研究科・辻 健教授らの研究グループは、九州・九重地熱地域において、弾性波探査と地震観測を統合した新手法により、地下深部の超臨界地熱システムを三次元的に高解像度で可視化することに成功した(掲載誌:Communication Earth & Environment)。「超臨界地熱発電」とは、通常の地熱貯留層より高温・高圧の超臨界水を利用する発電方式であり、従来よりも大規模かつ高効率な地熱発電の実現に寄与する技術と見られている。
日本は火山地帯に位置し、豊富な熱源を有するが、地下構造の把握が困難であることから、地熱発電の電源構成比は0.3%程度にとどまっている。特に、掘削前に超臨界水の存在場所や流体経路を正確に把握する技術が求められていた。――本研究では、人工震源による弾性波探査と多数の地震計による自然地震観測を組み合わせ、共通反射面重合法(CRS)を拡張することで、山岳地帯でも三次元的な地下構造の描出を可能にした。さらに、「機械学習を用いた地震波解析」により、マグマ性流体、超臨界水、シール層、亀裂帯、透水窓、相変化流体の一連の動態を世界で初めて明らかにした。また、地震活動は超臨界水が相変化する領域に集中しており、降雨による水圧上昇がシール層の割れ目を通じて流体移動を促進し、地震を誘発するメカニズムも解明された。
研究グループは今後、山岳地域向け小型震源装置(PASS)や高精度地震計の導入により、浅部構造の可視化も進める方針である。なお、本研究は、NEDO委託業務(JPNP21001)および日本学術振興会科研費(JP21H05202ほか)の支援を受けて実施された。
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