網走沿岸でセミクジラを観察―1968年以降5例目の確認事例
発表日:2026.01.22
生物産業学部の小林駿助教らは、北海道網走市沿岸において絶滅危惧種セミクジラ1頭を観察した。本種は記録自体が非常に少なく、生存個体数は100〜500頭未満と推定される。極めて希少な大型鯨類であり、北海道オホーツク海沿岸での確実な観察は1968年以来5例目となる(掲載誌:日本セトロジー研究)。
セミクジラ(<i>Eubalaena japonica</i>)は記録自体が極めて少なく、生存個体数はおよそ100〜500頭未満と推定されるなど、世界的にみても最も深刻な絶滅危惧に直面する大型鯨類の一つである。環境省レッドリストおよび日本哺乳類学会でも絶滅危惧種に位置づけられており、過去分布・回遊経路・繁殖状況などの生態情報がきわめて限られる点が保全上の大きな課題とされる。また、沿岸性が強く漁具への接近・交絡リスクが高いこと、さらに船舶衝突や繁殖率の低さなど多数の脅威に晒されており、保護策の立案には市民科学による情報提供を含む広範な協力が必要と指摘されている。
研究チームは2024年5月18日、網走市能取岬において陸上観察とホエールウォッチング船による外部形態記録を組み合わせ、浮上地点の測位と行動観察を行った。電子セオドライトで個体を追跡し、撮影を通じて種同定に必要な特徴を記録した。沿岸性の強い本種は漁具への接近・交絡リスクが高く、今回の調査でも漁具への反復接近が確認された。
同年同日の午前9時39分頃にロープへ交絡し、海面付近でもがく様子が確認された。その後ロープは外れたが、進行方向は岸から離れる側へ変化し、行動の攪乱が推察された。この事例は、混獲・罹網リスクが沿岸域で現実に顕在化し得ることを示す直接的証拠であり、大型鯨類の空間的リスク評価に資する情報となる。