理研、変動電圧下で2,000時間以上の水電解(水素製造)を実現
発表日:2025.10.20
理化学研究所 環境資源科学研究センター 生体機能触媒研究チームらの国際共同研究グループは、変動電圧下でも長期安定的に動作する酸化マンガン水電解触媒を開発した。本触媒は、再生可能エネルギー由来の不安定な電力を用いた水素製造において、自己修復型の反応経路を導入することで、2,000時間以上の連続動作を実現した(掲載誌:Nature Sustainability)。
再生可能エネルギーの電力が天候や時間帯により大きく変動するという課題がある。水の電気分解による水素製造は、環境負荷の低い技術として注目されているが、変動電圧に対応できる触媒の開発が不可欠であった。酸化マンガンは、酸素発生触媒としての性能が高い一方で、電圧が高すぎると溶解しやすく、従来は耐久性に課題があった。
今回の研究では、リン酸を添加することで、溶解したマンガンイオンが電極上で再生される反応経路を設計。これにより、電圧が1.68~3.00Vの範囲で繰り返し変動する条件下でも、触媒活性を90%以上維持することが可能となった。今回の成果は、マンガンの酸化還元特性を活用し、自己修復型の反応経路を導入することで、触媒の長寿命化と安定動作を両立させた点に意義がある。
研究グループは、マンガン以外の酸化物(コバルト、鉄、ニッケル)でも同様の試験を行ったが、いずれも活性が急速に失われた。このことから、マンガンの特異な触媒機能が明らかとなり、自然界における光合成酵素の活性部位にマンガンが選ばれた理由の一端を示唆するものとなった。