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 赤トンボの遺伝的な証拠~望ましい生息地ネットワークの姿浮かぶ

発表日:2024.03.05


  森林総合研究所ほか2大学の研究グループは、赤トンボの一種・ミヤマアカネのDNAをゲノムワイドに解析することで、かつて存在していた生息地どうしのつながり(以下「生息地ネットワーク」)が全国各地でどれだけ劣化・消失しているのかを確かめ、それらの再生に必要な地理的条件を解明した。ミヤマアカネは全国的に激減しており、各生息地における集団の孤立が懸念されている。本研究では、本州~九州で発見したミヤマアカネの23集団について「RADSeq」という集団遺伝解析を実施し、同種の遺伝的多様性を多角的に評価している。その結果、1)生息地ネットワークは過去には全国的に広くつながっていたが、現在ではほとんどの生息地において集団が孤立していること、2)成虫は約5 km以内の距離を移住でき、生息地の周囲1 km以内に草地が多いほど、移入してきた個体が定着しやすいこと、が明らかになった。本成果は、ミヤマアカネの生息地ネットワークを里山空間で再生する際の指標となる知見を示したものとなっている。一方、3)ミヤマアカネの人為的な持ち込みが地域の遺伝的固有性や生息地ネットワークそのものを破壊しかねない行為であることも示唆され、一部の地域では地史との関連が示唆される地域固有の集団が見つかっている。今後は、当該地域における移動性の低い水辺生物の遺伝的固有性に関するさらなる研究が必要、と指摘している(DOI:10.1007/s10592-023-01595-2)。

情報源 森林総合研究所 プレスリリース
機関 森林総合研究所
分野 自然環境
キーワード 里山 | 草地 | 遺伝子流動 | RADSeq | 主成分分析 | 塩基多様度 | 赤トンボ | ミヤマアカネ | 生息地ネットワーク | 地理的条件
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