国内ニュース


 タイムラプス撮影で「昆虫による送粉」の成否パターンを特定 中央大など

発表日:2022.07.11


  中央大学、東京大学大学院農学生命科学研究科および農業・食品産業技術総合支援機構からなる研究グループは、タイムラプス撮影で訪花昆虫(送粉者、花粉媒介者)による「結実」成否パターンを特定した。顕花植物の「繁殖」と訪花昆虫の「採餌」関係は互いに進化を遂げてきた証と考えられており、その理解深化に向けて多くの研究が行われている。しかしながら、自然条件下において、開花期間中の訪花昆虫すべてを直接観察、記録することは難しく、全容解明はほぼ不可能と見られていた。同研究グループは、既往研究の限界(限定的な事例報告、モデル実験等)と、カメラ・ビデオによる自動撮影の有効性を踏まえ、1つの花の全開花期間を通した昆虫類の訪花パターンと結実との関係を実験的に検証した。今回の実験では「ハス」を対象植物としている。ハスは、雄しべが短く、雌しべに届かない(昆虫の助けがないと受粉できない)。また、早朝に咲き始め、午後にはしぼんでしまう、開花時間が短い植物としても知られている。実験は、東京大学・田無キャンパス(所在地:東京都西東京市)のハス見本園で行われた。具体的には、同地で栽培されている多様なハスのうち12品種を選び、耐候性ケースに入れたタイムラプス撮影可能なカメラを開花前のハスの蕾の前に固定し、開花1~4日目の夜明け前から日没までの間、5秒間隔で連続撮影するという手法を採用している。取得した画像データ(約452,000枚)から節足動物が写っている写真10,848枚を抽出し、先ず、送粉に寄与している可能性がある昆虫を可能な限り同定した。次に、撮影回数の多かったハチ類、ハエ類、甲虫類が開花日、時間帯、気象の影響をどう受けているか解析するとともに、ハスの果実を回収して種子を数え、各昆虫グループの訪花が結実率(成熟種子数/胚珠数)におよぼす効果も解析している。その結果、雨風がなく最適な気温の下で開花2日目の朝5~7時台に花を訪れるハチ類が多いほど、種子生産が増えることが明らかになった。本研究では送粉昆虫を捕らえて餌にするスズメバチやクモ類などの行動も評価している。スズメバチ等が頻繁に来る花では送粉昆虫の訪花が少なく、種子生産にマイナスの影響をおよぼしうることが示唆された。今後は、高解像度の撮影による訪花昆虫の種レベルの同定、取得した画像データを用いた機械学習・自動識別アルゴリズムの開発、さらには夜間に開花する他植物への応用展開などを図るという(掲載誌:Scientific Reports、DOI:10.1038/s41598-022-15090-0)。

情報源 中央大学 プレスリリース
東京大学大学院農学生命科学研究科 研究成果
機関 中央大学 東京大学大学院農学生命科学研究科 農業・食品産業技術総合支援機構
分野 自然環境
キーワード 繁殖 | ハチ | スズメバチ | 機械学習 | 訪花昆虫 | タイムラプス撮影 | 結実 | ハス | ハス見本園 | 共進化
関連ニュース

関連する環境技術