鹿児島大学総合研究博物館とシドニー大学、オーストラリア博物館、国立台湾大学の研究チームは、沖縄本島、オーストラリア、ニューカレドニアから得られた標本に基づき、ベラ科カザリアカボウ属の新種Decodon erythroleukos（デコドン エリスロレウコス）を記載し、標準和名として「コウハクカザリアカボウ」を提唱した（掲載誌：Journal of Fish Biology）。本種は尾鰭に赤色と白色の明瞭な帯を持つことが特徴である。
カザリアカボウ属Decodonはこれまで4種のみが知られる希少なグループで、日本ではカザリアカボウDecodon pacificusのみが分布するとされていた。2022年に沖縄本島で採集された標本は既知種に似ていたが、眼前方の黄色帯が縦向きであるなど形態的差異が認められた。研究チームは形態精査と遺伝子解析を行い、未記載種であると判断した。さらに、オーストラリアとニューカレドニアの標本を加えた比較により、本種の分布域が西太平洋広域に及ぶことが明らかになった。
今回の記載では、タイプ標本を基にカザリアカボウ属の表徴を再検討し、幼魚の色彩など未解明だった特徴も提示した。コウハクカザリアカボウは水深110〜350 mで採集され、高知県やインドネシアでも水中写真が確認されている。既知種との識別点は、眼前方の黄色帯の方向（縦向き／横向き）と尾鰭後縁の赤色域の広さである。研究チームは、本成果が「西太平洋における深海性ベラ科魚類の多様性理解を進める契機になる」と述べている。